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小児急性白血病の種類と症状――​​大人との違いは?

小児急性白血病の種類と症状――​​大人との違いは?
湯坐 有希 先生

東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科 部長

湯坐 有希 先生

目次
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白血病はいわゆる“血液のがん”と呼ばれる病気で、血液細胞の元になる骨髄の中の造血幹細胞ががん化して増殖し、全身に回っている状態です。日本では、小児がんの約3分の1が白血病であることが知られており、その中でも急性リンパ性白血病が大多数を占めています。特徴的な症状が現れないためなかなか早期発見が難しい病気ですが、正しい診断を行い適切な治療を受けることで、寛解(かんかい)(症状や検査異常がなくなった状態)や長期生存を期待することができます。本記事では小児の白血病について、東京都立小児総合医療センター 血液・腫瘍科 湯坐 有希(ゆざ ゆうき)先生にお話を伺いました。

白血病は、急性白血病と慢性白血病の2種類に大別され、そこからさらに、病気のタイプによってそれぞれ骨髄性白血病、リンパ性白血病と分類されます。

【白血病の主な種類】

急性白血病:急性骨髄性白血病/急性リンパ性白血病

慢性白血病:慢性骨髄性白血病慢性リンパ性白血病

小児白血病の場合、患者さんの大多数は急性リンパ性白血病(ALL)で、全体の約7割を占めます。小児に急性リンパ性白血病が多い理由ははっきりと分かっていませんが、現段階では、遺伝子変異の発生頻度が関係しているのではないかと推測されています。

一方で、小児慢性骨髄性白血病は、造血幹細胞にBCR-ABLキメラ遺伝子が形成されることで起こるといわれています。ただし、小児で慢性骨髄性白血病を発症するケースはまれです。

正常な血液を作る力が抑制されるため、正常な血液細胞(白血球、赤血球、血小板)が減少して貧血あざ紫斑(しはん)、出血斑)、発熱(感染)などの症状が現れることがあります。また、がんが骨髄から骨に浸潤してあふれることで骨がもろくなり、骨や関節に症状が現れることもあります。

具体的な症状は以下のとおりです。

白血病による代表的な症状】

  • 感染症にかかりやすくなる(発熱する)、感染症が治りにくくなる
  • 貧血症状(だるさ、めまいなど)
  • 顔色が悪い
  • 血が止まりにくくなる
  • 骨の痛み
  • 関節痛

しかし、感染症による発熱や倦怠感といった症状は、インフルエンザなど白血病以外の一般的な病気にかかった場合でも生じます。また、小児の急性リンパ性白血病の場合、小学校入学前など体が成長している時期に発症することが多いため、骨の痛みの症状は成長痛によるものだと思われてしまうこともあります。

このように、白血病の症状の特徴は、“特徴的な症状がないこと”です。そのため、初発症状から白血病を疑うことは難しいといえます。ただし、上記に述べた発熱や体のだるさ、関節痛といった症状はほとんどの場合、一般的な病気が原因で生じているため、あまり心配しすぎる必要はないでしょう。

一般的にはまず採血を行い、血球数を確認します。白血球数は増加傾向の場合もあれば減少傾向の場合もあります。血小板や赤血球の値は減少していることが多くなります。

白血病の診断およびタイプ分類には、骨髄検査が必要です。当院では基本的に、テープを用いた局所麻酔または静脈麻酔をかけたうえで骨髄穿刺(こつずいせんし)を行い、骨髄液を採取します。当院では、骨髄穿刺の際に採血に使う針と同じくらいの太さの骨髄針を使用しており、患者さんになるべく負担がかからないように努めています。

白血病は、病気のタイプによって適切な治療法が異なるため、丁寧に検査を行って正しく診断をつけることが非常に重要です。

骨髄検査のイメージ
骨髄検査のイメージ

急性リンパ性白血病などの急性白血病では、白血病細胞が中枢神経に浸潤するリスクがあるため、白血病と診断された時点で脳脊髄液検査を行い、中枢に病変が及んでいないか確認します。

染色体検査や遺伝子検査、マーカー検査を行い、遺伝子構造や遺伝子変異について調べます。急性リンパ性白血病に関しては、次のページで述べる微小残存病変(MRD)の解析が治療方針決定のために重要となります。このため、当院では診断時にMRDが検出可能かどうかを調べる検査を実施しています。ここでMRDが検出可能であった場合、治療の要所でMRDの測定を行うことになります。

超音波検査やCTは、髄外病変(骨髄以外に病変が作られること)、脳内出血、転移、肝腫大などの有無を確認する目的で行う検査です。

また、骨痛が比較的強く生じるタイプの白血病では、血液検査では異常がみられないものの、CTやMRIなどの画像検査で骨融解像*(骨が溶けている状態)や骨髄の信号異常がみられ、これら検査の結果から白血病の診断につながるケースもあります。

*骨融解像:骨病変が浸潤して骨が弱くなること。

先述のとおり、発熱や貧血、関節痛などの症状を訴えて受診される患者さんの大多数は白血病ではありません。ただし、親御さんから見て「子どもの様子が変である、何かが気になる」と感じる場合は、ためらわずに医師に相談していただきたいと考えます。

このような親御さんの感覚は、病気の診断において非常に大切です。たとえば顔色の悪さに関しても、よほど重症でない限り、その子どもを初めて診る医師には元々の顔色か病気による顔色かの判断がつきにくいことがあります。子どもの普段の様子は、親御さんがもっとも理解していらっしゃいますから、何らかの異変を感じた際は、症状の程度にかかわらずご相談にいらしてください。

白血病を治療するためには、検査によって患者さんの白血病細胞がどのタイプであるかをしっかりと見極め、適切な治療法を選択、実行することが非常に重要です。

症状が出始めた早期段階で白血病に気付かず、診断が遅れてしまったとき、患者さんの親御さんは「どうしてもっと早く気付けなかったのだろう」と思われるかもしれません。しかし、白血病の場合、早期診断できたか否かは治癒率や治療後の経過にはそれほど影響しないといわれています。焦らずに治療を受けていただきたいと考えます。

成人と小児の白血病では、投与する治療薬の量が異なります。次のページで詳しく解説しますが、小児急性リンパ性白血病の標準治療では、L-アスパラギナーゼ、プレドニゾロン、ビンクリスチン、メトトレキサート、アントラサイクリンといった薬剤を、成人に比べて多めに投与します。この理由は、小児ではL-アスパラギナーゼやプレドニゾロン等による高血糖膵炎(すいえん)、腎障害などの有害事象*が成人に比べて出にくいので、小児急性リンパ性白血病では成人急性リンパ性白血病よりも治療の強度を高められるためです。

*有害事象:薬物を投与された患者さんに生じた好ましくない兆候や症状。

15歳以上25歳未満のAYA世代*に該当する急性リンパ性白血病の患者さんには、小児白血病の治療を行ったほうが、治療成績や予後が良好であるという研究結果が出ています。このため当院では、今後、20歳代前半の白血病患者さんを積極的に受け入れていきたいと考えています。

とはいえ前述のとおり、成人の患者さんは15歳未満の小児患者さんに比べて凝固障害などの有害事象や副作用が起こりやすいという問題があります。どの年齢層まで小児白血病の治療を適応できるかについては、さらなる検証が必要で、2020年1月現在、国内で小児がん診療グループと成人白血病診療グループ共同の臨床試験が計画されています。

一方、AYA世代の急性骨髄性白血病の患者さんに対しては、成人の治療法と小児の治療法で成績が変わらないことが分かっています。つまり、AYA世代の急性リンパ性白血病の患者さんのように小児型の治療が適しているとはいえない状況です。

このように、AYA世代の白血病患者さんへの治療方針についてはさまざまな課題が残されており、2020年1月現在、治療戦略や新薬の開発も上述の臨床試験と並行で検討されています。

引き続き次のページでは、具体的な治療の流れと方法、治療中の生活の注意点についてお話しします。

*AYA世代:15~39歳までの思春期、若年成人。

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