まんせいりんぱせいはっけつびょう

慢性リンパ性白血病

血液

目次

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概要

白血球が異常に増殖する病気を総称して白血病と呼びますが、そのなかでもリンパ球が増殖し、かつ病気の進行がゆっくりであるものを慢性リンパ性白血病といいます。白血球の一種であるリンパ球のなかでも、特にB細胞と呼ばれる細胞群の一部が異常に増殖します。

血液細胞は、骨髄の造血幹細胞がさまざまなサイトカインによる刺激を受けることで、血液細胞へと成長してゆきます。慢性リンパ性白血病の原因となる細胞は、B細胞のなかでも比較的成熟度が高く、小リンパ球性リンパ腫という病気と形態や性質が似ていることから、同じ病気が別の形(血液中で増えるか、リンパ節で増えるか)で現れたものと考えられ、同様の治療が行われます。

慢性リンパ性白血病は、日本やアジア圏では少なく、主に人種に影響されるものと考えられています。また、2:1程度の割合で男性に多い病気です。発症年齢の中央値は65~70歳以上であり、高齢者に多い疾患です。

原因

慢性リンパ性白血病のはっきりとした原因は不明ですが、何らかの原因で生じた遺伝子変異の結果、一部のB細胞がより増えやすくなる、あるいは細胞死が起こりにくくなってリンパ球のなかで割合を増やし、更に別の有利な遺伝子変異が重なっていくことで病気として発見される程度の異常となります。一部の患者さんでは家族性に病気がみられることから、生活習慣と関連しない何らかの遺伝形質が影響を与えていると考えられます。

症状

病気の進行が緩やかなために、何らかの症状を起こして病気が発見される割合は20%程度であり、ほとんどの場合は別の理由で行った検査の異常をより調べていくうちに、その原因として診断されます。慢性リンパ性白血病であれば、血液検査で白血球・リンパ球の増加が確認され、小リンパ球性リンパ腫の場合は全身のリンパ節や脾臓が肥大します。

症状を起こす場合は、貧血による息切れ、倦怠感(けんたいかん)、血小板減少による繰り返す出血、あるいは体重減少、寝汗、発熱などのいわゆるB症状も起こります。血液細胞を作る骨髄に白血病細胞が入り込みスペースを占拠することで造血が十分にできなくなり、貧血や血小板減少が起こります。体重減少、寝汗、発熱が何故起こるかははっきりとしませんが、サイトカインという一種の刺激因子が白血病細胞から分泌される結果であると考えられています。

検査・診断

血液検査では、白血球・リンパ球の増加と、病気の進行度に応じて赤血球・血小板の減少が確認されます。慢性リンパ性白血病細胞は、体内では正常のリンパ球と近い形態をしています。しかし、細胞膜が脆いため、塗抹標本を作製する検査の過程で細胞が壊れ、「よごれ細胞(smudge cell)」、または核影のみとなった「basket cell」という独特の形を成すことがあります。

ただし、これだけでは診断には不十分で、フローサイトメトリーと呼ばれる、細胞の表面にあるタンパク質の種類で血液細胞を分類し、血液中で増えている細胞が慢性リンパ性白血病に特徴的な性質を持っていることを確認することで診断されます。

フローサイトメトリーで診断が困難な場合には、リンパ節生検、骨髄穿刺および生検が必要になることがまれにあります。前リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯リンパ腫などと区別することが重要です。

一般的に慢性リンパ性白血病は進行がゆっくりです。予後に関わる因子として、リンパ節腫大の有無、肝臓や脾臓の肥大の有無、貧血や血小板減少の有無などがあり、それらに基づいてRai分類(主にアメリカで使用)、Binet分類(主にヨーロッパで使用)などによりステージをつけます。最近では研究の進歩によって遺伝子変異や細胞中のタンパク質の種類などによって予後を予測する試みもされており、今後より正確な分類方法が定着することが期待されています。

また、TP53という遺伝子に変異がある場合は化学療法への反応が悪いとされています。そのため、診断時だけでなく治療開始前に時間がある場合は、この遺伝子変異の再検査を行う場合があります。

治療

多くの場合、病気の進行はゆっくりであり、また、初期に治療をしても寿命を延ばすことにつながるとは限りません。そのため症状がなく、かつ病気の進行が緩やかな場合では経過観察となります。

病気の進行が早い場合や症状が出現した場合には化学療法を行いますが、化学療法はある程度の体力が残っている患者さん以外では逆に寿命を縮めることにつながります。そのため、経過観察中でもその他の病気(たとえば高血圧や脂質異常症、糖尿病)の治療をしっかり行って心筋梗塞や脳卒中を予防するなど、健康状態の維持・改善に努めることが重要です。治療によって肝炎ウイルスの再活性化が起きる可能性があるため、事前にウイルス性肝炎の検査や治療も必要となります。

治療は従来の化学療法にCD20というタンパク質を標的にした分子標的治療を組み合わせるのが一般的です。残念ながら完治は見込めませんが、寿命を延ばすことが目標となります。治療の効果が悪い場合や、再発をした場合には現在イブルチニブという別の仕組みではたらく分子標的治療が日本でも認可されています。患者数の多い欧米では現在でも治療が日進月歩で、日本でも今後更に多くの、効果のある薬剤が使用可能になると考えられます。