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脳腫瘍の手術治療−術前から術後の流れについて
脳腫瘍の治療では、手術による腫瘍の摘出を行います。その際は腫瘍の全摘を目指すと同時に、術後に麻痺や言語障害などの合併症が起こらないように、脳の機能を温存させる必要があります。今回は脳腫瘍の手術治...
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脳腫瘍の手術治療−術前から術後の流れについて

公開日 2019 年 05 月 14 日 | 更新日 2019 年 05 月 14 日

脳腫瘍の手術治療−術前から術後の流れについて
小菊 実 先生

医療法人社団 三喜会 横浜新緑総合病院 脳神経センター・脳神経外科部長

小菊 実 先生

目次

脳腫瘍の治療では、手術による腫瘍の摘出を行います。その際は腫瘍の全摘を目指すと同時に、術後に麻痺や言語障害などの合併症が起こらないように、脳の機能を温存させる必要があります。

今回は脳腫瘍の手術治療について、横浜新緑総合病院の脳神経センター・脳神経外科部長である小菊実先生にお話を伺いました。

脳腫瘍の治療法

適切な範囲で腫瘍を摘出することが重要

脳腫瘍の治療は、基本的に手術によって腫瘍をできるだけすべて摘出することを目指します。

しかし、腫瘍がある場所によっては、腫瘍を摘出することによって、術後に麻痺や言語障害などの重い障害が残る恐れがあります。それではせっかく腫瘍をすべて摘出できたとしても、患者さんは不自由な生活を余儀なくされてしまいます。そのため、腫瘍の摘出量と神経機能の温存のバランスを図ることが重要です。

また、患者さんの職業などを把握し、術後の社会復帰も考慮することも重要です。たとえば、バスの運転手を仕事としている患者さんの場合、術後にてんかん発作(けいれん)を起こしやすい体質になる可能性が少しでもあると、仕事を失ってしまう恐れがあります。

このような理由から、脳腫瘍の手術の際には、「脳の機能」と「摘出による治療効果」を天秤にかけて、摘出範囲を決定する必要があります。

術後に抗がん剤治療や放射線治療を行うこともある

記事1『脳腫瘍の種類、原因、症状、検査方法について』でもお話ししたように、術中迅速病理診断を手術中に行って、脳腫瘍の種類や悪性度について、確定診断を行います。その結果によって、腫瘍の摘出方法を決めたり、術後の治療計画を立てたりします。確定診断の結果、悪性脳腫瘍だったときには、手術だけで完治を目指すことは困難です。その場合は、術後に抗がん剤治療や放射線治療を行うこともあります。

脳腫瘍がみつかっても経過観察とすることもある

MRI検査で脳腫瘍がみつかった場合であっても、自覚症状がなく、小さな良性腫瘍と考えられる場合には、手術に伴うリスクを考慮し、腫瘍の摘出手術は行いません。腫瘍が大きくなっていないかどうかを確かめるために、半年や1年に1回くらいの頻度で、定期検診を受けていただき、経過を観察します。

ただし、今すぐ摘出する必要がない場合であっても、患者さんの年齢などによっては手術を検討することがあります。たとえば、73歳で脳腫瘍がみつかり、5年後には手術が必要になると予測される場合は、高齢になればなるほど手術に伴うリスクが高まるため、早い時点で手術を行うことを提案します。

脳腫瘍の手術前に行う検査・準備

手術前に全身精査を行う

当院では、緊急治療を行う必要がある場合を除き、手術前に全身の精査するために、5日間ほど検査入院をしていただいています。

検査入院には、大きく2つの目的があります。その1つが、他臓器のがんの転移によってできた転移性脳腫瘍でないかどうかを確認することです。その確認のために、胸部や腹部の画像検査、胃や大腸の内視鏡検査を行うことがあります。

さらに、もう1つの目的は、脳のカテーテル検査(脳血管造影検査)を行い、腫瘍の周りに異常な血管がないかどうかを確認することです。脳腫瘍は血液から栄養をもらって成長しているため、脳腫瘍の周りに異常な血管が発生していることがあります。この異常血管があると、腫瘍を摘出する際の出血量が多くなる恐れがあります。その場合には、輸血の準備をしたり、可能であれば自己血貯血(輸血が必要な場合に備えて、自身の血液を事前に採っておくこと)を行ったりすることもあります。

手術前に患者さんが行うべき準備は?髪の毛は剃る?

手術前に、患者さん自身に行っていただく準備は特にありません。患者さんのなかには、手術に備えて髪の毛を切ったり、剃ったりしてこられる方もいらっしゃいますが、その必要はありません。髪の毛があったからといって手術がやりにくくなることはありませんし、髪の毛によって傷口を隠すことができると、術後の社会復帰の面でも、患者さん自身の気持ちの面でもよいためです。

そのため、私は手術を受ける患者さんに対して、「髪の毛は剃らないで来てくださいね」とご説明しています。

脳腫瘍の手術を支える特殊な手術支援装置

手術室

先ほどもお話ししたように、脳腫瘍の手術では、できるだけ大きく腫瘍を取り除くと同時に、脳に重い障害が残らないように注意する必要があります。

そのために、さまざまな手術支援装置を駆使しながら、腫瘍を摘出します。本章ではそれらの手術支援装置についてご紹介します。

ニューロナビゲーションシステム

ニューロナビゲーションシステムとは、患者さんの術前のMRI画像を読み込ませておくことで、術者がいま脳のどの部分を操作しているかをリアルタイムで写し出す装置です。ナビゲーションという名前が示す通り、車のカーナビと同じ原理です。

ニューロナビゲーションを使用することで、腫瘍に対してどれくらいの距離まで到達しているのか、正常な脳を傷つけていないか、などを確認しながら手術を行うことが可能になります。

手術用エコー装置

手術用エコー装置は、手術中にエコー検査(超音波検査)を行う装置です。

腫瘍を摘出すると実際の脳の形は徐々に変わっていきますが、先述したニューロナビゲーションシステムの画像は、術前のMRI画像に基づいているため、実際の脳との差が出ます。そこで、術中の脳の変化を捉えることができる手術用エコー装置を併用することで、ニューロナビゲーションシステムが写し出す脳の状態との差を埋めることが可能になります。

超音波吸引装置

脳腫瘍を摘出する際には、まず腫瘍を破壊する必要があります。しかしその際、手術によって破壊した腫瘍が脳内に散らばってしまうと、それが悪性脳腫瘍だった場合、ほかの組織に転移してしまう恐れがあります。

それを防ぐために、腫瘍の破壊と同時に、破壊した腫瘍を吸引することができる、超音波吸引装置を使用します。

術中蛍光診断(化学的ナビゲーションシステム)

悪性腫瘍の取り残しは、術後の再発につながる恐れがあります。そこで、腫瘍の取り残しを防ぐために、術中蛍光診断(化学的ナビゲーションシステム)を用います。

術中蛍光診断では、「5-アミノレブリン酸(5-ALA)」という悪性腫瘍に取り込まれる薬剤を、手術前に患者さんに内服していただきます。そして、手術中に特殊な顕微鏡を用いると、5-アミノレブリン酸を取り込んだ悪性腫瘍だけが赤く光ります。これによって摘出すべき範囲が明確になり、意図せぬ取り残しを防ぐことが可能となります。

神経内視鏡

脳室内腫瘍に対する診断・治療には、神経内視鏡が有用です。脳室内腫瘍は脳の深部に存在することが多く、開頭手術では腫瘍に到達するために大きな侵襲が必要です。そこで、神経内視鏡を使用することによって、直径1cmほどの小さな孔からの低侵襲な手術が可能となります。

ただし、腫瘍の種類によっては開頭手術のほうが、メリットが大きいこともあるため、腫瘍の種類によって手術方法を柔軟に検討しています。

手術にかかる時間

手術にかかる時間は、脳腫瘍のタイプや発生場所によって異なります。当院の場合、早ければ1時間ほど、長ければ15時間ほどかかります。患者さんによっては、他の臓器に病気を抱えていたりして、手術にかかる負担が大きくなることがあります。そのような場合には、できるだけ短い時間で手術を行うよう心がけています。

手術にかかる費用

脳腫瘍の手術にかかる費用は、非常に高額ですが、公的医療保険制度の高額療養費制度を利用することで、患者さんの年齢や所得によって定められた限度額以上の費用を負担する必要がなくなります。

ただし、70歳未満の患者さんが退院時のお支払いで高額療養費制度を適用させるためには、事前に「限度額適用認定証」を病院の窓口に提示していただく必要があります。それをしないと、いったん費用を全額支払い、あとで払い戻しを受ける流れになります。

当院では、脳腫瘍の手術を受ける患者さんやご家族に対して、入院前に限度額適用認定証について必ずお伝えし、退院までに窓口にそれを提示していただくことをおすすめしています。せっかく手術を受けても、お金がなくなってしまっては、術後に不健康な生活しか送れなくなってしまうかもしれません。手術後に心身ともに健康な状態になっていただくために、お金はとても大切なものだと思います。

手術後の生活

デスクワークをしている人

退院後の社会復帰

退院後、どれくらいで社会復帰できるかは、脳腫瘍の発生場所やタイプによって大きく異なりますが、術前からご自身の力で歩行できていた方であれば、退院後2週間〜1か月くらいで社会復帰されていることが多いです。

日常生活で気をつけることは?

術後は、十分な睡眠をとる生活を心がけていただきたいと思います。術後数年間は、てんかん発作が起こりやすい場合があります。てんかん発作を防ぐためには、睡眠で脳をきちんと休ませることがとても重要です。

退院後の通院

脳腫瘍のタイプによって退院後の通院の頻度は異なります。

良性脳腫瘍で完全に摘出できた場合には1年に1回くらいの通院ですが、悪性脳腫瘍の場合には、追加で行う治療のために2週間に1回くらいの頻度で通院が必要です。

脳腫瘍の手術を受ける患者さんへ−小菊実先生からのメッセージ

小菊先生

脳腫瘍の手術を受けられる患者さんやご家族は、手術を受けて終わりではなく、リハビリテーションや退院後の社会復帰、金銭面など、さまざまな面において総合的なサポートを必要とされると思います。ですから、手術を受ける病院を決める際には、病院としてそのようなサポート体制が整っているかどうかも気にしていただきたいと思います。

そのためにも、セカンドオピニオンは有効な手段のひとつです。セカンドオピニオンというと、遠慮してしまう患者さんが多くいらっしゃいますが、いろいろな先生の話を聞きにいくのは大切なことです。入院中であっても、セカンドオピニオンを受けに外出されることは可能です。ぜひセカンドオピニオンを活用して、十分に納得したうえで、手術を受けていただきたいと思います。

 

脳腫瘍(小菊 実 先生)の連載記事

2000年より日本医科大学 脳神経外科にて脳神経外科・救急医療を中心に研鑽を積む。脳腫瘍・脳卒中の開頭手術を主に担当。悪性脳腫瘍研究を行いつつ、脳腫瘍の治療に造詣が深い。2009年より横浜新緑総合病院勤務。現在、脳神経センター脳神経外科部長を務める。
脳外科手術全般では3000件以上の手術執刀実績があり、脳腫瘍の手術実績は300件以上、脳動脈瘤クリッピングの手術実績も270件と開頭手術全般を担当。モットーは「病のみならず人を診る」。日本脳神経外科学会専門医・指導医、神経内視鏡技術認定医。

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