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脳腫瘍の最新トピックス ~日本脳腫瘍学会理事成田善孝先生に聞く進化するがん遺伝子検査とがん治療の展望~

脳腫瘍の最新トピックス ~日本脳腫瘍学会理事成田善孝先生に聞く進化するがん遺伝子検査とがん治療の展望~
成田 善孝 先生

国立がん研究センター中央病院 脳脊髄腫瘍科科長

成田 善孝 先生

目次
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脳腫瘍とは頭蓋内にできる腫瘍を指し、腫瘍が発生する場所や腫瘍の大きさによって運動麻痺、言語障害、頭痛などさまざまな症状が現れることのある病気です。頭蓋内で初発する“原発性脳腫瘍”には150を超えるタイプ分類がありますが、全てを合わせても発生の頻度は1万人に2.2人程度といわれます。

近年は診断・治療に役立てるために腫瘍を遺伝子レベルで解析する遺伝子検査が行われているほか、患者さんの血液などから診断を行うことを目指したリキッド・バイオプシー検査の研究が進められています。今回は脳腫瘍の検査・治療に関する最新トピックス(2020年6月時点)について、国立がん研究センター脳脊髄腫瘍科長/日本脳腫瘍学会理事 成田(なりた) 善孝(よしたか)先生にお話を伺いました。

脳腫瘍とは、頭蓋内に発生する腫瘍のことをいいます。頭蓋内で初発する“原発性脳腫瘍”には、良性と悪性(がん)があります。良性腫瘍は頭蓋内でも神経や硬膜などに発生することが多い一方、悪性腫瘍は脳の細胞に生じることが一般的です。原発性脳腫瘍は原因となる明確な環境や生活習慣などはなく、複数の要因が重なって発症しているものと考えられます。また、まれに遺伝性のものもあります。

なお、肺や大腸などで生じたがんが脳に転移してできた悪性腫瘍は“転移性脳腫瘍”といいます。転移性脳腫瘍はもともとがんがどこにあったかによって、腫瘍の性質が異なります。

脳腫瘍は良性でも悪性でも、腫瘍のできる位置や大きさによっては何らかの症状が現れる可能性があります。脳神経外科を受診する方は頭痛をきっかけに病院を受診する場合が多いのですが、脳腫瘍の場合には腫瘍がかなり大きくならない限り頭痛の症状が現れることはありません。

頭痛以外の症状では、腫瘍のできる位置によって手足の麻痺やしびれ、うつや認知症に似た精神症状、けいれん、意識障害など多彩な症状が見られることがあります。これらはいずれの症状も脳腫瘍以外の病気を疑い、整形外科や心療内科・精神科など、別の診療科を受診する可能性の高い症状ともいえます。そのため、ほかの診療科を受診しても解決しないときには、必要に応じて脳神経外科の受診も検討していただきたいです。

脳腫瘍の分野では、現在検査方法や治療方法に発展が見受けられます。

検査方法では、さまざまな遺伝子検査が行われるようになりました。脳腫瘍には実に150以上ものタイプがあり、手術で腫瘍を採取し病理検査を行わなければ最終的な診断はつけられません。また近年では、手術で採取した組織に遺伝子検査を行うことで予後の予測や効果のある抗がん剤の選択ができるようになってきました。2016年に改訂された世界保健機構(WHO)による脳腫瘍の分類基準(WHO分類)では、診断の際に遺伝子検査が必須です。しかし日本では現在腫瘍組織の遺伝子検査は保険適用ではなく、大学病院やがんセンターなど、ごく限られた医療機関でしか行うことができません。そのため、脳腫瘍をより詳しく検査・診断できる医療機関を受診することが大切です。また遺伝子検査が発展することによって、新たな治療薬の開発も期待されています。

治療方法では、手術治療の技術に大きな進歩が見られるようになりました。脳腫瘍の手術では腫瘍をしっかり取りきることのほかに、正常な脳を傷つけず患者さんの生活の質を守ることが重要視されます。そこで、患者さんの脳の機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出する手術方法が行われています。

がんゲノムプロファイリング検査とは、腫瘍の組織を採取して遺伝子の変異を調べる検査のことをいいます。2019年に保険適用が決まったがんゲノムプロファイリング検査では、がん組織で変異がよく見られる多数の遺伝子について、1回の検査で変異を確認することが可能です。これらの変異が分かることによって、より効果のある抗がん剤を選択して治療ができる可能性があります。また、腫瘍変異負荷(TMB)と呼ばれる値も明らかにできるため、免疫チェックポイント阻害薬の効果を予測できるほか、遺伝的ながんの診療に役立つことも期待されています。

脳腫瘍におけるがんゲノムプロファイリング検査

難治がんの1つである脳腫瘍においても、現在は手術などの標準治療が完了した患者さんやその後再発してしまった患者さんを対象にがんゲノムプロファイリング検査を保険適用で行っています。ただし、この検査が受けられる施設は限られています。また仮に検査を受けた場合でも、遺伝子の変異が見つかり、その結果が効果的な治療に結びつく可能性は10%程度といわれています。

脳腫瘍は分類が多岐にわたり診断が難しいことから、いずれは治療が完了した患者さんや再発した患者さんに対してだけでなく、手術後の患者さんに対してもがんゲノムプロファイリング検査が保険で行えるようになること、また、これらの遺伝子検査が行われることによって、新しい治療薬の開発につながることを期待しています。

マイクロRNA検査は研究段階でまだ実用化されていませんが、血液を採取し、そこに含まれるマイクロRNAを検出して脳腫瘍の疑いがあるかどうかを確認する検査です。近年、がんの検査領域では“リキッド・バイオプシー(血液・尿・唾液などの体液からがんを診断すること)”という考え方が広まっており、細胞や組織を採取するなど体に負担をかけることなくがんを見つけるための検査方法が模索されています。

脳腫瘍においてはマイクロRNAによる診断モデルを作成し、脳腫瘍の中でも発生頻度の高い悪性神経膠腫グリオーマ)の診断ができるようになる可能性があることを当科でも発表しています。また、画像診断では鑑別の難しい膠芽腫転移性脳腫瘍、中枢神経系原発悪性リンパ腫などをAI技術により、より正確に鑑別・診断できるようになる可能性もあります。マイクロRNA検査の精度が上がれば、健康診断の血液検査で脳腫瘍を見つけられるようになることや、症状が現れる前にがんが見つけられるようになることが期待されています。

脳腫瘍では、根治を目指すために第一に手術治療が検討されます。悪性脳腫瘍では、放射線治療や抗がん剤治療による化学療法などが行われます。

脳腫瘍の手術治療では、脳の機能を温存しながらできる限り腫瘍を摘出することが基本方針です。脳の機能を温存して治療を行うためには、腫瘍を摘出しながら患者さんの反応を確かめる作業が必要です。たとえば脳の手足を動かす機能を持つ部分に近いところに腫瘍がある場合などには、脳を刺激して手足が動くかどうか確認し、脳波や筋電図を用いた電気整理モニタリングをしながら手術を行います。

しかし、全身麻酔下では言語機能など一部の機能について正しくはたらいているかどうかを確認することができません。そこで、言語機能に関わる部分に近いところに腫瘍がある場合などには、患者さんの意識がある状態で行う“覚醒下手術”が行われることがあります。

覚醒下手術とは従来全身麻酔下で行われる腫瘍摘出術を、麻酔を覚まして行うことをいいます。皮膚や骨を切開して開頭後に、麻酔から覚めた患者さんには意識があるため、会話をしながら手術を受けたり、手を動かしながら手術を受けたりすることができます。

“意識のある状態で手術を受けると、痛みに耐えられないのではないか”と心配する患者さんもいますが、実は脳には痛みを感じるレセプターはなく、術中に痛みに苦しむことはありません。ただし、脳を守る皮膚や骨を切るときには痛みが生じますので、一度全身麻酔を行い、その後麻酔を覚まして腫瘍の摘出を行います。

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