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加齢黄斑変性の予防とセルフチェック——ものが歪んでみえたら注意!

加齢黄斑変性の予防とセルフチェック——ものが歪んでみえたら注意!
佐藤 拓 先生

高崎佐藤眼科 院長

佐藤 拓 先生

目次
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この記事の最終更新は2017年09月19日です。

記事1『加齢黄斑変性とは——原因・症状・治療法を専門医が解説』では加齢黄斑変性の原因や症状、治療法といった基礎情報についてお伝えしました。加齢黄斑変性は加齢が主な原因となって生じるため、ある程度年齢を重ねれば誰にでも発症するリスクがあり、発症するとものが歪んで見えたり中心が暗く見えたりします。そして治療が遅れてしまうと視力低下や失明の恐れがあります。

では、誰にでも起こりうる加齢黄斑変性を予防する方法はあるのでしょうか。加齢黄斑変性の予防とセルフチェックについて、引き続き群馬県高崎市の高崎佐藤眼科 院長 佐藤 拓先生にお話を伺いました。

加齢黄斑変性とは、加齢とともに視野や視力にかかわる黄斑という部分に障害が現れる病気です。

加齢黄斑変性ではものが歪んで見える(変視)、視野の中心が暗く見える(中心暗点)という症状が主に現れます。老眼が起こる年代に発症することから、患者さんが老眼と判断してしまい受診の機会を逃してしまうことがありますが、老眼では変視や中心暗点は現れません。

加齢黄斑変性の患者の見え方

また、加齢黄斑変性は治療をせずに放置しておくと、ほとんどの患者さんが視力0.1以下となってしまいます。視力0.1以下の状態は「社会的失明」とも呼ばれ、日常生活が困難になる視力です。加齢黄斑変性による視力低下は、めがねやコンタクトレンズによる矯正では視力を上げることができません。

視力低下を防ぐため、これらの症状が現れた際にはすぐに眼科を受診していただきたいと思います。

喫煙

加齢黄斑変性はその名のとおり加齢が主な原因です。高齢化が進んでいることから患者さんは増加傾向にあります。しかし、加齢黄斑変性は加齢のほかにもリスク因子があります。

喫煙は加齢黄斑変性の発症率に対する最大のリスク因子です。たばこの中に含まれるニコチンが、加齢黄斑変性の原因となる新生血管の増殖を促進する物質の分泌を促します。特に喫煙歴が長く、喫煙本数が多い人ほど注意が必要です。

高脂肪食や肥満もリスク因子となります。脂質の摂りすぎは体を酸化させ、老化を早めて新生血管の増殖しやすい体へと変化させます。

そのほかには仕事などで長時間日光を浴びると加齢黄斑変性になりやすい、また一部の加齢黄斑変性においてその発症にかかわる遺伝子が発見されるなど、遺伝との関係が指摘されています。

これらの影響がまだどの程度なのかは明らかになっていませんが、加齢黄斑変性は歳を重ねれば誰にでも起こりうる病気のため、早期からの注意が必要です。

 

アムスラー検査

加齢黄斑変性の視界の歪みや中心暗点を発見するためには、アムスラーチャートという格子状の図を用いた検査が有効です。この検査は医療機関で加齢黄斑変性かどうかを診断する際にも使用されます。自宅でも簡単にできますので、ぜひ定期的にチェックしてみましょう。

  1. 上記のアムスラーチャートを印刷し、壁に貼る
  2. アムスラーチャートから30cm離れる
  3. めがね(老眼鏡)やコンタクトレンズはつけたままにする
  4. 片目ずつ見え方をチェックする(歪んでいないか、中心が暗く見えないか、一部欠けて見えないか)

日本人は片眼性(片側だけ加齢黄斑変性を発症するタイプ)の方が多いため、片目ずつチェックしてください。少しでも見え方に違和感を覚えた場合は、すぐに眼科を受診しましょう。

早期に治療を開始すれば、通院での治療で視力を維持することが可能です。

 

加齢黄斑変性は加齢が大きなリスク因子となるため加齢自体は防ぐことができませんが、その他の生活習慣に起因するリスクを低減することで、発症のリスクを下げることができます。

現在、喫煙をしている方は禁煙をしましょう。先に述べたように喫煙は加齢黄斑変性の大きなリスク因子です。

高脂肪食は体の老化を早め、加齢黄斑変性の発症リスクを高めます。そのため、和食で野菜を中心とした低脂質の食事が好ましいでしょう。

運動は加齢黄斑変性のみならず、生活習慣病の予防にも役立ちます。適度な運動により加齢黄斑変性との関連が指摘される動脈硬化などを防ぐことができます。

ビタミンやルテインなどの抗酸化作用(アンチエイジング)を持つ栄養素のサプリメントの摂取が、加齢黄斑変性の予防に有効であるというデータが海外で報告されています。また、治験データに基づくサプリメントが販売されています。医療機関での予防的なサプリメントの処方は保険適用外ですが、気になる方は試してみるとよいでしょう。

加齢黄斑変性は歳を重ねると誰にでも起こりうる可能性があり、また進行すると失明の恐れのある病気です。私たちが生活において受け取る情報の8割は視覚からの情報に頼っているといわれています。それだけ、私たちの目は重要な役割を担っているのです。

そのため、今回紹介した加齢黄斑変性の予防法を実践し、ぜひ生活習慣を見直すところから始めていただきたいと考えています。

医学は日々進歩していますが、加齢黄斑変性で障害される網膜を含む、目の奥の神経を回復させる治療法はまだ見つかっていません。ですから、加齢黄斑変性が進行して網膜が傷つく前に、眼科を受診していただきたいのです。これが私たち眼科医の願いです。

ある程度早期の段階で治療を受けられれば、硝子体注射による抗血管新生療法や光線力学的療法など、通院による治療法で目を守ることができます。

最近見え方が気になる方でも、そうでない方でも、老眼が気になる年齢になったらぜひ今回紹介したアムスラーチャートによるセルフチェックを定期的に実施してみてください。また、アムスラーチャートのセルフチェックで正常に見えても、めがねやコンタクトレンズを使って視力が上がらない場合は、ただの近視遠視や老眼ではなく何らかの目の病気である可能性が高いです。

ぜひ、皆さんにはいつでも気軽に相談できる「目のホームドクター(かかりつけ医)」を持っていただきたいと思います。必ずしも大きな病院でなく、自宅や職場の近くなど通いやすいところで構いません。通いやすい「目のホームドクター」を持って、それぞれの専門医に紹介してもらうといいと思います。

もし眼科を受診するハードルが高ければ、めがねなどを買い換える際の視力検査でご自身の見え方をチェックし、違和感があれば眼科を受診するのもよいでしょう。眼鏡を使用して1.0の視力に届かない場合は、眼科の受診をおすすめします。

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  • 高崎佐藤眼科 院長

    日本眼科学会 眼科専門医

    佐藤 拓 先生

    1996年群馬大学医学部卒業後、群馬大学眼科研修医、公立富岡総合病院につとめる。1998年より群馬大学眼科医員、同助手(現助教)、同講師をつとめた。その後2016 年からは眼科クリニック高崎佐藤眼科を開業し、加齢黄斑変性の診断・治療から、硝子体・白内障の手術、硝子体注射、眼科一般診療まで、大学病院で行っている診療を身近に、快適に、患者さんへ提供することをモットーに、患者さんとご家族と一緒に病気に対して向き合う「二人三脚の医療」を行うことで、信頼される眼科クリニックを目指している。

    佐藤 拓 先生の所属医療機関

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