インタビュー

加齢黄斑変性の予防法と遺伝要因について

加齢黄斑変性の予防法と遺伝要因について
森 圭介 先生

国際医療福祉大学 眼科教授

森 圭介 先生

この記事の最終更新は2016年03月22日です。

加齢黄斑変性の発症には、高脂肪食や日光曝露、喫煙などの生活環境因子のほかに、「遺伝要因」も関係しているといわれています。どのような遺伝子が、加齢黄斑変性の発症にどの程度関与しているのでしょうか。また、日常生活でできる加齢黄斑変性の予防法にはどのようなものがあるのでしょうか。国際医療福祉大学病院眼科部長の森圭介先生にお伺いしました。

加齢黄斑変性の発症には数多くの遺伝子の関与が報告されていますが、特に次に挙げる3つの遺伝子が強く関与していると考えられています。

これらは加齢黄斑変性のリスク因子であり、より多くの遺伝子を持っている人ほど将来加齢黄斑変性を発症する可能性は高まります。

そのため、同じような生活をしていても、ご家族、特に兄弟に加齢黄斑変性の患者さんが多いという人は、ご家族に全く患者さんがいない人に比べて発症リスクは高まります。

ただし、ひとつの遺伝子にはリスクホモ・ヘテロ・ノンリスクホモの3種類があり、この組み合わせによりリスクは大きく変わります。たとえば、3つの遺伝子があれば27パターンの組み合わせができるというわけです。この組み合わせがどう遺伝していくかが問題となります。

私も参加させていただきましたが日本・シンガポール・香港・韓国の東アジアの間の国際共同研究では、2万人以上の遺伝子情報を解析し、その結果加齢黄斑変性の発症に関わるアジア人特有の遺伝子変異を4つ発見しました。その中でもコレステリルエステル転送蛋白(CETP)遺伝子の中にみつかった変異は、アジア人にしかみられないものです。加齢黄斑変性の治療薬は、今のところ全て欧米で開発されたものですが、この研究結果を受け、今後アジア人の加齢黄斑変性にとってより有効な治療薬が開発される可能性があります。

ただし、CETP遺伝子は加齢黄斑変性発症の大きな原因になるものではありません。遺伝因子には強いものと弱いものがあり、CETP遺伝子は後者に該当します。加齢黄斑変性の中には「東アジア人の特徴的な型」がありますが、日本人と韓国人、中国人の食生活は似ており、また、上記のどの国の男性にも喫煙習慣がありました。ですから、加齢黄斑変性の原因や型を決めるものは、現時点での知見では、遺伝因子よりも生活環境因子のほうが大きいのではないかと考えられています。加齢黄斑変性を防ぐためには、こういった生活環境因子を増やさないよう心掛けることが重要です。

ここまで繰り返し述べてきたように、タバコに含まれるニコチンには、新生血管の増殖に関わるVEGF等のサイトカインの分泌を促す作用があります。実際に喫煙者は非喫煙者に比べて加齢黄斑変性になる危険性が高いことが明らかとなっていますので、若いうちから禁煙することが大切です。現在若年層の喫煙率は低下していますが、これは眼病予防の面からみても非常によい傾向であると考えられます。

老化とは活性酸素が増えて“体が錆びる”(酸化する)ともいえます。加齢黄斑変性とは文字通り「加齢」が関与しているため、網膜の酸化を防ぐことができれば発症のリスクも低下すると考えられます。以下に、眼病予防によいとされる抗酸化物質を記しますので、積極的に食事に取り入れるようにしましょう。

【抗酸化物質(ビタミンC、E、ルテインアントシアニン、DHA等)】

緑茶・柑橘類・アセロラ・ほうれん草・かぼちゃ・ブロッコリー・黒豆・ブルーベリー・ぶどう・ピーマン・魚類等

これらを十分に摂取することは、眼病だけでなく全身の病気を防ぐことにも繋がります。

このほか、赤外線や紫外線を直接浴びないよう、眼を保護することも大切です。たとえば、屋外ではUVカット効果のあるサングラスや眼鏡をかけたり、つばの広い帽子をかぶるよう心掛けましょう。

このように日常生活内でできる工夫を継続して行うことで、加齢黄斑変性はある程度予防できると考えられます。

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