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ガンマナイフ治療とは? ――仕組みやメリット・デメリットについて

ガンマナイフ治療とは? ――仕組みやメリット・デメリットについて
叶 秀幸 先生

獨協医科大学病院 総合がん診療センター/脳神経外科 教授

叶 秀幸 先生

目次
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ガンマナイフとは、放射線治療装置のことを指します。ガンマナイフを用いた治療(ガンマナイフ治療)は、開頭手術を行わずとも脳病変の治療が可能であり、低侵襲(ていしんしゅう)な治療法として知られています。今回は、米国ピッツバーグ大学で長年にわたりガンマナイフの治療および研究に従事され、現在は獨協医科大学病院 脳神経外科において教授を務められる叶 秀幸(かのう ひでゆき)先生にガンマナイフ治療の仕組みやメリット・デメリットなどについてお話を伺いました。

ガンマナイフ治療は放射線治療の一種であり、ガンマ線という放射線を用いる治療方法です。“ナイフ”とありますがメスを使った治療ではなく、病巣をナイフで切り取るように治療が可能なことから“ガンマナイフ”と名付けられました。患者さんの頭をしっかりと固定したうえで病巣部に放射線を照射し、治療を行います。治療の仕組みと頭部の固定方法については、以下で詳しく解説します。

ガンマナイフの装置には、約200のコバルト線源が半球状に配置されており、そこからガンマ線が照射されます。病巣部に対して200本のビームを集中的に照射することで強力なエネルギーが発生し、狙った部分のみにダメージを与えることが可能です。1本1本のビームの力は弱いため、正常な組織にほとんど影響を与えることなく治療を行えます。虫眼鏡で太陽の光を集めると紙が焦げる現象をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

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ガンマナイフ治療のイメージ

ガンマナイフ治療の際には病巣に対して正確な照射を行うため、頭部を金属製のフレームで固定するか、もしくはプラスチックマスクで固定します。フレーム固定は、ピンで固定する際に局所麻酔をするため痛みが伴う側面はあるものの、体動の影響を受けにくいのがメリットです。一方、マスク固定は、患者さんの顔に合わせて成形したマスクを用いて固定を行います。フレーム固定に比べると体動の影響を受けやすくなるものの、痛みを伴わず、患者さんの負担軽減につながります。どちらがより適しているかは治療時間や病状などによって異なるため、治療選択の際は医師とよくご相談いただくとよいでしょう。

ガンマナイフ治療では、手術ができないと判断されるケースでも治療を行うことができます。たとえば、脳の深い部分にある腫瘍は大事な血管や神経が近くにあるため、手術が困難とされることもありますが、ピンポイントで照射が可能なガンマナイフであれば治療が可能です。そのほか、高齢の方など全身麻酔下での開頭手術が適さないと判断される患者さんにも有用です。

多発した腫瘍であっても治療が可能なうえ、照射時間も数時間で済みます。ガンマナイフ以外の放射線治療では正常な組織への影響を考慮し、弱い線量の放射線を複数回にわたって照射する必要があるため、治療終了までに数週間かかることもあります。一方、ガンマナイフの場合は病変部のみを狙った照射が可能であり、腫瘍細胞を破壊するのに必要な高い線量の放射線(ガンマ線)を集められるのが特徴です。複数個の腫瘍であっても1日で全てを治療することができるため、治療期間の短縮に役立ちます。

先述のとおり、放射線を集中させる場所以外への影響は極めて少なく、腫瘍が再発した場合でも再び照射をすることが可能です。これまで多発した脳腫瘍に対して一般的に行われていた全脳照射(脳全体に放射線を照射する方法)は、認知機能の低下が起こる可能性があるうえ、治療は1度(1クール)しか行うことができません。一方、ガンマナイフ治療は病巣部のみにダメージを与える治療のため、2回目、3回目も行うことができます。すでに1度全脳照射を受けている方であっても、ガンマナイフであれば照射が可能です。

人の手で行う手術はどうしても術者の技量に依存してしまう部分がありますが、ガンマナイフ治療の場合、治療計画も自動化されており、照射はボタンを押すのみです。俗に言う神の手を持つ医師のもとに訪れなくとも、ガンマナイフを導入している施設であればほとんど同じ精度の治療を受けることができます。

手術であればその場で腫瘍を取り除くことができますが、ガンマナイフ治療は照射後に腫瘍が縮小するのを待つ必要があるため、効果が現れるまで数か月~数年かかることもあります。悪性腫瘍の場合は比較的早く効果が現れる傾向があるものの、すぐに腫瘍を取り除いたほうがよいと判断される場合には手術などほかの治療方法を検討します。

ガンマナイフ治療は、基本的に直径3cm以下の病巣に対して有効とされています。大きい腫瘍になると照射する脳組織の体積が増えることで副作用が生じるリスクも高まります。3cm以上の腫瘍には分割照射(複数回に分けて照射する方法)を行う方法もありますが、大きな腫瘍はすでに脳を圧迫している可能性があり、その場合は手術を優先的に検討します。

先述のとおり、ガンマナイフは多くのメリットがありますが、治療である以上リスクはゼロではなく、副作用が生じる可能性もあります。放射線の影響については過度に心配をする必要はありませんが、気になることがある場合は医師に直接お尋ねいただくことをおすすめします。

ガンマナイフ治療によって一時的に脳が浮腫(むく)む可能性があります。多くは無症状ですが、頭痛や手足の麻痺など何らかの症状が現れた場合はステロイドの飲み薬によって治療を行います。そのほか、数%の確率で放射線壊死(ほうしゃせんえし)*なども起こり得ます。放射線壊死についても頭痛や、麻痺をはじめとする神経症状が現れた場合は、薬物治療や手術によって対処できることがほとんどです。

*放射線の過剰照射によって正常な脳細胞が死滅すること。

正しい管理のもとで行えばガンマナイフ治療の影響で新たにがんが発生したり、良性腫瘍が悪性化したりするような例は極めてまれであることが研究で明らかになっています。“放射線”と聞くと怖いものというイメージを抱く方もいらっしゃるかもしれませんが、放射線治療はきちんと各適応疾患への効果と一定の安全性が認められると証明されたうえで実施されているものであり、有用な治療選択肢の1つです。

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    叶 秀幸 先生

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