脳血管障害の治療の中でもっとも治療が難しいといわれる脳動静脈奇形。年間3~4パーセントと破裂率は高く、現在では開頭摘出術、血管内治療、放射線治療(ガンマナイフ)を適切に組み合わせて根治術が行われていますが、経験豊富な専門医による治療が必要です。この分野のエキスパートの一人である昭和大学藤が丘病院寺田友昭先生にお話をうかがいます。
つながった部分はナイダスと呼ばれる異常な血管の塊になっており、出血、けいれん発作などで発症します。すべての方が必ずしも治療を受けるわけではありませんが、年間3~4パーセントの確率で破裂することがわかっています。
くも膜下出血の原因となる脳動脈瘤は、脳とその表面を覆うくも膜の間にある太い血管に発生するため、破れると脳実質の外、つまり脳を覆っているくも膜の下に出血(くも膜下出血)を起こします。太い血管が破れるため、頭蓋内の圧力が一気に上がってしまい重症の場合死に至るケースも少なくありません。対してAVMの場合、脳実質内(脳そのものの中)に出血するため、出血した部位の脳が壊されてしまいさまざまな後遺症が残ります。
深部に存在するものや大きなAVMの治療は非常に困難です。特に、大きなものでは手術、血管内治療、ガンマナイフなどをうまく組み合わせて治療を行わないと、後遺症を出さずに根治させることは困難です。施設や医師の治療経験が少ないとなかなか完治しないケースもあります。他施設で2回3回と治療をしても根治しないということで受診される患者さんもいらっしゃいます。
この病気は、子どもや若年者にも多いことがわかっています。若年者で脳出血が起きた場合はまずこの病気が疑われます。出血のほかにも痙れん発作などが見られることがあり、若い時から病気が見つかっているケースは多いものの、治療の相談ができる病院がなくそのままにしている患者さんも少なくありません。しかし、近年の血管内治療のめざましい進歩やガンマナイフの導入に伴いAVMは治癒率が高くなり、適切な治療を受ければ完治できる病気です。ぜひAVMの適切な治療が可能な施設に相談してください。
脳動静脈奇形は血管の塊です。万が一手術中に誤った場所へ切り込んでしまうと大出血を起こす可能性があります。そのため、ナイダスをできるだけ小さくするか、出血しない状態にしてから摘出術を行うことが多くなってきています。大きなものでは、通常は血管内治療でナイダスを塞栓してからガンマナイフや開頭手術と組み合わせて根治を目指します。どの治療を組み合わせるかは、ナイダスの大きさや血管の構造、存在部位などを考慮して決定します。血管内治療では、脳を栄養する正常な血管を塞がないように、ナイダスだけを塞栓することがポイントです。
AVMの流入動脈血にOnyxやNBCAという液体塞栓物質を流し込み、ナイダスを閉塞していきます。Onyxには接着性はなく、液体の中に入れるとOnyx自体は固まりますが、原則として血管やカテーテルには接着しません。NBCA(シアノアクリレート系の接着性を低下させたような物質)は歴史的に最も古くから使用されていた液体塞栓物質で、Onyxとの違いは接着性があることです。現在ではOnyxが使用される頻度が高くなってきています。
大きなナイダスの場合、ガンマナイフの最大効果が見込める大きさ(2センチ)までOnyxで塞栓して小さくします。その後、残った部位にガンマナイフを照射してナイダスを消失させます。
ガンマナイフと同様にナイダスをできるだけ小さくし、その後、開頭手術でナイダスを摘出します。
ナイダスが大きい場合、血管内治療でOnyxを注入する時間も長くなります。Onyx自体に接着性はありませんが、あまりにも注入時間が長時間に及ぶとカテーテル周囲がOnyxで充填され、カテーテルが抜去できなくなることがあります。ナイダスを完全に閉塞するためには、できるだけナイダス近くから注入するのが望ましいですが、あまり末梢までカテーテルが入ってしまうとOnyxが逆流しカテーテル周囲を充填した場合にカテーテルが引き戻せないという問題が生じます。
現在、欧米では、ソニックという先端を離脱できるカテーテルが使用されています。カテーテルが抜けなくなる心配がないので、長時間、末梢から大量のOnyxを注入できるので、血管内治療によるAVMの根治率が上がります。
昭和大学藤が丘病院脳神経外科 教授
寺田 友昭 先生の所属医療機関
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