概要
過換気症候群とは、何らかのきっかけで急に呼吸過多となり、息苦しさや動悸、めまい、頭痛、手足のしびれ、吐き気、失神など、さまざまな症状が現れる病態を指します。“過呼吸症候群”とも呼ばれます。
主な原因として精神的不安や極度の緊張などが挙げられ、性格的に几帳面な方や心配性な方に多いといわれています。また若者、特に10~20歳代の女性に多くみられます。
まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることがありますが、過換気症候群によって命を落とすことはありません。一般的に予後は良好で、30分~1時間程度で症状が治まります。
原因
過換気症候群の原因には、心理的要因(不安・緊張・恐怖など)、身体的要因(発熱など)、激しい運動、疲労、睡眠不足などが挙げられます。
私たちは、空気を吸い込むことで酸素を体内に取り込み、息を吐くことによって体内でできた二酸化炭素を体外に出しています。この一連のガス交換を“呼吸”といいます。
過換気症候群では、上記のような要因が引き金となって過呼吸状態(息を何度も強く吸ったり吐いたりする状態)になります。すると二酸化炭素が過剰に排出されて血液中の二酸化炭素濃度が低下し、呼吸をつかさどる脳の呼吸中枢によって呼吸が抑制されます。その結果、息が吸えない、窒息しそうな息苦しさが生じるようになるのです。
また、過呼吸状態が続くと血液中の二酸化炭素濃度が大きく低下し、体がアルカリ性に傾くことでさまざまな症状が現れるようになります。
なお、過呼吸症候群は特に病気がなくても起こりますが、心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。
症状
上記のような要因をきっかけとして、突然息が吸いにくくなって息苦しくなります。こうなると不安や恐怖から浅くて速い呼吸となり、体内がアルカリ性に傾くことで、動悸、胸痛、めまい、頭痛、ふらつき、手足のしびれ、吐き気などの症状が現れます。
こういった症状によってパニック状態に陥ることもあり、死の恐怖を感じることもあります。また、まれに意識を失ったり、けいれんを起こしたりすることもありますが命の危険はありません。
症状が出てくると不安や恐怖を感じて、浅く速い呼吸を続け、その結果症状がさらに悪化するという悪循環に陥ります。しかし、ゆっくりとしたリズムで呼吸することで症状が治まってくるため、発作時には患者本人も周囲も落ち着いて対応することが大切です。
検査・診断
発作時に典型的な症状がある場合に過換気症候群を疑います。また、発作時に動脈血液の酸素と二酸化炭素の濃度を測ることで診断がつきます。
しかし、過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などの症状として起こることもあります。そのため、このような病気を除外する目的で、胸部X線検査や心電図などの検査が行われる場合もあります。
治療
過換気症候群は心臓や呼吸器の病気、パニック障害などによって起こることもあります。このような病気が背景にある場合には、その病気に対する治療が必要となります。
特に病気がない場合には、発作を起こすきっかけを作らないよう、日頃から体調を整えておくことが大切です。不安が強い患者に対して抗不安薬などの投薬が行われる場合や、カウンセリング、リラクゼーションが効果的な場合もあります。
発作時には不安や恐怖から悪循環に陥りがちですが、一般的には30分~1時間で症状が治まり、命に関わることはありません。そのため、発作が起こったときには周りの人は患者本人を落ち着かせ、ゆっくりと呼吸するように声をかけましょう。
なお、発作時の対応として、以前は口に袋を当てて吐いた息を再度吸わせるペーパーバック法が有効だといわれていました。しかし、この方法では酸素が不足したり、二酸化炭素が増えすぎたりして窒息死の危険があるため、最近では推奨されていません。
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