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遠位型ミオパチー

最終更新日:
2023年12月18日
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2023/12/18
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概要

遠位型ミオパチーとは、体幹から遠い筋肉(遠位筋)が障害されて徐々に筋力が低下する病気の総称で、国の指定難病です。なお、ミオパチーは“筋肉の病気”を意味します。

主に前脛骨筋(ぜんけいこつきん)、ふくらはぎの筋肉(腓腹筋とヒラメ筋)などに影響が出るため、歩きにくい、小さな段差でつまずくなどの症状が現れ、将来的に車椅子が必要な状態になるケースも多くあります。

遠位型ミオパチーには10以上の病気が知られています。日本では縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(またはGNEミオパチー)、三好型ミオパチー(または三好型遠位型筋ジストロフィー)、眼咽頭遠位型ミオパチーという3種類の患者が多いものの、これら3つのミオパチーを合わせても患者数は推計850人程度といわれており、とてもまれな病気です。好発年齢は病気によって異なり、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーと三好型ミオパチーは20~30歳代の若年者に多く、眼咽頭遠位型ミオパチーは中年以降に多く発症するとされています。

現在、遠位型ミオパチーはどの種類も根本的な治療法がなく、対症療法が治療の基本となります。

原因

遠位型ミオパチーは遺伝子の異常が原因で発症すると考えられています。

たとえば縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーは、細胞間の情報伝達に欠かせないシアル酸という物質の合成に関わるGNE遺伝子の変異が原因です。詳細なメカニズムは解明されていませんが、シアル酸の合成が低下することで筋萎縮などを発症するといわれています。

三好型ミオパチーはジスフェルリン遺伝子の変異が原因とされています。ジスフェルリン遺伝子は、筋線維の修復に関係するジスフェルリンというタンパク質の合成に関わっているため、異常が生じることで筋肉の萎縮や筋力低下などの症状が現れます。

眼咽頭遠位型ミオパチーは原因不明であることが多いものの、近年LRP12遺伝子などの 3塩基(CGG)繰り返し配列の伸長が原因となって発症した症例が多く報告されました。

縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーと三好型ミオパチーはどちらも常染色体劣性(潜性)遺伝で、父親・母親の両方が変異遺伝子を持つ場合に遺伝します。一方、眼咽頭遠位型ミオパチーは常染色体優性(顕性)遺伝の形式を取り、両親のどちらかに遺伝子変異がある場合に遺伝することがあります。

症状

種類によって障害される主な筋肉が異なるため、症状は病気によって変わります。

縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー

縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーでは、特に(すね)の外側にある前脛骨筋が障害を受けます。前脛骨筋は足首を持ち上げる際に使うため、障害されることで足首が十分上がらず小さな段差につまずきやすくなったり、歩きにくくなったりします。

症状が進行すると、お尻の外側に位置する中臀筋(ちゅうでんきん)や太ももの内側にある内転筋の筋力が低下するため、歩行時には反り腰で足首が持ち上がらない独特な姿勢になります。

障害される筋肉は徐々に痩せていき、個人差はあるものの発症から十数年ほどで立つのが困難となり車椅子が必要になるといわれています。

三好型ミオパチー

三好型ミオパチーは、ふくらはぎの筋肉が障害を受けやすいため、発症初期につま先立ちができない、ジャンプができないといった症状のほか、平坦な道でもつまずきやすくなる、階段の上り下りが困難になるなどの症状も現れるようになります。

進行すると、肩や二の腕、腰、太ももなど体幹に近い近位筋も障害され、発症から10年ほどで歩くのが困難となるケースが多いといわれています。

眼咽頭遠位型ミオパチー

眼咽頭遠位型ミオパチーは、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチーと同様に前脛骨筋が障害されやすく、つまずきやすいなど歩行に支障が生じますが、筋力の低下は比較的軽度です。

一方で、まぶたが下がったり食べ物をうまく飲み込めなかったりするほか、うまく発音できない、眼球運動障害によって物が二重に見えるなどの症状を伴います。

検査・診断

症状や家族歴などから遠位型ミオパチーが疑われる場合は、まず血液検査や針筋電図検査が行われます。

遠位型ミオパチーの患者は血清クリアチンキナーゼ(CK)が高値を示すケースが多いため、血液検査ではCK値を確認します。針筋電図検査では、電極針を筋肉に刺した状態で筋肉に力を入れたり抜いたりして筋肉細胞から発生する電気の波形を記録し、動きの速さなどを確認します。

このほか、筋肉の一部を採取して顕微鏡で筋肉の状態を確認する筋生検を行うこともあります。

治療

2023年11月時点において、遠位型ミオパチーは根本的な治療法が確立されていません。そのため、治療は症状を抑えるための対症療法が中心となります。

対症療法では主に関節が固まらないよう、ロボットスーツなどの装具を活用したリハビリテーションが行われます。遠位型ミオパチーでは多くの場合、発症から十数年で常時車椅子が必要な状態になりますが、装具を活用することで歩くことのできる期間をある程度延ばせると期待されています。

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