概要
開放骨折とは重度の骨折の1つで、骨折した際に骨が皮膚を突き破って体外に露出した状態のことを指します。骨折部に細菌が侵入して感染を引き起こす恐れがあり、露出した骨が感染すると骨髄炎となり、治療が非常に困難になるため速やかな治療が求められます。
開放骨折は、交通事故をはじめとする強い衝撃を受けることで生じます。骨折と同時に、血管や神経、肺の損傷などのさまざまな合併症が生じる場合もあり、血圧や呼吸状態、意識の有無などの全身状態や血管、神経、骨折部を順に評価したうえで治療方針が決定されます。
原因
開放骨折は強い衝撃を受け、折れて鋭くなった骨が皮膚を突き破ることで起こります。受傷のきっかけとなる強い衝撃としては、交通事故や高所からの転落、接触を伴うスポーツなどが挙げられますが、高齢の方では転倒するだけでも開放骨折となることがあるため注意が必要です。
なお、開放骨折では骨折部が体外に露出するため、細菌が骨に付着して骨髄炎を生じることがあります。骨髄炎を起こすと骨折部がなかなか癒合しなくなり、治りにくくなる“感染性偽関節”と呼ばれる状態になります。
症状
骨折部位の痛みや出血、腫れなどがみられます。皮膚が損傷し、損傷部位が大きい場合には骨が外から見えることもあります。
骨折によって周辺の組織が腫れ、血管や神経を圧迫するコンパートメント症候群を伴うことも珍しくありません。コンパートメント症候群の症状としては、痛みに加え、皮膚の色が青白くなったり、しびれや麻痺が生じたりすることなどが挙げられます。また、さらに圧迫されると血流障害や神経麻痺のほか、脈拍が消失してしまうこともあるため早期に発見し治療することが重要です。
通常、開放骨折は強い衝撃によって生じるため、全身が損傷を受けていることが多く、その場合には大量出血からの血圧低下、肺が損傷した場合には息苦しさや呼吸障害など、受傷箇所に関連した症状がみられることもあります。
なお、開放骨折は時間がたてばたつほど治療が難しくなるため、受傷後6~8時間以内に治療を開始することが非常に重要です。
検査・診断
骨折部位の評価には、X線検査やCT検査が行われます。
強い衝撃を受けることによって全身に異常が生じている場合もあることから、全身管理をしながら、超音波検査や全身の画像検査(X線検査、CT検査、MRI検査)などが行われることもあります。
また、治療の一環として切除される組織を用いて培養検査が行われます。これは、細菌感染の有無を調べるだけでなく、感染の原因となる細菌の抗菌薬に対する感受性を調べることで、適切な抗菌薬を選択する際の参考とするためです。
治療
開放骨折部の初期治療には、まず感染を予防するために洗浄やデブリドマン(細菌に汚染されたり壊死したりしている組織や異物の切除を行い、清浄化すること)が行われます。
その後、損傷した骨の固定が行われます。固定の方法には内固定と外固定がありますが、体内から固定する内固定では器具が感染を助長する可能性があります。そのため、感染が起きていなくても外固定が選択されることが一般的です。
外固定では、骨折部から離れた部位に金属製の柱などを挿入したうえで、体外で連結し骨折部が安定するような創外固定が行われます。なお、細菌に汚染された範囲が小さい場合には、6時間以内に徹底したデブリドマンを行うことで内固定による感染は起きにくいとされているため、内固定が選択されることもあります。
骨の固定のほか、皮膚の欠損や壊死がみられる場合には、二期的*に患者自身の正常な皮膚や組織を移植して修復します。
また感染が起きている場合はもちろんのこと、感染予防として抗菌薬が用いられ、破傷風を予防するための予防接種や免疫グロブリンの投与が行われることもあります。
さらに必要に応じて輸液や人工呼吸管理が行われるほか、血管が損傷していれば血管をつなぐ手術、コンパートメント症候群に対して圧を下げる手術など、状態に応じた治療が行われます。
治癒の過程では、運動機能を受傷前の状態に戻すことを目的に、なるべく早期のタイミングでリハビリテーションが開始されます。
*二期的:2回に分けて手術を行うこと。
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