逆子の位置を直す方法として、逆子体操や神経療法が知られています。しかし、これらは医学的な根拠が乏しく、その効果は明確とは言えません。このような状況を受け、現在より成功率の高い逆子矯正法として注目を浴び始めているのが、医師による「外回転術」です。外回転術の豊富な施行経験を持つ、国立成育医療研究センターの周産期・母性診療センター骨盤位外来の小川浩平先生にお話しいただきました。
逆子の矯正法として、「骨盤位外回転術」(以下、「外回転術」)という方法があります。これは、妊娠中に医師がお腹の外から胎児を回転させて頭位に導き、骨盤位での分娩リスクを回避するというものです。
一般に広く認知されている逆子体操(胸膝位)やポジショニング、鍼灸治療などは、その根拠が乏しいため、国立成育医療研究センターでは積極的な紹介や推奨はしておりません。対する外回転術は、逆子を治し、帝王切開の回避に有用であることが多くの報告により証明されています。国際的なコンセンサス(合意)が得られている唯一の方法ですので、当センターでも積極的に外回転術を取り入れて行っています。
外回転術は医学的根拠の高い逆子矯正法であり、アメリカ・イギリス・カナダなどの先進諸国では、ガイドラインで「妊婦さんに外回転術を紹介すること」を推奨しています。
まずは、海外の文献による外回転術の成功率を見てみましょう。
外回転術の成功率は、初産婦さんよりも経産婦さんの方が20%ほど高くなります。また、羊水が少なめの方に比べ、標準~多めの妊婦さんの方が、同じく20%ほど成功率が上がるというデータが出ています。
このほか、成功率を向上させる重要な要素となるのは、「麻酔の使用」です。外回転術では術者が比較的強い力を腹部にかけるため、妊婦さんが感じる痛みを取り除く目的で麻酔が使われています。しかし、麻酔のメリットは単に痛みの除去だけにはとどまりません。妊婦さんの腹壁の緊張を解くことができるため、赤ちゃんが子宮内で回転しやすい状況を作り出すことにも繋がるのです。このため、当センターで外回転術を行うときは、全例麻酔を使用しています。「国内で外回転術を行っている他の施設と比べて、なぜ当センターの成績が良好なのか」と質問を受けることもありますが、私はやはり麻酔の使用が大きいのではないかと考えています。
2012年1月から2014年8月のデータになりますが、当センターの外回転術の成績は下記のとおりです。
また、他院からのご紹介でいらっしゃった妊婦さんもいるため、以下は全例ではありませんが、外回転術で頭位に矯正された後に分娩を終えられた174名のうち、経膣分娩に至った人数と割合は次のようになっています。
※こちらも2012年1月から2014年8月までのデータです。
上記のうち、外回転術の施行中に緊急帝王切開となった方は7名いらっしゃいましたが、その後の経過は母子ともに元気に退院されました。
先に、麻酔を使うことで外回転術の成功率が上がるとお伝えしました。麻酔の使用には、外回転術の施行中、急きょ緊急帝王切開を行う必要が生じたとき、即座に手術に入れるというメリットもあります。緊急帝王切開のリスクなど、外回転術施行時に起こりうるトラブルについては記事5で詳しくお話ししますが、麻酔の使用は、こういった緊急事態に対するリスクヘッジにもなっているのです。
国立成育医療研究センター 産科医員
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