妊娠中には目立った症状のない「逆子」ですが、分娩時にはリスクを伴うため、多くの施設で帝王切開による分娩が行われています。逆子の経膣分娩(自然分娩)には、どのような危険があるのでしょうか。国立成育医療研究センター周産期・母性診療センターにて骨盤位専門外来をご担当されている小川浩平先生にお話を伺いました。
逆子の状態での経膣分娩には、下記のように、非常に多くのリスクが伴います。
このような事態を回避するために、多くの施設では帝王切開による分娩が推奨されています。上記のリスクについて、次項で詳しく解説していきましょう。
頭位の赤ちゃんの経膣分娩では、最も大きい部位である頭部さえ母体から出てこられれば、その後はスムーズに分娩できるケースがほとんどです。
しかし、逆子の場合は最後に頭部だけが骨盤に引っかかってしまう可能性があります。このとき、へその緒は子宮から出て骨盤に挟まっている状態であり、赤ちゃんへと送られるべき血流は遮断されてしまっています。酸素や栄養素を運ぶ血液がうまく循環せず、更に頭部が母体から出ていないために口呼吸もできない状況が長時間続いてしまうと、赤ちゃんは低酸素状態に陥り、後遺症がのこったり、最悪の場合死に至ってしまう危険も考えられます。
また、骨盤位分娩では頭位分娩と比べて先進部が小さいため、子宮口の隙間からへその緒が子宮外に脱出(臍帯脱出)する頻度が高いことが知られています。この場合も先の話と同様に、赤ちゃん自身の体でへその緒を圧迫してしまうため、神経障害や胎児死亡のリスクとなると考えられます。
上記のような事態に陥っている中で、迅速かつ安全に分娩するには熟練の技が必要になります。しかし、帝王切開が主流となっている現在においては、こういった手技をマスターしている産科医は今や少数です。また、たとえ産科医が豊富な経験と高いスキルを持っていたとしても、このような局面を100%安全に乗り切ることは難しく、たとえば頭が引っかかって分娩にならない赤ちゃんを急いで分娩にさせようとすると、赤ちゃんの首に負担がかかり、頸椎(けいつい)の神経が傷つき下半身麻痺になってしまったり、首の骨が折れてしまうという事故に繋がることも起こり得ます。
逆子の経膣分娩によるこのような事故は、過去のデータでは全分娩の3-5%に起こっていたとあります。もちろん、医療者のレベルや赤ちゃんの状態により、この数値には差が出ますが、上述のリスクを想定すると、やはり経膣分娩は勧められません。
「してはいけないこと」はありませんが、なるべく遠方地には行かないよう心掛けていただきたいと考えています。というのも、赤ちゃんが逆子の状態で破水してしまうと、足が出てしまったり、頭位に比べ子宮口側に隙間が多いため、へその緒だけ先に出てしまう(臍帯脱出)ことがあるからです。また、分娩が急速に進行して、先に述べたように頭が引っかかった状態になることも考えられます。
このようなトラブルが起きた時、すぐに病院に来ていただければ、多くのケースでは即座に緊急帝王切開を行って救うことができます。しかし、処置までに3時間、4時間と長時間かかってしまうと、へその緒の血流が遮断されている場合などでは、後遺症などをのこさずに救命することは難しくなってしまいます。全ての妊婦さんに対していえることではありますが、逆子と診断されているときにはより意識的に、病院にすぐにアプローチできるよう、態勢を整えて行動していただきたいと思っています。
先に、経膣分娩によるリスクを回避するために、帝王切開を選択しているとお話ししました。しかし、帝王切開にもまたリスクが存在します。たとえば、多量の出血により輸血が必要になることがあります。また、頻度は稀ながら、腸管損傷、腸閉塞、術後感染、肺感染症などの合併症を起こすこともあります。このほか、腹部に瘢痕がのこるという美容上の問題も生じます。
帝王切開には、前項で挙げたリスクや母体にかかる負担のほか、「基本的に次に出産する時も帝王切開になる」というデメリットもあります。逆子は再発率が高いといえど、それは数値にして10%であり、次のお子さんが逆子ではないケースは90%という高い割合を占めています。しかし、一度逆子で帝王切開分娩をした以上、次のお子さんが頭位であっても帝王切開を行わねばなりません。
当センターで行っている「外回転術」による逆子矯正の大きなメリットは、「一回の帝王切開だけでなく、二回目・三回目の帝王切開のリスクを回避できること」であると考えています。特に、二人以上お子さんが欲しいと希望されている方には、一回の帝王切開のリスクと、外回転術という選択肢について、あらかじめ知っておいていただきたいと感じています。
国立成育医療研究センター 産科医員
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