概要
PCB(およびダイオキシン類)中毒とは、ポリ塩化ビフェニルという有機化合物のひとつが体内に取り込まれることによって引き起こされる健康被害のことです。
名称の記載について
日本で報告されているPCB(およびダイオキシン類)中毒はカネミ油症のみです。 カネミ油症は、PCBと関連化合物であるPCDF類のダイオキシン類似化合物による複合中毒で、正しくはPCB中毒のみによる中毒ではありません。そのため、この記事では「PCB(およびダイオキシン類)中毒」という記載を用いています。
PCBは、かつて電気回路のコンデンサーの絶縁体や熱交換器の熱媒体、複写用紙などに利用されていましたが、人体への有毒性や生態系への悪影響が懸念されるようになり、2018年現在では原則として使用が禁止されています。
原因
日本で報告されているPCB(およびダイオキシン類)中毒には、1968 年の食用ライスオイルによる大規模な食品中毒・カネミ油症があります。当初、カネミ油症の原因は、ライスオイルの製造過程で用いたれた熱触媒であるPCBと考えられていました。しかし、その後の研究によりPCBを加熱されることによって発生するPCDF(polychlorinated dibenzofuran)類などのダイオキシン類似化合物であることがわかりました。特に、2,3,4,7,8-PeCDFが主な原因と考えられています。
ダイオキシン類は、水よりも油に溶けやすく、比較的安定していて分解されにくい化学物質です。ダイオキシン類がヒトの体内に取り込まれ、脂肪組織や脂肪成分の多い組織に長期間にわたって溜まることで、さまざまな臓器障害や生殖・発生の異常をきたすと考えられます。
症状
PCB(およびダイオキシン類)中毒では、以下のような症状がみられます。
- 皮膚の症状:顔や体幹部の痤瘡様皮疹、爪や顔、歯肉の色素沈着
- 呼吸の症状:咳嗽、喀痰
- 四肢の症状:手足のしびれ、知覚鈍麻、関節痛
- 全身の症状:倦怠感、食欲不振、体重減少、頭重感
- 内分泌の症状:月経異常、制欲減退 など
また、生まれてくる赤ちゃんにも、関連性が考えられる異常がみられたという報告があります。その例として、一般的な発育低下や遅延、学習機能の低下、皮膚の黒色化などが挙げられます。
検査・診断
問診では、患者さんに現れている症状や生活環境といった情報の把握が大切です。また、類似した症状を持つご家族や近隣の方々などがいないかどうか、確認が行われます。血液検査では、血清トリグリセリドやγ-GTPの増加が確認されます。
また診断のために、血清PCB濃度や血清PeCDF濃度が上昇しているかどうかの確認が行われます。
治療
PCB(およびダイオキシン類)は、体内で分解されにくく、解毒する特効薬もありません。そのため、PCB(およびダイオキシン類)が原因となって引き起こされたいろいろな症状に対する対症療法が中心となります。
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