連載「健康経営の最前線」ー現場に聞いたリアルストーリー

グループのつながりやデータ活用で生み出す成果―総合人材サービスパーソルグループの健康経営

公開日

2024年12月20日

更新日

2024年12月20日

更新履歴
閉じる

2024年12月20日

掲載しました。
84f53d2a39

<パーソルホールディングス株式会社 人事企画部 松永圭史さん>
<パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 人事部 小田千聡さん>
<パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社 人事部 中川美咲さん>

経済産業省によって2016年度に創設された「健康経営優良法人認定制度」は、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実施する企業を表彰しています。表彰された企業ではどのような健康経営を行い、どのような成果を出しているのでしょうか。
この制度によって「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されているパーソルホールディングス株式会社(以下、パーソルホールディングス)と、そのグループ会社であり「健康経営優良法人(大規模法人部門)」かつ「ホワイト500」に認定されたパーソルワークスデザイン株式会社(以下、パーソルビジネスプロセスデザイン)*。グループ間でデータ活用やノウハウ共有を行い、働きやすい環境を実現しています。具体的な取り組みや成果、今後の展望などについて両社の担当者に話を伺いました。

*2024年10月1日にパーソルワークスデザイン株式会社はパーソルプロセス&テクノロジー株式会社と統合し、パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社に社号変更

在宅勤務の孤独感やストレス軽減プログラムの導入

――健康経営に取り組み始めたきっかけや、これまでの取り組みをお聞かせください。

パーソルホールディングス:
パーソルグループでは、「健康」をエンゲージメントの土台と位置付け、2020年よりグループ横断の取り組みを開始しました。

2020年には、まず、ストレスチェックをグループ全体で統一し、社員の精神的な健康状態をグループで把握できるようにしました。またCOVID-19感染拡大でリモートワークが普及して以降、グループ内でメンタルヘルス不調者が増えたことを踏まえ、デジタルウェルネスプログラムを展開し始めました。
具体的には、産業医や公認心理師、コミュニケーションの専門家を招いて、在宅勤務やデジタルワークにおけるメンタルヘルス対策・健康維持方法について、実践的なポイントを学べるセミナーを実施しました。現在は、セミナーの内容をオンラインで受講できるようにしています。また、グループ全体でのメンタルヘルス不調者の数を把握できる体制も整備しました。

――「デジタルウェルネスプログラム」を進めるなかで課題や成果はありましたか?

パーソルホールディングス:
グループ全体での受講率にはまだ課題があります。ただ、これまでの取り組みを分析するなかで、受講率が高いグループ会社ではメンタル不調者が少ない傾向があるというデータが得られたのは成果です。このことから職場の健康意識が高い企業ほど働く環境の整備を意識する傾向があるのではないかと考え、健康の大切さやヘルスリテラシーについて継続的に発信していくことの価値や意義を感じています。

1

社内の有資格者の活躍や経営陣の率先行動により、健康意識が浸透

――パーソルビジネスプロセスデザイン株式会社(旧パーソルワークスデザイン株式会社)には「ヘルスケア部門」があるとのことですが、この部門を中心に健康経営を推進しているのですか?

パーソルビジネスプロセスデザイン:
社長が『健康づくり責任者』となり、人事部が中心となって健康経営に取り組んでいます。ヘルスケア部門は健康保険組合や企業を対象に、特定保健指導や健診予約代行サービスを提供している部門です。サービスで活用している資料や、オリジナルの体操を社内で発信してもらうなど、知見を生かして自社の健康経営にも参画してもらっています。

社内の臨床心理士が講師となってメンタルセルフケア研修を行った際は、ほぼ全ての社員が受講し、その年の高ストレス者の減少につながりました。社内の資格保持者が活躍することで専門的なアプローチができただけではなく、健康経営に取り組んだ経験や成果を、サービスや顧客とのコミュニケーションに生かすことができました。

人事発信で取り組んだ施策として印象的なものは、禁煙施策です。経営陣が率先して禁煙に取り組み、その様子を社内ブログで発信したところ、管理職も自ら取り組むようになり、禁煙にチャレンジする人が増えました。自らグループを組んで、励まし合いながら禁煙に取り組む社員もいました。 

グループ全体でデータ分析し、各社の施策展開に生かす仕組み

――グループ全体で取り組むメリットは、どんなところにありますか?

パーソルビジネスプロセスデザイン:
グループ会社の1つである弊社は、限られた人数で自社の健康経営を進める必要があり、効果的な施策を検討するうえで必要なことと分かっていても、データ活用や分析まで手が回らないことが悩みでした。しかし、グループ会社であるパーソルホールディングス株式会社がその部分を補うことで、自社の課題や目標を明確にし施策に生かすことができています。

パーソルホールディングス:
各社の健康経営のKPIの状態を数値で示した「健康増進レポート」の作成や、各KPI同士の関係やKPIの改善・悪化要因の特定といった統計的な分析結果の共有にも力を入れています。

現在でも身体的な疾病を理由にした休業の状態をグループ全体で把握できる仕組みはありますが、今後は未病の状態についてもグループ全体で状態を把握できるようにするため、健康診断結果の管理プラットフォームの導入も進めていく予定です。

パーソルグループでは現在「人的資本経営」を中核に据え、

  1. データドリブン(データ分析を行う人材の育成、各種BIプラットフォームの整備)
  2. トップコミットメント(経営陣の報酬評価にエンゲージメント指標などを組み込み)
  3. 各社の人事担当者の巻き込み(グループ全社人事会議でのノウハウ共有)

の3つをポイントに置いて取り組んでいますが、特に横のつながりはグループならではの強みです。
たとえば、現在、グループの中核を担う大規模な会社には「健康経営優良法人」以上の認定取得を奨励しており、実際に認定を取得する会社が増えていますが、調査票の記入方法や取り組み事例などのノウハウをグループ間で共有できることが役立っているのではと考えています。

2

心身ともに健康に、「はたらいて、笑おう。」を実現したい

――今後、注力していきたいことは何ですか?

パーソルホールディングス:
長時間労働やメンタル不調など、一般的に「はたらく」には負のイメージが含まれることもあると思いますが、労使双方の努力次第で心身ともに健康に「はたらく」ことは当然可能だと思いますし、むしろ「はたらく」ことで心身ともにより健康になれるということを、証明していきたいと考えています。今後は収集した健康情報の分析をさらに進め結果を活用することで、『はたらいて、笑おう。』というビジョンを実現したいです。

パーソルビジネスプロセスデザイン:
健康経営施策を通してたくさんの社員に健康について考えてもらったり、よりよい状態に向かって行動してもらったりしましたが、健診結果や労働時間などの効果の指標となる数値には、まだ成果がでていません。健康経営の取り組みを続けることで、改善を目指します。

 

取材依頼は、お問い合わせフォームからお願いします。

「健康経営の最前線」ー現場に聞いたリアルストーリーの連載一覧

  • グループのつながりやデータ活用で生み出す成果―総合人材サービスパーソルグループの健康経営