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連載自分を守る!家族を救う!! 家庭の救急知識

こんな「女性の腹痛」には気をつけて!

公開日

2019年03月20日

更新日

2019年03月20日

更新履歴
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2019年03月20日

掲載しました。
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国際医療福祉大学医学部 救急医学講座教授、国際医療福祉大学病院救急医療部

志賀 隆 先生

どんな人でもおなかが痛くなることがあります。ただ、多くの場合には病院へ行かなくても痛みがおさまることが多いでしょう。しかしながら、「こんな時には病院に行くべきだ」というケースもあります。今回は特に女性の腹痛について、注意すべきおなかの痛み、そして「腹痛と一緒にこのような症状が出たら要注意」という話を、救急医の視点から解説します。

30代女性を突然襲った激しい腹痛

30歳の女性、加藤さんは午前の会議を終えて自分の机に戻った際、突然左下腹部に痛みを感じました。痛みは非常に強く、だんだんと下腹部全体が痛くなってきました。トイレに行ったものの痛みはよくなりません。あまりにも痛そうな様子に、心配した同僚が救急車を呼んでくれ、救急外来へ運ばれました。

加藤さんのようなケースは、救急医からすると「心配な女性の腹痛」です。どのあたりが「心配」なのか? 症状のポイントから考えてみましょう。

腹痛を起こした女性

救急医が腹痛を考える際の4つのカテゴリー

女性の患者さんが腹痛を訴えたとき、痛みの原因として主に次の4つのカテゴリーに分けて考えることが多いです。

内科系の病気

胃腸炎、消化性潰瘍(十二指腸潰瘍胃潰瘍)など

外科系の病気

虫垂炎、消化管穿孔、絞扼性腸閉塞(こうやくせいちょうへいそく)などの手術が必要な病気

泌尿器系の病気

膀胱(ぼうこう)炎腎盂(じんう)腎炎尿路結石

婦人科系の病気

卵巣茎捻転(ねんてん)卵巣出血異所性妊娠(子宮外妊娠)、骨盤内炎症性疾患子宮付属器炎骨盤腹膜炎、卵管留膿症、ダグラス窩膿瘍<かのうよう>)などです。

このカテゴリーを念頭に、「嘔吐(おうと)下痢などが中心で胃腸炎なのか?」「みぞおちの痛みがあって黒い便が出ているから十二指腸潰瘍など疑うか?」「おなかの右下の痛みを訴えるから虫垂炎を疑うか?」などと考えながら、患者さんのお話を聞いて診察をしていきます。

このリストから加藤さんのケースを考えると、

  • 若い女性
  • 急激で強い痛み
  • 痛みがよくならないところ

が気になるポイントです。下腹部の痛みが強く、「初めにみぞおちの痛み→右下腹部の痛み、右の下腹部だけ押した際に痛みがある」という虫垂炎を積極的に疑う状態ではありませんでした。そのため、今回は婦人科系と泌尿器系を中心に検討します。

婦人科系の病気

異所性妊娠

「私、身に覚えがありません」「今、生理中です」「数日前に生理が終わったばかりです」「産婦人科医院で中絶(人工妊娠中絶)の手術をしたばかりです」これらは、すべて異所性妊娠だった患者さんの一言です。女性の腹痛の中で最も緊急性が高く、救急車を呼ぶなどして一刻も早く病院へ行って手術する必要があります。

救急車

異所性妊娠は、主に卵管などの子宮以外の場所に受精卵が着床し成長してしまう(=妊娠してしまう)ことによって起こります。子宮以外の場所にある胎嚢(たいのう)が大きくなっていくと、最終的にその場所で着床した組織とともに破裂するか、自然消失します。破裂すると大量の出血が起こることがあります。その場合、突然の腹痛、低血圧や失神、冷や汗が出る、脈が速くなるなどの症状が現れます。ただ、前述のように患者さんが否定していても実際には妊娠していることもあり、妊娠検査をしないかぎりは診断がなかなかすすみません。

卵巣茎捻転

次に卵巣茎捻転が重要です。卵巣の茎の部分がねじれてしまうことによって起こる病気です。この病気は将来の妊娠の可能性にもかかわるため、迅速な判断を心がけています。

主な原因は、腫瘍(卵巣膿腫)などによって卵巣が大きくなってしまうことです。一般的には卵巣の大きさが4〜6cmを超えると卵巣茎捻転を起こしやすいといわれています。捻転しているかの最終診断は、超音波検査、CT、手術(腹腔鏡の場合もあります)などで行います。

卵巣出血

排卵や外的な刺激などによって起こる卵巣からの出血です。量が多いと、出血が「腹膜」というおなかの中の膜を刺激して、かなりの痛みが広い範囲に出ます。基本的には痛みを抑えながら経過をみることが多いのですが、痛みがとても強い場合には入院となることもあります。また、出血の量が非常に多い場合には血圧が下がって危険な状態に陥ることもあります。このような場合には輸血や手術となることもあります。

骨盤内炎症性疾患

こちらはあまり聞かない病気かもしれません。これは感染症の一種で、女性の上部生殖器(子宮、卵管および卵巣)に起こるものです。どこに炎症が生じているかによって「子宮付属器炎」「骨盤腹膜炎」など名前が細かく分かれます。

一般的には、パートナーがクラミジアや淋菌(りんきん)などの菌に感染している状態で性交することによって感染します。他に、何らかの病気による免疫力低下や子宮内避妊器具の使用によっても起こる可能性があります。 典型的な症状として、下腹部痛、おりもの、不正出血が生じます。また、発熱や強い腹痛が出ることもあります。

泌尿器系の病気

膀胱炎/腎盂腎炎

一般的に膀胱炎の原因は細菌感染です。膀胱炎は女性に多い病気で、もともと尿道と肛門が近い構造であることや、男性と比べて尿道が短く細菌が膀胱に達しやすいことも女性に多い理由と考えられます。症状としては、頻尿、排尿時の痛み、残尿感、尿の濁りや血尿などの症状があります。尿検査を行うことによって診断され、合併症がなければ通常3日間、抗菌薬を使用することで治療できます。女性の膀胱炎を予防する方法として、水分を多くとる、排尿を我慢しない、性交後に早めに排尿するなどの方法があります。

膀胱炎の症状に加えて、発熱、側腹部痛、嘔気嘔吐、わき腹や片側の背中をたたいた時に強い痛みがある場合には、腎盂腎炎が考えられます。これは膀胱に感染していた細菌が腎臓まで到達してしまい腎臓が感染してしまった状態です。腎盂腎炎の場合は症状も強く、長く続くため、場合によって入院にて治療をすることもあります。

尿路結石

腎臓にできた石が移動して尿路の途中で詰まってしまう病気です。突然の脇腹や背中の痛みが特徴的です。非常に強い痛みが突然起こるため、救急車で運ばれる患者さんもしばしばいます。診断は、尿検査、超音波検査、CT検査で行います。通常は痛み止めを飲んで石が通りすぎるのを待ちます。ただ、石によって尿の流れが悪くなって感染が起こり、発熱している場合には緊急の手術が必要なこともあります。また、もともと腎臓の機能が悪い人の場合もしくは片方の腎臓しか機能していない人の場合も、入院や手術が必要です。石のサイズが10mmを超えると自然に排出される可能性が小さいため、衝撃波で石を砕いたり外科手術で取り除いたりするなどの処置が必要となります。

加藤さんの腹痛の正体は?

冒頭の加藤さんの場合妊娠反応は陰性でした。強い腹痛があるため超音波検査で卵巣が大きくなっていないかを調べましたが、それもありませんでした。卵巣出血や虫垂炎などの検索のために造影CT検査が行われ、卵巣出血であることが判明。痛みが強かったため、婦人科に入院して3日後に無事退院となりました。

いかがでしょうか?「様子をみていたら自然によくなる」「トイレに行ったらよくなる」など心配のいらないおなかの痛みが多いものですが、中には上に述べたような怖い病気につながるものもあります。こうした腹痛は、病院で診察や検査をしてみないと結論が出ないこともあります。今回は女性の腹痛の中でも特に怖い痛みを取り上げてご説明しました。こういった病気もあることを知り、危険と思われる症状があったら受診のタイミングをご検討いただけたらと思います。

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国際医療福祉大学医学部 救急医学講座教授、国際医療福祉大学病院救急医療部

志賀 隆 先生

学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センターでは救急の基盤をつくり、国際医療福祉大学医学部救急医学講座教授に着任。後進の育成にも力を注ぐ。