連載自分を守る!家族を救う!! 家庭の救急知識

夏本番に備える 熱中症になりにくい体作りと日々の過ごし方

公開日

2023年07月24日

更新日

2023年07月24日

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2023年07月24日

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

今年の夏も暑いです。東京をはじめ東日本、西日本の各地で、気象庁による梅雨明けの発表前から“命にかかわる暑さ”の日が続出しています。晴れの日が増えると気分は爽快になりますが、湿度の高い日本では注意すべきことがあります。病院で働いていると気温の上昇と比例して熱中症の患者さんの搬送が増えるのです。搬送されてくる方は、屋外での作業の方もいらっしゃいますし、室内でエアコンのない環境で長時間過ごしたことによって熱中症になった患者さんもいらっしゃいます。夏本番はこれから。今回は熱中症にならないために気を付けたいポイントをまとめます。

危ない時間帯の活動を避ける

熱中症のリスクが高まるのは気温と湿度が高い時間帯、具体的には10~18時台までが危険です。特に、救急搬送などが増えるのは12時頃と15時頃ということが分かっています。

屋外の気温が31~35℃であったり、暑さ指数(WBGT)*が28~31となってきたりすると「厳重警戒」となります。この際には、激しい運動や屋外での作業は可能な限り避けたほうがよいでしょう。また、気温が35℃以上、暑さ指数が31以上になった場合は「危険」となり、運動は原則中止とされています。

環境省の「熱中症予防情報サイト」で暑さ指数や熱中症警戒アラートを確認できますので、屋外での活動時には参考にしてください。

*暑さ指数(Wet Bulb Globe Temperature):熱中症を予防することを目的にアメリカで提案された指標。人体の熱収支に与える影響が大きい、湿度、日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、気温――の3要素を取り入れて数値化したもの。

屋外での作業や活動があるなら暑熱順化を

前述のように、一番よい対策は温度・湿度が高い環境を避けることなのですが、日本の夏を楽しむためにはそうも言っていられません。また、お仕事をされていたら、日中の厳しい環境でもなんとか仕事を続けなければいけないこともあるでしょう。そのようなときの対策として、暑熱順化といって体を徐々に暑さに慣れさせるのです。暑熱順化ができていると▽皮膚の血流量が増えやすく熱放散しやすくなる▽汗に含まれる塩分が少なくなりナトリウムを失いにくくなる▽体温が上昇しにくくなる――といった変化が起こります。基本的に約2週間かけて暑さに順応していくことが望ましいです。特に、新人や休み明けの方の対応が重要になります。過去に屋外の同様の環境で働いたことのある方でも、いきなり1日全て屋外で労働することはおすすめしません。まず、屋外での労働時間を、初日は1日の労働時間の20%までに制限することが必要です。翌日以降は2日目50%、3日目60%、4日目80%、5日目100%――と少しずつ増やして暑さに順応していくことが推奨されます。

水分補給・休憩はどうすべきか

基本的には15~20分おきにコップ1杯の水分を補給することが必要です。のどが渇いてからだと水分補給のスピードが遅くなってしまいます。積極的に水分を取ることで、のどが渇かないようにする必要があります。水分としては、経口補水液やスポーツドリンクがよいですが、もし手元にミネラルウォーターや清涼飲料水しかなければ、それでも飲んだほうがよいです。ただし糖尿病や心不全など持病のある方は、熱中症になるような活動の時間や水分の取り方などについて主治医とよくご相談ください。

暑い環境下にいるときは1時間おきの計画的、積極的な休憩が重要になります。日陰やエアコンの効いた場所で休むようにしてください。

熱を閉じ込めない服装を

体の中の熱をいかに閉じ込めないようにするかが、熱中症対策でとても重要になります。そのための服装としては

  • 通気性がよい
  • 体にピッタリせずゆとりがある
  • 色は白など熱を吸収しにくい明るい色

――のものがおすすめです。帽子・ヘルメットや手袋、作業着などは安全のためにはやむを得ないものですが、熱中症のリスクとなります。休憩時間には、可能な限り脱いだり外したりしましょう。

ペアになって活動を

仕事でもそれ以外でも、ペアで活動することをおすすめしています。病院に運ばれる方に多いのが1人で活動をしていて突然倒れてしまい、数時間してから発見されるというケースです。こうなってしまうと、発見される前にどんどん症状が重くなってしまいます。ペアで活動することで、お互いの体調を確かめることができます。加えて、水分摂取や休憩のタイミングも忘れずに計ることがきます。

リスクのある方

子ども(と保護者)、高齢の方、持病があってお薬を服用している方などは、リスクを自覚して行動するようにしましょう。

子どもは身長が低いこともあり、地面やコンクリートからの照り返しが直接影響します。また、どうしても水分補給が遅れてしまいがちです。そもそも子どもは体温調節機能が未発達で、体に熱がこもりやすく体温が上昇しやすくなります。また、全身に占める水分の割合が大人より高いため、外気温の影響を受けやすいのです。熱中症になっても、機嫌が悪い、頭痛がある、吐き気があるなど普段からみられるような症状を示すことが多く、大人が気付かないとなかなか対応できません。保護者の方は子どもを1人にせず、のどが渇く前に水分補給をさせるよう配慮してあげてください。

大人でも高齢の方は体温調節の機能が落ちたり、熱中症の症状に気付くことができなかったりする方もいます。また、エアコンをつける習慣がない、あるいは節約のためにエアコンをつけていないなどしていて運ばれる方もいます。一人暮らしの高齢者が熱中症で搬送されてくることはよくあります。できるだけ訪問の機会を設けたり、ヘルパーさんをお願いしたりすることを検討してください。

持病があって、メンタルヘルス、アレルギー、ベータ遮断薬など一部の高血圧のお薬を飲んでいる方も発汗による体温調節が難しいことがあります。普段服用しているお薬についてそうした危険がないか、主治医から説明を受けておくといいでしょう。

熱中症のリスクを知り、十分に対策を取って安全に楽しい夏を過ごしてください。
 

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センターでは救急の基盤をつくり、国際医療福祉大学医学部救急医学講座教授に着任。後進の育成にも力を注ぐ。