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新型コロナウイルス対策で我々の“現在地”は? 出口はどこに?

公開日

2020年03月26日

更新日

2020年03月26日

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2020年03月26日

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2020年03月26日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行抑止のため、2月26日に政府がイベントなどの中止や延期といった対応を要請してから1カ月。長い対応の日々が続き、外出もはばかられるなど大変な日々を送っているのではないでしょうか。「コロナ疲れ」という言葉も聞かれるようになり、先が見えない閉塞感も社会に漂っています。今回は新型コロナウイルスの影響が今後、どれくらい続いていくのかについて考えます。

学校休校要請の効果は?

まず、現在の対策の効果について検討します。

今回のコロナウイルスに関して、小中高校の休校は意味があったのでしょうか。休校要請のもたらした影響や効果について直接的なデータは、残念ながらありません。中国のデータに基づくと、新型コロナウイルスの小児の感染は少ないのではないかという解釈もありました。しかし、感染者の家庭内で小児も感染していたものの、症状がなかったという例も報告されていました。

中国では日本よりも積極的に検査をしていますが、対象は症状のある方や重症の方が中心になっていた可能性が高いです。これらから考えられることは「小児も感染してはいるが、軽症のことが多く検査がされていない」という可能性です。

同じ気道感染を起こすインフルエンザの知見がコロナウイルス感染でも有効であると考えられるため、参照・検討します。インフルエンザでは家庭内での感染の危険性が指摘されています。小児がコロナウイルスに感染し、同居の高齢者がいた場合には小児から高齢者に感染する可能性が出てきます。特に、屋内で向き合って話したり、子どもの手に付いたウイルスが階段の手すりなどを介して高齢者の手に付着したりすると、家庭内で感染するおそれがあると考えられます。

小児と高齢者

これも中国のデータですが、高齢者が新型コロナウイルスに感染すると重症・重篤化しやすいとされています。学校という集団生活で子どもが感染したものの症状がなく、自宅で高齢者にうつって重い肺炎を発症する――。そうしたことを避けるという意味では、休校の対策は始め方が性急であったものの、ある程度効果が期待できるのではないかと思われます。ただ、休校をした地域と、そうでない地域や途中で切り上げた地域について流行の度合いを調査・検証することが必要ではないかと考えています。

政府は3月20日、一斉休校要請を新学期から解除する方針を決めました。ただ、家庭内で子どもから高齢者への感染リスクが全国的に大きく低下したと考えられる科学的根拠は、今のところありません。学校再開後、高齢者と同居している場合にはこれまで以上に家庭内での感染に対する注意が必要でしょう。

封じ込め対策は総感染数を減らすのか

政府の打ち出している封じ込め対策によって、国内の総感染者数を減らすことができるのでしょうか。

未来のことを予測することは簡単ではありません。政府が2月25日に出した新型コロナウイルス感染症対策の基本方針でも記載されているように「短時間での感染者数の増加を避ける」ことが重要です。なぜかというと、患者数の急激な増加がなければ「患者数は医療機関の対応能力の範囲内になり、最終的に死亡者数を最小限に食い止めることができる」可能性が高まるからです。

現在、患者1人が何人に感染させるかを表す「基本再生産数」のパターンや患者発生の時間軸をさまざまに設定したシミュレーションによる検討が行われています。その結果は、今回の基本方針により総感染者数が減少するという結果もあればそうでもないというものもあるようです。ただ、いずれにしても「時間を稼ぐことができれば、有効な治療法が開発される、ワクチンが開発されるまで医療が持ちこたえられるというメリットがある」ことは忘れてはいけません。

過去の感染症から学ぶ流行の「波」

世界中に大きな感染を起こしたウイルスとしては約100年前の「スペイン風邪(H1N1型インフルエンザ)」が知られています。世界中で2000万~4000万人が死亡したとされるこのスペイン風邪は、日本では2波の流行がありました。第1波は1918年8月下旬ごろから始まり11月には全国で患者数、死亡者数ともピークに達しました。そして翌1919年10月ごろから2度目の流行があり、20年1月が流行のピークとなったのです。

また、今回と似たような状態は2009年の「新型インフルエンザ(H1N1)」流行の際にもありました。ワクチンがない状況で、基本再生産数が1よりも大きい場合(2009年新型インフルエンザの基本再生産数は1.4~3.5と推定)には、人口全体に感染が徐々に広がっていきます。そのため、1度感染の山がおさまったようにみえても、再度感染が増え始める可能性があるでしょう。

新型コロナウイルスの感染は、アジアからヨーロッパ・中東、そして北アメリカに広がっています。外国では国会議員や閣僚、首相夫人や有名な俳優も感染しています。どこでも誰でも感染する可能性がある、と考えるのが自然です。現在南アメリカやアフリカでの感染の報告が出始めたところです。これらの地域の状況・医療体制から考えると、急激な増加が起きる可能性が高いと考えられます。一方、各国の感染のスピードを抑える対策が奏功すれば、必然的に対策の期間は長くなります。

気が緩めば再流行も

街中

3月20日の政府対策本部の会合では、大規模イベントの自粛について「主催者がリスクを判断し、引き続き感染拡大の防止に留意してください」とされました。ただ、移動の抑制・集会の自粛・休校も永遠には続けられません。どこかで気が緩むと、再度の流行が起こる可能性はかなり高いでしょう。

東京オリンピックの延期が決まりました。仮に今夏に行っていれば、選手村や会場は「人が集まる密集場所ができる・狭い密閉空間である・応援や会話による密接場面がある」ことから考えると、もっともリスクのある状況を進んで作ることになっていたでしょう。再流行が日本から起これば、国際的な批判は避けられないところでした。

新型コロナが“脅威”でなくなる条件は

過去の例から考えると、今回のような感染症が脅威でなくなるのは、「ワクチンが開発され多数の人々に行き渡る」または「多くの人が感染・回復し、集団免疫(特定の集団の構成員の多くが病原体に対する免疫を獲得し、集団全体として病気にかかりにくくなること)を獲得した」ときです。残念ながらいずれも年単位の時間が必要でしょう。最初の問いに戻れば、まだ“出口”よりも“入り口”に近い場所にいると考えた方がいいでしょう。我々はかなり難しい状況にあると思わざるを得ません。

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センターでは救急の基盤をつくり、国際医療福祉大学医学部救急医学講座教授に着任。後進の育成にも力を注ぐ。