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新型コロナ第7波―自分がかかっても慌てない「自宅療養の備えと心得」を知る

公開日

2022年07月27日

更新日

2022年07月27日

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2022年07月27日

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2022年07月27日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症(以下「新型コロナ」)の第7波が国内で猛威を振るっています。一方で、ロシアとウクライナの戦争、原油や液化天然ガスの供給不安、円安など景気への悪影響因子がとても多くあるため、「社会活動を制限する」という選択肢にはなかなかならないのでしょう。感染者の急増で、医療機関の逼迫(ひっぱく)が懸念されます。これまでどおりの予防策を徹底するとともに、自分がいつ感染しても対処できるよう、事前の準備をしておくことも大切です。今、そろえておくべきものと心得について解説します。

基本的な予防法の徹底、感染に備えた準備を

第7波では、新型コロナウイルスがオミクロン株の「BA.5系統」に急速に置き換わっています。BA.5系統は免疫逃避(感染やワクチンによって獲得した免疫がはたらきにくくなること)の性質が強まっているとされ、ワクチンを接種した人やこれまでに新型コロナに感染した経験がある人も感染する可能性があるようです。

一方で、感染拡大が始まってから2年半の経験で予防方法や感染したときの対処法についても学んできました。屋内でのマスク着用や手洗いなど、基本的な予防法をあらためて徹底してください。

患者数が急増すると、発熱外来などにかかりにくい状況も懸念されます。そんなときに慌てずに済むよう、以下のような準備をしておきましょう。

解熱剤を買っておく

コロナウイルス感染の発熱に対しては、アセトアミノフェンという解熱剤を処方する医療機関が主流かと思います。1回あたりの容量は体重1kgあたり10mgを目安にするとよいです。

・50kgの方なら500mg
・60kgの方なら600mg

――となります。イブプロフェンやロキソプロフェンなどのNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)を使用することも問題ありません。新型コロナの感染拡大が始まった当初は、NSAIDs使用に懸念が表明されたこともありますが、現在は科学的な根拠がないという見解が主流です。

抗原検査キットを用意しておく

私も先日家族のために薬局で抗原検査キットを購入しました。過去に子どもが発熱した際、熱でぐったりした子どもを自宅から病院に連れていくにあたり、「自宅に抗原検査キットがあれば大変円滑だろう」と強く思ったことがあります。コロナ感染の疑いがあると受診が難しいことに加え、仮に感染していた場合には自分が濃厚接触者になってしまうため、翌日の勤務にも影響が及んでしまうからです。感染の有無が自宅で分かれば、それらの問題にいち早く対処できます。

現在、抗原検査キットはドラッグストアなどで購入できるようになっています。発熱者に無料で配布している自治体もあるかと思うのですが、発熱でつらい中、ウェブサイトを検索して手続きをするよりは、転ばぬ先の杖を用意しておくほうが安心なのではないかと思います。各ご家庭で購入を検討してみてはいかがでしょうか。

お住まいの地域の支援策を知っておく

たとえば千葉県であれば、県の専用サイトから申請することによって2日程度で抗原検査キットが届くとのことです。つらくて病院に行けないときに検査キットが届くのであれば、とてもありがたいですよね。前述のように突然調子が悪くなってから検討するよりは、事前にある程度ウェブサイトを読んでおき、申し込み方法などを確認しておいたほうがよいかと思います。また、次に記載するような支援策が用意されている自治体もありますので、合わせて確認しておくといいでしょう。

結果を示す抗原検査キット

食料・飲料の備蓄

現在、医療の現場は災害並みの状態です。健康であればこの災害はまったく感じないでしょうが、一度発熱して医療機関に受診をしようとすると、驚くほどひどい状態であることに気付くかと思います。特に夜間や休日など時間外は開いている医療機関が少ないため、発熱や体調不良で苦しんでいる患者さんが数少ない医療機関に殺到しています。この状況から考えると65歳未満で重症化リスクのない方は自宅で療養となる可能性が高いでしょう。

自宅で過ごすにあたって問題になるのが、薬と食料・飲料です。薬は前述のように、下熱剤を買っておきましょう。食料・飲料については、感染した患者さんの自宅療養のために配達してくれる自治体も複数あります。ただ、感染者数が増えれば登録や配達がスムーズにできない可能性があり、その場合には届くまでに数日かかることも考えられます。家族の1人が発症すると、濃厚接触者としてほかの家族の外出が制限される可能性もあります。そのような事態にも耐えられるよう、ご家族全員の7日分の災害用食料備蓄を今一度ご検討ください(今は物資がしばらく届かないところもあるようです)。

写真:PIXTA

どんなときが危険な状態か

感染者に対して、都道府県や保健所などから酸素飽和度モニター(パルスオキシメータ)が貸与されることがあります。ただ、現在はかなり感染者数が増えているため、重症化リスクのない人には配布されない可能性もあります。今後も第8波、第9波の到来が考えられる今、自宅に1つパルスオキシメータを購入しておいてはいかがでしょうか。私も2020年に2台購入しています。

自宅療養中に以下のような症状があれば、医療機関の受診は救急車を考えましょう。

  • 顔色が悪く青ざめている
  • いつもと違う、様子がおかしい
  • 呼吸数が多くなった:1分に20回を超える
  • 横になれない、座らないと息ができない
  • 肩で息をしている
  • ゼーゼーしている
  • パルスオキシメータの数値(SpO2)90以下

備えがあれば心細さ軽減も

感染により症状が出ると、しばらくの間は発熱や咽頭痛などで大変な状況になると思います。普段なら心強い医療機関も、今はかなり追い詰められています。自宅療養に向けて前述のように薬、検査キット、食料・飲料などを備えていただけると心細さが減るかと思います。本当に必要な人が必要な医療を受けられる状況を維持するためには、多くの皆さんの協力が必要です。
 

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センターでは救急の基盤をつくり、国際医療福祉大学医学部救急医学講座教授に着任。後進の育成にも力を注ぐ。