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新型コロナ第2波は来る! 備えとして注意すべきことは

公開日

2020年05月27日

更新日

2020年05月27日

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2020年05月27日

掲載しました。
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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

この新型コロナウイルス感染症に関する記事の最終更新は2020年05月27日です。最新の情報については、厚生労働省などのホームページをご参照ください。

新型コロナウイルス感染症は、東京でも1日の患者確認数が徐々に減り、5月25日に緊急事態宣言が約1カ月半ぶりに全面解除されました。緊急事態宣言以降の我々の試みは、確実に実を結んだと言えるでしょう。ただ、1918年のスペイン風邪など過去の「新型ウイルス感染症」の事例をみても、中国の武漢やシンガポールでの再流行の兆しをみても、日本に第2波、第3波が起こることはある程度予想されます。そんな中、我々はどうやって社会活動の再開に取り組んでいくべきなのかを考えたいと思います。

収束後も基本は「ソーシャルディスタンス」の確保

緊急事態宣言が解除されても、日本から新型コロナウイルスが一掃されたわけではありません。これまでと同様に、学校であっても、職場であっても、外出先であっても、互いの距離(1.5~2m)を取って過ごすことが必須です。とくに近距離でのおしゃべり・食事にはエアロゾル(気体中を浮遊する微小な粒子)拡散の危険性があるため、注意していく必要があります。

いわゆる「3密」の回避は今後も必要ですね。必然的に、学校や職場は“コロナ以前”のような密集環境から、現在の状況にふさわしい「距離を確保できる空間」に変えることが求められるでしょう。場合によっては年の単位で続くかもしれないこの状況で、どうやって学校や企業の活動を継続していくかを国民全員で考えていくことが必要です。現実的には、現在行われているテレワークやテレカンファレンスと登校や出社の併用をしていくことになるのではないでしょうか。

マスク、手洗い習慣の継続を

コロナウイルスのサイズは100~120nmぐらいです。マスクの繊維のすき間と比べると極めて小さいのですが、感染で問題となる「しぶき(飛沫<ひまつ>)」は直径5μm(=5000nm)でウイルスそのものよりも大きく、繊維のすき間と同レベルになります。呼吸器感染症の予防に対してN95マスクとサージカルマスクのどちらが優れているか、いくつかの研究結果を統合して検討した結果が出ています。「N95の方が優位ですが、結論は出ない」というのが現在の結論です。なので、サージカルマスクがあればまずはそちらをお着けください。布マスクについては、着用によっての効果は十分に証明されていません。ただ、距離をとる・手洗いをするとともにマスクを着用している主にアジア諸国での第1波抑制を見る限り、着用の有用性が考えられます。布マスクの着用は米国のCDCでも推奨されています(もちろん科学的にはサージカルマスクの方が良いのですが)。

せっけんを使った手洗いやアルコールによる手指の消毒も大事です。新型コロナウイルスの感染経路としては前述の飛沫のほかに、「接触感染」の危険性が高いと考えられています。これは、ものの表面に付着したウイルスが手指につき、その手で顔などの粘膜に触れることで感染するというものです。表面の素材や状態にもよりますが、ウイルスはものの表面に数時間から数日残るという研究結果もありますので、何かを触ったら手洗いをすることが大事です。特に顔や口の粘膜に触る前には手洗いをしましょう。ウイルスが多いものとしては、パソコンのマウス、携帯電話、トイレなどがわかっています。このようなものを触った後に飲食をする際にはしっかりと20秒の手洗いをすることが必要です。

手洗いの様子
写真:Pixta

医療の現場で進歩したものは?

この数カ月でもっとも進歩があったのは「疫学情報」でしょう。発症直前のウイルス排出量が高いこと▽高齢者の死亡率が高いこと▽高齢者施設の死亡率が高いこと▽発熱、せきに加えて嗅覚障害、血栓症などの症状があること――などが明らかになっています。

検査

医療現場では、新型コロナウイルス検査のスタンダードはPCRです。基本的に検査は「症状のある人」「陽性の人に接触した人」などから「医師が疑った場合」に行われてきました。この基本方針を変える必要はありません。費用対効果を考えると「無症状の人を含めてすべてに」は、現在の日本の選択肢ではないでしょう。

一方で、医療機関で「医師が疑った」にもかかわらず検査ができないことがあったこれまでの体制は、改善すべきかと思います。3月以降、保健所への相談を介さずに都道府県などから委託を受けた医療機関、民間検査機関へPCR検査を依頼することが可能となりました。これに従い、我々の施設では疑った際に検査ができる体制を整えつつありますし、同様に検査体制を整える施設は今後増えていくものと考えられます。

新型コロナウイルスが国内で流行し始めた当初、PCRは検査だけで3時間、結果が出るまで半日から1日ほどかかっていました。その後、時間を短縮できる検査キットも次々と開発されています。また、1時間を切る短時間で結果が出るLamp法という、PCRとは異なる原理で遺伝子を調べる検査も使用可能になっています。さらに、インフルエンザのように抗原を使った検査も出てきています。それぞれの検査には長所、短所や特徴があり、一般の方が市販の検査キットなどを使うのはやめたほうがいいと考えます。

薬剤

現段階で「シクレソニド=気管支ぜんそく薬」「ファビピラビル=抗インフルエンザウイルス薬」「レムデシビル=抗エボラウイルス薬」「ヒドロキシクロロキン=抗マラリア薬」「イベルメクチン=経口駆虫薬」――など複数の薬剤の治験が進み、うち一部の薬剤については、効果を期待させるものがあります。しかし、ほとんどの治験は、通常の薬剤の効果を調べる過程で行われる厳密な方法(「二重盲検比較試験」と呼ばれます)とは異なるうえ、実施数も非常に限られています。したがって、本当に効果がはっきりした薬剤はないのが現状です。注意深く今後の結果を見ていく必要があります。

ワクチン

米国のバイオ医薬企業のモデルナ社は、新開発のワクチンの第1段階の治験で、対象の8人全員から、新型コロナ感染症から回復した患者と同水準の「中和抗体」が確認されたという結果を発表しました。深刻な副作用はなかったとのことです。7月には数千人を対象とした最終段階の治験も行われる予定です。このまま順調に開発が進むという確約はありませんが、今後の結果を注視したいと思います。

第2波のきっかけとなるのは?

1度は感染拡大が収まった武漢や韓国で5月に入ってクラスター(集団感染)が発生していることからも推測できるように、日本も「収束しつつ」あるのが現状で、ウイルスがなくなったわけではありません。ですので、マスク・手洗いなどが十分でない人たちの「密な」状況が続けば、また感染が出てくる恐れは十分にあります。前述の「距離をとる」「テレカンファレンス・テレワークなどを活用する」ことが必要になってきます。政府の専門家会議の提言を受けて厚生労働省が提唱した「新しい生活様式」に我々も慣れていく必要があります。

テレワークの様子
写真:Pixta


海外に目を向けると、収束している国もある一方で、ブラジルやアフリカ諸国など現在感染が広がっている国々もあります。世界が貿易・ビジネスなどで相互に依存する関係性の中、完全に国境を閉ざすことはできません。そうなると、渡航を再開してビジネスをしていく中で、再度海外から持ち込まれる可能性もあるでしょう。

第2波が来るとしたらいつでしょうか。過去のスペイン風邪では第1波が収束傾向になってから3~4カ月で感染の増加がありました。そして約1年後に再度、第1波に近い数まで到達する波がありました。

これらから考えると、夏から秋には第2波がくる可能性があります。その後も年の単位でさらなる波が来る可能性があることも想定し、常に距離を取り、マスクをつけ、手洗いをする――という生活様式をこれからも続けていく必要があるでしょう。

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国際医療福祉大学救急医学 主任教授、国際医療福祉大学成田病院 救急科部長

志賀 隆 先生

学生時代より総合診療・救急を志し、米国メイヨー・クリニックでの救急研修を経てハーバード大学マサチューセッツ総合病院で指導医を務めた救急医療のスペシャリスト。東京ベイ・浦安市川医療センターでは救急の基盤をつくり、国際医療福祉大学医学部救急医学講座教授に着任。後進の育成にも力を注ぐ。