インタビュー

核医学検査とは?その6―甲状腺と副腎の核医学検査

核医学検査とは?その6―甲状腺と副腎の核医学検査

日本核医学会

日本核医学技術学会

日本アイソトープ協会

この記事の最終更新は2015年08月15日です。

今回の記事では、甲状腺と副腎の核医学検査について解説します。
甲状腺に現れる病気には甲状腺機能亢進症・異所性甲状腺・甲状腺機能低下症、副腎に現れる病気には副腎褐色細胞腫などがありますが、核医学検査ではいち早くこれらの疾患を突き止めることが可能になってきます。それぞれどのような方法で検査を行うのか・検査で何がわかるのかを知っておきましょう。

本記事は、日本核医学会日本核医学技術学会日本アイソトープ協会の3学会にご監修いただいております。

甲状腺の核医学検査では、甲状腺の機能が正常かどうか・がんができていないかどうかを調べることができます。また、放射性ヨウ素を用いた核医学検査では、ホルモンを作る機能が過度に働いていないか・不足していないかを調べることができます。この性質を利用して、甲状腺の核医学検査は、甲状腺機能亢進症甲状腺機能低下症甲状腺腫瘍の診断などに活用されています。

甲状腺の働きが活発すぎる場合(甲状腺機能亢進症)は、胸がどきどきしたり、疲れやすくなったりする症状が出ることがあります。検査結果に基づいて甲状腺の働きが過剰とわかった場合には、ヨウ素-131を用いた治療があります。また、甲状腺に腫瘍ができた場合、それが良性か悪性かも核医学検査で知ることができます。

甲状腺はくびの前方、喉仏のすぐ下にあります。蝶が羽を広げたような形で、肺につながる空気の通り道・気管を抱き込むようにくっついています。
甲状腺は、体調を維持する上で重要な役割を果たす大切なホルモン「甲状腺ホルモン」を作っています。甲状腺がホルモンを作り出す際、海藻類などの食物に多く含まれているヨウ素(ヨード)が必要になります。

しかし、放射性ヨードを使った検査の場合は、食べ物や薬の影響を除くために、1週間程度のヨード制限が必要になります。そのほかにも、うがい薬、イソジン消毒液などの使用にも気をつける必要があります。さらに、CTなどのヨード造影剤も禁止です。撮影は薬剤投与後、数回に分けて行われます。

副腎は小さな三角形をした形の臓器で、左右の腎臓の上の「後腹膜腔」とよばれるところにあります。左右の副腎の大きさはちょうど餃子くらいの大きさです。副腎は外側にある「皮質」と呼ばれる部分と、内側の「髄質」と呼ばれる部分からホルモンを分泌しています。

副腎に異常が生じると、血圧が非常に高くなることがあります。核医学検査では、異常の原因を探るため副腎皮質の形態的変化・機能評価を行ったり、原発性アルドステロン症などの診断を行ったりすることができます。

副腎の核医学検査では、静脈注射2日前~7日後まで、毎日ヨウ化カリウムまたはルゴール液を内服します。検査当日、ホルモンの原料になる物質にアイソトープをつけた放射性医薬品を30秒以上かけてゆっくりと静脈注射します。注射後すぐに撮影はおこなわず、注射後24時間程度(検査の種類によっては注射10日目)経ってから撮影を行います。ちなみに撮像の前には、必ず排尿を済ませておきます。
こうして撮影した画像から左右の副腎の働きを把握することができるため、副腎にできているかもしれない腫瘍を見つけることもできます。その結果、患者にあった治療方法を決めていくことができます。

※本記事は、日本核医学会、日本核医学技術学会、日本アイソトープ協会による『なぜ核医学検査を受けるの?(pdf)』をもとにしています。

記事1:核医学検査とは?その1―放射性医薬品とは何か
記事2:核医学検査とは?その2―検査の手順と他の検査との違い
記事3:核医学検査とは?その3―骨の核医学検査でわかること
記事4:核医学検査とは?その4―心臓と脳の核医学検査
記事5:核医学検査とは?その5―肺と腎臓の核医学検査
記事6:核医学検査とは?その6―甲状腺と副腎の核医学検査