
前立腺肥大症の治療方法には、大きくわけて薬物療法と手術療法があります。これらを選択するために重要な重症度は、どのように決定されるのでしょうか。また、薬物療法とはどのようなものなのでしょうか? 衣笠病院の吉田実先生ご監修のもと、横須賀共済病院 泌尿器科の田部井正先生に引き続きお話をうかがいました。
前立腺肥大症の治療には、大きくわけて薬物療法と手術療法があります。
通常はまず薬物療法を行います。薬物療法を行ったにもかかわらず効果が不充分で後述の重症例にあてはまってしまうケースや尿路感染を繰り返す、膀胱結石を合併する、腎機能が低下している、といった症例では外科的治療をおすすめしています。
前立腺肥大症の重症度は以下の「前立腺肥大症領域別重症度判定基準」と「前立腺肥大症全般重症度判定基準」によって決定されます。
「前立腺肥大症領域別重症度判定基準」は、①症状 ②QOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質) ③機能 ④形態 の4つの領域に関して、①国際前立腺スコア(IPSS) ②QOLスコアという自覚症状の強さを表す点数 ③尿流・残尿測定(排尿機能) ④前立腺体積のそれぞれに軽症・中等症・重症が定義されて、その結果により全般重症度が決定されます。
たとえば、①IPSSが10点、②QOLスコアが2点、③最大尿流量(MFR)が10ml/秒、残尿40mL、④前立腺体積60mLの人がいたとします。この人の領域別重症度はIPSS中等症、QOL中等症、排尿機能は中等症、前立腺体積は重症ということになります。領域別には中等症3個、重症1個となり全般重症度は中等症に該当することになります。
領域症状QOL機能形態
指標IPSSQOLスコア最大尿流量/残尿量前立腺体積
軽症0~70, 1≧15mL/秒かつ 残尿<50mL<20mL
中等症8~192~4≧ 5mL/秒 かつ 残尿<100mL<50mL
重症20~355, 6<5mL/秒または残尿≧100mL≧50mL
(領域別の重症度判定項目数を示す)
全般重症度軽症中等症重症
軽症4項目0項目0項目
3項目1項目0項目
中等症不問2項目以上0項目
不問不問1項目
重症不問不問2項目以上
薬物療法では交感神経α1受容体拮抗薬(タムスロシン、ナフトピジル、シロドシン等)や5α還元酵素阻害薬(デュタステリド)が広く用いられています。最近ではPDE5(ホスホジエステラーゼ5)阻害薬(タダラフィル)が注目されています。
交感神経α1受容体は前立腺や膀胱頸部の筋肉の緊張に作用する受容体で、α1受容体拮抗薬はその働きを抑えることで前立腺や膀胱頸部の筋肉の緊張をゆるめて尿の通り道を拡げ、尿を出しやすくします。1993年にα1受容体拮抗薬のタムスロシンが登場してから前立腺肥大症の手術件数が劇的に減ったと言われているほど優れた薬剤です。ホルモン製剤と比べると即効性があり、性腺機能低下が起こらないことから、現在ではほとんどの場合まず最初に使用される薬です。
副作用は、100人に1~2人程度の割合で立ちくらみが出ることがあります。また新しい薬剤のシロドシンでは逆行性射精の副作用が見られます(その他のα1拮抗薬でもまれに見られることがあります)。
5α還元酵素阻害薬は前立腺を縮小させる効果があります。通常前立腺体積が30mLを超すような前立腺が大きな症例に使用します。薬を毎日飲み続けることで前立腺が徐々に小さくなっていくため、効果が出るまでに数か月と時間がかかります。
副作用は、まれに勃起不全や肝機能障害が見られます。
PDE5阻害薬は最も新しい薬で、もともと勃起障害の治療薬として使用されていましたが、前立腺の血流を改善させ排尿状態を改善させる効果があります。α1受容体拮抗薬と並ぶ効果が期待されています。狭心症のある方などで亜硝酸剤を服用中の方は使用できません。
その他にも男性ホルモンの働きを抑える抗アンドロゲン薬や生薬、漢方薬などを使うことがあります。
なお、手術療法については次の記事で詳しくご説明します。
記事1:前立腺肥大症とは―50歳を過ぎての排尿トラブルは前立腺肥大症かも?
記事2:前立腺肥大症の治療方法とは 薬物療法にはどのような種類がある?
記事3:前立腺肥大の手術 様々な手術はどのように行うか?
周辺で前立腺肥大症の実績がある医師
医療法人インテグレス 新橋消化器内科・泌尿器科クリニック 理事長
特集コンテンツ
胃・大腸カメラを“眠ったまま”で、消化器と泌尿器の症状を幅広く診療
新橋消化器内科・泌尿器科クリニック(東京都港区新橋1丁目11-5 コルティーレ銀座ビル 7F 8F:JR・東京メトロ・都営線・ゆりかもめ「新橋」駅 徒歩1分)の病院ページ。
泌尿器科、消化器内科、内科
東京都港区新橋1丁目11-5 コルティーレ銀座ビル 7F 8F
JR東海道本線(東京~熱海)・JR山手線・JR京浜東北線・JR横須賀線・東京メトロ銀座線・都営浅草線・ゆりかもめ「新橋駅」 徒歩1分
日本大学医学部 泌尿器科学系 泌尿器科学分野 主任教授、日本大学医学部附属板橋病院 病院長
血液内科、腎臓・内分泌内科、糖尿病・代謝内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器・肝臓内科、腫瘍内科、脳神経内科、心療内科、小児科・新生児内科、精神科、皮膚科、消化器外科、心臓外科、血管外科、小児外科、呼吸器外科、乳腺・内分泌外科、形成外科、脳神経外科、整形外科、リハビリテーション科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、眼科、放射線診断科、放射線治療科、疼痛緩和外科、麻酔科、歯科口腔外科、病理診断科、臨床検査科、救急科
東京都板橋区大谷口上町30-1
東武東上線「中板橋」バス・タクシー乗り場なし 徒歩20分、東京メトロ有楽町線「千川」国際興業バス 日大病院行 バス10分
国立国際医療研究センター病院 病院長/泌尿器科 診療科長/第一泌尿器科 医長
内科、血液内科、リウマチ科、外科、心療内科、精神科、神経内科、脳神経外科、呼吸器内科、呼吸器外科、腎臓内科、心臓血管外科、小児科、小児外科、整形外科、形成外科、皮膚科、泌尿器科、産婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、歯科、歯科口腔外科、麻酔科、乳腺外科、乳腺腫瘍内科、膠原病科
東京都新宿区戸山1丁目21-1
都営大江戸線「若松河田」河田口 徒歩5分、東京メトロ東西線「早稲田」2番出口 徒歩15分
北里大学北里研究所病院 泌尿器科 部長(北里大学医学部 准教授)
内科、リウマチ科、外科、精神科、呼吸器外科、消化器外科、腎臓内科、整形外科、形成外科、美容外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、放射線科、麻酔科、乳腺外科、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、内分泌内科、代謝内科、膠原病内科、脳神経内科、血管外科、病理診断科
東京都港区白金5丁目9-1
東京メトロ日比谷線「広尾」1・2番出口 徒歩10分、東京メトロ南北線「白金高輪」3番出口 徒歩13分
九段坂病院 泌尿器科 部長
内科、外科、心療内科、整形外科、皮膚科、泌尿器科、婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、リハビリテーション科、麻酔科
東京都千代田区九段南1丁目6-12
東京メトロ東西線「九段下」4番出口 東京メトロ半蔵門線、都営地下鉄新宿線も利用可能 徒歩3分
関連の医療相談が10件あります
前立腺がんの検診結果
2021年1月に人間ドックで前立腺がんの検査(血液)をしたら数値が高い(確かPSA6.000くらい)とのことだったので、同年4月に近所の泌尿器科で再検査をした。結果は数値は下がっていたもの、まだ基準値よりやや高めであった(PSA4.748)。数値が下がっているということはがんでない可能性が高いと思いますが検診はした方が良いでしょうか?またその検診の何か月に何回程度といったものはありますか?
尿が出にく亀頭部と皮が赤く痛痒い
最近尿が踏んばらないと出が悪く出終わった後 しまうと尿がチョロチョロとパンツの中にたれるせいなのか?亀頭部と皮が赤くなり痛痒いのですが、何科にかかったら良いですか? 泌尿器科?皮膚科?ですか?
射精について
半年ほど前から、性欲が減退し精子もドロっとして少ししか出なくなりました。 現在、うつ病にかかっており薬を飲んでるのですが医師に相談すると、性欲が減退する効果が出る薬は処方してないとのことでした。 どういった病気で、改善するのでしょうか?
尿漏れについて
最近、おしっこを限界まで我慢すると少しでてしまうよになってしまいました。若い頃耐えられたのに恥ずかしく誰にも相談できません。早めにトイレに行くように心がけていますが、仕事が忙しい時や大事な会議、商談中など信用を落としかねない時に困っています。何か良い対策はありますか?
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「前立腺肥大症」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。