褥瘡は単なる皮膚疾患というだけではなく、褥瘡ができることによって二次的な合併症が生じることがあります。また合併症によってもともと寝たきりになってしまう原因となった病気(原疾患)の治療の妨げになってしまうこともあります。今回は、褥瘡の合併症やそうならないための予防策について、引き続き大阪赤十字病院皮膚科部長の立花隆夫先生にお話をお伺いしました。
褥瘡は放置しておくと皮膚の炎症が悪化し、水ぶくれや、膿が溜まった膿瘍を形成することもあります。さらに進行すると褥瘡から体液が漏れ出ることで、体に必要な水やタンパク質などの栄養素が失われ低蛋白血症を起こしてしまうこともあります。
また、傷口から細菌感染症を起こすこともあります。骨まで達するような深い褥瘡ができてしまうと、骨に感染して骨髄炎を起こす危険もあります。さらに菌が血液内に侵入してしまうと、敗血症といって血液を介して全身に菌が回ってしまい、最悪の場合死亡するケースもあります。
褥瘡を起こす患者さんは高齢者や長期入院の方が多く、体力も免疫力も低いため、上記のような皮膚からの感染症のリスクは高い状態にあります。そのため、そもそも合併症が起こりやすくなっているため、褥瘡の早期発見は合併症を予防するという観点でも非常に重要です。
褥瘡は皮膚が傷つきやすく薄くなっていたり、柔らかい部位にできやすくなります。そのため尿や便失禁によって陰部や肛門周辺の皮膚がふやけることで褥瘡が発生しやすくなることがあります。尿や便が付いた状態で長時間放置すると、皮膚への刺激が加わりやすくなるためです。
排泄物から皮膚を保護するために、こまめに排泄管理(オムツの交換)をすることが大切です。また、皮膚をきれいに拭いた後に、肛門・外陰部からその周辺の皮膚に保湿クリームを塗っておくことで、皮膚の保護につながります。お尻を拭くときには、強い刺激を与えないよう、ゴシゴシ擦らずにやさしく丁寧に洗うようにしましょう。石鹸を使う場合にも直接石鹸をつけるのではなく、泡立てた石鹸でなでるようにし、十分に洗い流すようにしましょう。
星ヶ丘医療センター 皮膚科 部長
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