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インタビュー

大人のスポーツ障害について

大人のスポーツ障害について
副島 修 先生

福岡山王病院 整形外科部長、国際医療福祉大学教授、福岡大学整形外科臨床教授

副島 修 先生

骨格が出来上がっている大人の場合、スポーツによって加わる負荷は子ども以上に大きく、致命傷となることも少なくありません。福岡山王病院整形外科部長で、地元球団福岡ソフトバンクホークスのチームドクターでもある副島修先生に、大人のスポーツ障害についてお話を伺いました。

野球など、投げる競技で多い障害のひとつが「肘内側側副(ひじないそくそくふく)靱帯損傷」です。野球のピッチャーに多くみられる疾患で、靱帯が切れてしまいます。成長段階で骨が弱い子どもに多い野球肘の場合は骨が剥がれるわけですが、大人の場合はすでに骨がしっかりしているため、強い力が加わることで靱帯そのものが切れてしまうのです。

野球肘の詳細については記事2『野球肘とは? 子どもに起こるスポーツ障害』を参照)

靱帯は骨と骨を連結する役割をしているため、切れると骨がぐらぐらしたり、痛みが起きたりします。ぐらつきが強くなると、神経が常に引っ張られる状態となるため、神経の障害も出てきます。そのため症状として肘の痛みのほか、手がしびれたり、握力が落ちたりします。また、進行すると関節そのものが変形するため、動きの鈍化、肘の伸びが悪くなる、肘が曲がらなくなるといった障害も出てきます。なかには関節ネズミといって、軟骨や骨のかけらである遊離体が肘の中でひっかかってしまい、肘が動かなくなることもあります。

肘内側側副靱帯損傷が起こる可能性のある競技種目としては野球以外にも、槍投げやテニスのサーブなどが挙げられます。この障害は選手にとっては致命傷となる障害で、特にプロ選手だと選手生命を絶たれる危機にもなりかねません。

基本的には過剰な運動(オーバーユース)が原因で起こるため、 特に野球の場合であれば投球の制限をすること、負荷をかけないようにすることが大切です。このあたりについてはアメリカでは非常に厳しく制限されていて、The American Sports Medicine Instituteでリトルリーグの投球制限ルールを示しています。このルールを守らなければ監督やコーチが処罰の対象となるため、アメリカでは野球肘の患者さんがほとんどいません。

日本はその点においてはまだ遅れていますが、日本臨床スポーツ医学会学術委員会は2005年に、小中高生の投球制限などを制限する「青少年の野球障害に対する提言」を示しています。これらの提言に沿って競技を行ってほしいと思います。

「青少年の野球障害に対する提言」

 

練習

全力投球数(試合を含む)

 

日数   時間

1日   1週

小学生

週3日  2時間以内

50球  200球以内

中学生

週1日以上の休養日

70球  350球以内

高校生

週1日以上の休養日

100球  500球以内

※1日2試合の登板は禁止

※毎日の投球数を必ず記録すること

また、肘を壊す選手というのは体が硬かったり、投球のフォームがおかしかったりすることが少なくありません。再発させないためには、このような部分についても一緒に矯正することが必要となります。

肘の痛みが強くなり、投球などの運動が困難になったとき、主に行われる治療が「トミー・ジョン手術」です。トミー・ジョン手術とは、肘の靱帯断裂に対して行われている手術で、1974年にアメリカの整形外科医によって考案されました。当時メジャーリーガーだったトミー・ジョン選手が初めて受けたことからこの手術名がつけられた経緯を持ちます。ケガによって復帰が危ぶまれていたトミー・ジョン選手がこの手術によって再びプロとして復帰したことはスポーツ界ではよく知られており、その後多くの野球選手がトミー・ジョン手術を受けています。

肘は尺骨(しゃっこつ)橈骨(とうこつ)および上腕骨が靱帯によって連結しています。尺骨側の靱帯を内側側副靱帯、橈骨側を外側側副靱帯とよび、これらの靱帯は関節が横方向にぶれないように保っています。

傷害の起きる部位

肘内側側副靭帯損傷によって損傷した靱帯の代わりとして、他の部位にある正常な腱の一部を肘に移植する手術が靱帯再建術です。この手術を受けるのはプロレベルの選手が多く、重症例がほとんどで、復帰するまでには1年程度の時間が必要となります。

靱帯再建術はプロでなくても行うことがありますが、特に子どもの場合は慎重に判断する必要があると考えます。手術を希望されるのは多くの場合、若い時期から高いレベルで競技をしている子どもたち本人やその親御さんたちです。肘の靱帯損傷は、日常的には痛みもなく、生活には困っていない方も多くいます。ただし投球のときにだけ痛みが生じます。日常的に肘を使うだけで肘が壊れてくるといった場合には、野球の復帰を前提としない場合でも手術を勧めますが、そうでなければ、やはり慎重にあるべきだと考えます。

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  • 福岡山王病院 整形外科部長、国際医療福祉大学 教授

    副島 修 先生

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