インタビュー

舟状骨骨折など手指の骨折を伴うスポーツのケガについて

舟状骨骨折など手指の骨折を伴うスポーツのケガについて
副島 修 先生

福岡山王病院 整形外科部長、福岡国際医療福祉大学教授 教授

副島 修 先生

この記事の最終更新は2016年03月08日です。

スポーツにケガはつきものですが、突き指骨折などは経験したことがあるという方も少なくないと思います。舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折を中心に、スポーツで起こる手や指の骨折について、福岡山王病院 整形外科部長の副島修先生にお話を伺いました。

スポーツのケガの中でも代表的な骨折のひとつが舟状骨(しゅうじょうこつ)骨折です。舟状骨とは、手の親指側にある骨で、船底の湾曲に似た形からその名前がつけられました。カシューナッツのような形とも形容されます。

舟状骨骨折はサッカーなどの競技者に多くみられるもので、プレー中に後ろ向きに転んで手をついたときに起こります。多くの場合、骨の中心部がひび割れて骨折を起こします。

舟状骨骨折の大きな問題は、診断が非常に難しいことです。転んで痛みがあるということで整形外科を受診し、レントゲンを撮っても画像には何も写らないため、「異常なし」といわれて放置されている患者さんも少なくありません。しかし治療せずに放っておくと、骨折した箇所が偽関節(骨折した骨がつかずに関節のように動く状態)となって周りの骨が溶けたようになってしまいます。舟状骨は血流が悪いためもともと治りにくいという特徴のある骨なので、正しく診断して早期に治療をすることが重要です。

舟状骨骨折の症状は、受傷直後から手首の親指側に生じる痛みと腫れが主になりますが、前述したように、骨折をしても早期では診断がつかないことも少なくありません。そのため、レントゲンを撮る場合は、通常の正面や横から撮影するだけではなく、斜めや特殊な角度からも撮ることが必要となります。

また、腫れや痛みが軽いため骨折と判断できないような症状の場合でも、明らかに手をついてケガをしていたり、ピンポイントで親指側の痛みや圧痛を訴えていたりするようであれば、骨折と想定して治療を開始したほうがよいでしょう。

さらに重要なことは、確定診断がつかなくとも非常に怪しい場合であれば、患者さんは2~3週間後に再度受診をすることです。舟状骨骨折であれば、時間の経過とともにレントゲンにはっきりと写ってきます。単なる捻挫で済ませてしまうと再び病院を受診する機会も逃してしまいますから、症状が上記と合致していてしばらく経っても痛みや腫れが引かない場合はもう一度レントゲンを撮ってもらいましょう。

治療は、診断がつけばギプスによる固定を行います。ギプス固定は長期に及ぶことも多いので、最近では特殊なネジを使って固定することで治療期間を短縮できる方法も採り入れられています。

偽関節になってしまうと、骨の細胞が壊死(えし・細胞や組織が死ぬこと)してしまうため、骨を削って移植をしなければならなくなります。専門医でも非常に難しく大変な手術となるため、このような状態にならないように早期に発見して治療することが大切です。

専門医でも治療が難しい指の骨折が、PIP関節脱臼骨折です。指先から数えて2番目の関節(第2関節)をPIP関節と呼び、球技による突き指などによって生じた骨折をPIP関節脱臼骨折といいます。指には関節が3つありますが、そのなかでも第2関節であるPIP関節は痛みや可動域制限などの後遺症が一番残りやすく、非常に治療が難渋する骨折です。

PIP関節脱臼骨折は、骨折と同時に脱臼を伴っていることが多いため、治療としては整復や固定が行われます。具体的には、指の中に鋼線を入れて固定したり、つぶれて食い込んでいるような場合には、ゴムなどを使って引っ張る創外固定をつけたりします。

マレット変形は手指の第1関節(DIP関節)が突き指などによって、曲がったまま動かなくなる障害です。その形が木槌(マレット・mallet)に似ているため、マレット変形と呼ばれています。マレット変形には、指の付け根にある指を伸ばす腱(すじ)が切れて腱断裂を起こすタイプと、腱がついている骨の一部が折れ、骨折を伴うタイプのふたつがあります。

マレット変形はレントゲンなどを撮って診断したあと、一般的には保存療法としてバネ式固定用装具か、あるいはプラスチック製の固定用装具を装着して、2か月ほど固定すれば治ります。骨が大きい場合には手術で鋼線を入れて固定することもあります。

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