インタビュー

骨粗しょう症と骨折

骨粗しょう症と骨折
太田 博明 先生

藤田医科大学病院 国際医療センター 客員病院教授、川崎医科大学 産婦人科学2 特任教授/川崎医...

太田 博明 先生

この記事の最終更新は2015年11月24日です。

高齢の女性が寝たきりになる原因でもっとも多いのは転倒による骨折と関節疾患で、全体の30%近くにあたるといわれています。骨粗しょう症でも一番の問題は骨折ですが、からだの中でどの部分の骨が折れやすいかは、年齢によって変わってきます。また、骨折するところによって生活に及ぼす影響も異なります。山王メディカルセンター・女性医療センター長の太田博明先生に骨粗しょう症と骨折についてお話をうかがいました。

  • 50歳代〜:①前腕骨の手首部分である橈骨(とうこつ)や、脊椎の骨の主要部である椎体(ついたい)。
  • 65歳頃〜:①椎体、②前腕骨、③大腿骨(太ももの骨)、④上腕骨(肩からひじまでの骨)の順で折れやすくなる。
  • 75歳頃〜:①椎体、②大腿骨(太ももの骨)、③前腕骨、④上腕骨の順で折れやすくなる。

椎体骨折は62〜63歳頃から増え始め、70歳代になってくると前腕部の骨折よりも椎体骨折が上回るようになります。また、72〜73歳頃から大腿骨近位部骨折が前腕部を上回るようになり、75歳以上で急激に増加します。70歳代後半と80歳代前半を比較すると80歳代が約2倍、さらに80歳代前半と後半では約3倍というように、指数関数的に増えていきます。生涯における50歳以上の女性が、今後どれくらいの確率で骨折するかをあらわすライフタイム・リスク(lifetime risk)では、椎体骨折が37%、大腿骨近位部骨折が22%というデータがあります。つまり、3人に1人は背骨の骨折、5人に1人は脚のつけ根を骨折するという割合になります。

FRAX®は、患者さんの骨折リスクを評価するためにWHO(世界保健機関)が開発したツールです。自分でチェック項目を入力すれば将来の骨折リスクを算出できる簡便な質問票で、10年以内の大腿骨近位部骨折の発生リスクと10年以内の主な骨粗しょう症骨折(脊椎、前腕、股関節部あるいは肩部の臨床的な骨折)の発生リスクが出力されます。ウェブサイトから(https://www.shef.ac.uk/FRAX/)またはダウンロードで利用可能です。

脊椎の椎体が押しつぶされて骨折すると、背骨が変形して背中が丸く盛り上がった状態になります。これを円背(えんぱい)・亀背(きはい)といいます。背骨の変形によって以下のような症状が起こります。

頸肩腕症候群(くび・肩・腕の症状)

神経系:変形性頸椎症類似症状、ドロップアタック(一過性脱力発作)、頸椎性眩暈(めまい
筋肉系:慢性頸筋痛、上肢帯筋痛

腰背筋症状

背中から腰にかけての慢性的な痛み、疲れやすさ、夜寝ている時の脚のけいれん

呼吸器症状

亀背による低換気・心肺機能の低下

消化器症状

逆流性食道炎・横隔膜裂孔ヘルニア・便秘・お腹の張り・食欲不振・吐き気、イレウス(腸閉塞)

精神的症状

容姿を損なうことによる女性性の喪失感

大腿骨近位部(太もものつけ根の部分)の骨折は、脳血管障害に次いで寝たきりの第 2位の原因となっており、その20%は骨折後1年で亡くなるともいわれています。さらに残りの大半の方も骨折をきっかけに寝たきりになり、そのことによって老化の進行が早まって認知症などを発症して亡くなるとされています。

前腕部の手首近くは転んで手をついたときに、肩から肘までの上腕部はよろけてぶつけたときに骨折しやすい部位です。痛みや日常動作の不自由さから活動性が低下し、運動不足になりがちです。このような骨折がきっかけとなって、ますます骨が弱くなることがあるため注意が必要です。

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