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腰痛と骨粗しょう症の関係。脊椎の圧迫骨折で腰痛が起こる

腰痛と骨粗しょう症の関係。脊椎の圧迫骨折で腰痛が起こる
メディカルノート編集部 [医師監修]

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腰痛には様々な要因がありますが、一部は骨粗しょう症からきていることがわかってきました。特に骨粗しょう症が原因の椎体骨折はしっかりと診断がつくようになり、それとともに骨粗しょう症の薬物療法も進歩し、症状を軽減することも、ほぼ根治させることも可能になってきています。腰痛と骨粗しょう症の関係を踏まえ、骨粗しょう症における薬物療法と手術療法の進歩について解説します。

骨粗しょう症とは、骨密度が減少し、骨の内部がスカスカになってしまった状態です。加齢や閉経による女性ホルモンの低下・生活習慣などが関連しているといわれます。

背骨を構成している椎体(ついたい)の内部では、骨の柱のような物質が縦横無尽に張り巡らされており、ハチの巣のような構造をしています。これを海綿骨(かいめんこつ)といいます。そして、骨と骨の間には骨髄細胞(赤血球や白血球、血小板などをつくる細胞)が集結しています。

海綿骨は骨代謝の影響を受けやすく、背骨は骨粗しょう症の影響が最も出やすい場所といえます。背骨がスカスカになると、圧迫骨折をしやすくなり、その結果腰痛も起こりやすくなります。圧迫骨折が起こりやすいのは、背骨の真ん中あたりに位置する第11胸椎~第2腰椎までの4つです。1つの椎体のみならず、複数の椎体が次々と骨折してしまうこともあり、そのような場合は立っていることも困難になってしまいます。

PIXTA
イラスト:PIXTA

骨粗しょう症状態の背骨は、軽い動作でも潰れてしまうことがあります。また骨粗しょう症では骨折していなくても腰痛が起きることもありますが、このようなケースでも、非常に小さな圧迫骨折が起きているからだと考えられます。

このように腰痛の原因には骨粗しょう症も関連しているということを知っておくことが大切です。

骨粗しょう症の検査には、骨密度測定(DXA法、超音波法、MD法など)、尿検査、血液検査、脊椎X線検査の4種類があります。

  • DXA(デキサ)法

エネルギーの低い2種類のX線を使って測定。全身のほとんどの骨を測ることができます。腰の骨(腰椎)や太もものつけ根(大腿骨近位部)の骨密度を正確に計測できます。

  • 超音波法

かかとやすねの骨に超音波をあてて測定します。

  • MD(エムディ)法

X線を使って、手の骨と厚さの異なるアルミニウム板とを同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度を比べることによって測定します。

骨粗しょう症の発症頻度は高いにもかかわらず、検査を受ける方が少ないのが現状です。その理由は、骨粗しょう症がしばしば無症状であり、放置しておくと脊椎の圧迫骨折や四肢の骨折を起こしやすくなることが知られていないからだと考えられます。骨粗しょう症は治療ができる病気であり、早期に発見できる検査を受ける方が少ないのは大きな問題だといえます。

40歳、45歳、50歳、55歳、60歳、65歳、70歳の女性は、公的検診(問診や骨量検査などを施し、要指導者には栄養や運動指導、医療機関の紹介なども行われる)が受けられます。積極的に骨粗しょう症の検査を受け、早期発見につなげましょう。

骨粗しょう症の治療は薬物治療が基本です。薬には様々な種類が存在し、具体的には活性化ビタミンD3や女性ホルモン薬などがあります。その中で代表的な骨粗しょう症治療薬がビスホスホネート薬です。

ビスホスホネート薬とは、骨を破壊する細胞(破骨細胞)が、骨を吸収するはたらき(骨吸収)を抑制する薬のことをいいます。ビスホスホネート薬によって骨密度が上昇し、骨折を減らす効果が認められており、毎日飲むタイプ、週1回飲むタイプ、4週に1回飲むタイプ、4週に1回注射するタイプと様々なものがあるため、患者さんの状況に応じて方法を決めることができます。

また2013年にデノスマブという薬が、骨粗しょう症の治療薬として承認されました。これはRANKリガンドというサイトカイン(リンパ球細胞から分泌されるタンパク質)を標的として骨細胞の破壊を抑制する薬であり、破骨細胞が骨に取り付く前に、細胞の分化を抑制するものです。その結果、皮質骨や海綿骨の量を増やし、骨の強度を増強させてくれると考えられています。6か月に1回、皮下投与を行うことで効果が期待できます。

骨粗しょう症は重症化すると椎体圧迫骨折や四肢の骨折が多発する傾向があり、1かカ所骨折すると短期間に次々と骨折が起こることが予想されます。これに対しては、2010年に承認されたテリパラチドという骨粗しょう症治療薬が有効であるといわれています。テリパラチドはヒト副甲状腺ホルモンの活性部分で構成され、骨折の危険性が高い骨粗しょう症に対して適応されます。骨芽細胞の分化を促進し、骨芽細胞の自然死を抑制することで骨芽細胞が増え、骨新生が促されていくと考えられています。

背骨の曲がり方が20°以下であれば、薬物治療によって症状の改善を目指すことが可能です。しかし複数箇所の椎体が潰れている場合や、30°以上背骨が曲がっている場合は、背中や腰の痛みが残ることが多いため、椎体形成術という手術が適応されることがあります。

椎体形成術は潰れた骨の中に針を刺して骨セメントを注入する手術です。セメントによって椎体をできる限り元の状態に復元させ、安定化させます。

しかし潰れた椎体が変形したまま曲がってしまい、潰れた椎体の形を簡単には治せない場合もあります。そのときは、潰れていない沢山の椎体に金具を打って連結し、潰れた椎体の形を復元したり、潰れた椎体の代わりに人工椎体をはめ込んだりすることで背骨をまっすぐにする手術が適応となります。この手術は大きな手術なので、長時間の手術に耐えられ、骨粗しょう症以外は概ね健康な方に適応されます。椎間板変性症と合併している場合などは腰が大きく前屈してしまうため、背骨をまっすぐに矯正して、健常な椎体も含めて複数の椎体同士を固定する手術も検討されます。

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