インタビュー

骨粗しょう症の最新トピックス

骨粗しょう症の最新トピックス
太田 博明 先生

藤田医科大学病院 国際医療センター 客員病院教授、川崎医科大学 産婦人科学2 特任教授/川崎医...

太田 博明 先生

この記事の最終更新は2015年11月28日です。

4年ぶりに改定された「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」から、新たに盛り込まれた2つのトピックスについて、ガイドライン作成委員としても尽力されている山王メディカルセンター・女性医療センター長の太田博明先生にお話をうかがいました。

身体の中のさまざまな臓器は、それぞれ独立して代謝を営んでいるのではなく、お互いに他の臓器の調節に関わりあっているということが分かってきました。骨もまた支持組織(人体を支える骨格)の役割に加えて、全身の代謝を調節するとともに、さまざまな臓器からの影響を受けています。

図:臓器相関による骨代謝調節(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」から引用)
図:臓器相関による骨代謝調節(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」から引用)
  • FGF23(リン代謝調節ホルモン)をつくり出し、腎臓のリン排泄を促進
  • スクレロスチンをつくり出し、骨芽細胞の骨形成を抑制
  • その他、生体における恒常性の維持に幅広くかかわる
  • 膵臓β細胞のインスリン分泌に働きかける
  • 精巣のライディッヒ細胞に作用してテストステロン(男性ホルモン)の分泌を増加させる
  • 食欲を抑制するとともに交感神経系を活性化
  • 骨形成が抑制され、骨吸収が促進される(骨量減少)
  • 副交感神経は交感神経の働きに拮抗し、骨量減少を抑制する。
  • 骨代謝の調節にかかわる
  • 酸化ストレスの増大が骨質の劣化・骨密度の低下を引き起こす
  • β遮断薬やスタチンなど、骨以外の臓器に対する治療が骨強度を改善する

イギリスでは骨粗しょう症骨折した50歳以上の患者さんに対して、リエゾンナースと呼ばれるコーディネーターが治療に関わることで、骨折後の治療率を向上させ骨折の再発を防止するという、多職種連携サービス(Fracture Liaison Service: FLS)が提供されています。同様のサービスがオーストラリアやカナダ、ドイツでも成果を上げていることから、日本骨粗鬆症学会では、骨粗しょう症の啓発・予防・診断・治療のための多職種連携システム「骨粗鬆症リエゾンサービス(Osteoporosis Liaison Service: OLS)」を2012年にスタートさせました。

日本ではこれをさらに発展させ、二次骨折(再骨折の発生)の予防だけではなく、骨折リスクの高い高齢者に対する一次骨折の予防まで含めた内容としています。

図:骨粗鬆症ネットワーク(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」より引用)
図:骨粗鬆症ネットワーク(「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015版」より引用)

医療に関する国家資格を持つメディカルスタッフを対象とした教育プログラムとして、2012年9月から「骨粗鬆症マネージャーレクチャーコース」を開催しています。骨粗しょう症の総論から診断・治療にわたる、基本的な内容を中心としたレクチャーコースを2回受講して、認定試験を受けます。看護師・薬剤師・理学療法士をはじめ、さまざまな職種のメディカルスタッフが受験し、2015年4月には680人の骨粗鬆症マネージャーが誕生しました。

なお、医師はこの骨粗鬆症マネージャーにはなれませんが、認定医制度を設けることが予定されています。基本領域の専門医であることを条件として、2015年10月には移行措置認定として240名の認定医が誕生しました。整形外科医が最も多く181名、内科医32名、産婦人科21名と続いています。
骨粗鬆症リエゾンサービスの取り組み、および認定医制度については日本骨粗鬆症学会のホームページをご覧ください。

(日本骨粗鬆症学会のホームページ http://www.josteo.com/

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