主に閉経や加齢が原因でおこる骨粗しょう症は、骨の強度が弱くなり、わずかな衝撃でも骨折を起こしやすくなる疾患です。骨粗しょう症を改善し予防するには、食事療法や運動療法が必要不可欠です。またそのうえで、患者さんに合わせて薬物治療を行います。
本記事では医療法人横浜柏堤会よこすか浦賀病院の整形外科平出敦夫先生に骨粗しょう症の診断と治療法についてお話を伺います。
骨粗しょう症とは骨密度が低下し、骨の強度が弱くなることで骨折などが起こりやすくなる病気です。閉経後の女性に多くみられることが特徴です。
骨粗しょう症では脆弱性骨折(わずかな衝撃によって起こる骨折)が大きな問題となります。
骨粗しょう症による脆弱性骨折のなかで特に多い骨折は、椎体圧迫骨折です。椎体圧迫骨折とは、背中や腰の骨が押しつぶされてしまう骨折で、日常生活の軽い動作でも発症することがあります。自覚症状がないことも多く、脊椎(背骨)の変形や身長低下などで気づく場合もあります。
また、歩行中の転倒などによる大腿骨近位部骨折(大腿骨頚部骨折や大腿骨転子部骨折など)にも注意が必要です。大腿骨近位部骨折を起こすと、疼痛管理や治療のため長期間ベッド上の生活になることで廃用症候群(長期間にわたり安静を保つことで身体能力の低下や認知障害などをもたらすこと)となる方も多くいます。
そのため、脆弱性骨折による患者さんのQOL(生活の質)やADL(日常生活動作)の低下も大きな問題となっています。
※詳しくは『骨粗しょう症とはどんな病気?折れやすい場所について』をご覧ください
骨粗しょう症は大きく閉経や加齢が原因となる「原発性骨粗しょう症」とその他薬剤や生活習慣病などが原因となる「続発性骨粗しょう症」に分けられます。
原発性骨粗しょう症とは閉経や加齢が原因で起こる骨粗しょう症です。
骨は破骨細胞古くなった骨を破壊する細胞)と骨芽細胞(新しい骨を作る細胞)がバランスよくはたらくことで強度を維持しています。
しかし、閉経後にエストロゲンという女性ホルモンが減少すると、破骨細胞のはたらきが活性化します。すると、破骨細胞のはたらきが新しい骨を作り出す骨芽細胞のはたらきを上回り、骨量が減少してしまうのです。
続発性骨粗しょう症とは、何らかの原因(閉経や加齢以外)によって二次的に起こる骨粗しょう症です。主な原因は、内分泌性・代謝性疾患(糖尿病や甲状腺機能亢進症など)や薬剤性、栄養性、生活習慣病などです。
※詳しくは『骨粗しょう症の原因 骨密度の低下には複数の理由がある』、『骨粗しょう症の種類』をご覧ください
骨粗しょう症の検査では主に骨密度の測定や、骨代謝マーカーによる骨の代謝状態の評価を行います。
骨密度の測定方法にはいくつかの検査法がありますが、代表的なものにDXA(デキサ)法があります。DXA法とは2つの異なるエネルギーのX線を使って骨密度の測定を行う検査です。そのほか、MD法やQUS法というものが用いられることもあります。
また、骨代謝マーカーには骨吸収マーカー、骨形成マーカーがあり、血液や尿を採取することで骨の代謝状態を調べることができます。
※詳しくは『骨粗しょう症の検査と診断』をご覧ください。
骨粗しょう症では、食事療法、運動療法をしっかりと行ったうえで、薬物療法を行います。
骨粗しょう症では、骨量を増やすために食事から栄養素を摂取することが重要です。特に、カルシウムを多く含む食事を心がけるようにしましょう。また、これらの栄養素を積極的に摂ることで骨粗しょう症の予防にもつながります。
<摂取が推奨される栄養素>
また、以下のような食品は過剰に摂取することでカルシウムの尿中排泄を促す作用があるため、摂りすぎないように注意しましょう。
<過剰摂取に注意する栄養素>
運動療法の目的は、骨に負荷をかけることで骨量を増加させることです。骨への負荷がないと骨量が減少し強度が弱くなってしまいます。そのため、それぞれの方の年齢や状態に合わせてウォーキングや筋力増加訓練などを行うようにしましょう。
また高齢の方の場合、骨折予防のために転倒しない体づくりを行うことも大きな目的です。そのため下肢の筋力増加や片足立ちなどのバランス訓練を行うことも有効です。
骨粗しょう症の薬物治療には以下のような種類の薬剤が用いられます。
<骨粗しょう症治療薬>
・骨代謝調整薬…小腸からのカルシウムの吸収を促進する(活性型ビタミンD3製剤など)
・骨形成促進薬…骨の形成を助ける(PTH製剤など)
・骨吸収抑制薬…骨の吸収を抑える(カルシトニン薬、エストロゲン、ビスホスホネート系薬剤、分子標的薬、選択的エストロゲン受容体調節薬など)
これらの薬剤から、患者さんの骨の状態や原因によって適切なものを選択します。
※詳しくはこちらをご覧ください。
医療法人 横浜未来ヘルスケアシステム よこすか浦賀病院 整形外科部長
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