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大腿骨頚部骨折とは?原因や症状、予防法について

大腿骨頚部骨折とは?原因や症状、予防法について
平出 敦夫 先生

医療法人 横浜未来ヘルスケアシステム よこすか浦賀病院 整形外科部長

平出 敦夫 先生

目次
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高齢の女性に多く発症する大腿骨頚部骨折は、発症を契機にベッド上での生活が長くなり、結果的に寝たきりになってしまう方も多くいるなど、大きな社会問題となっています。高齢化が進む日本では今後さらに罹患者数が増加すると予想されています。

今回は医療法人横浜柏堤会よこすか浦賀病院の整形外科平出敦夫先生に、大腿骨頚部骨折の原因や症状、予防法についてお話を伺いました。

※大腿骨頚部骨折の診断、治療法については記事2『大腿骨頚部骨折の診断と治療法』をご覧ください。

大腿骨頚部
画像提供:PIXTA

大腿骨頚部骨折とは、大腿骨の一部である大腿骨頚部に起きる骨折のことを指します。まずは、この大腿骨頚部の構造についてお話しします。

私たちの足の付け根には骨盤と大腿骨(太ももの骨)をつなぐ股関節があります。股関節は球形の大腿骨頭(だいたいこっとう)(大腿骨のもっとも上部にある骨)が骨盤にある寛骨臼(かんこつきゅう)に包み込まれることで安定を保っています。

そして、大腿骨頭のすぐ下にある細くくびれている部分を大腿骨頚部、この部分で起きた骨折を「大腿骨頚部骨折」とよびます。

また大腿骨頚部のすぐ下にある太く出っ張った部分を転子部といい、転子部の骨折は大腿骨転子部骨折とよばれ、大腿骨頚部骨折とは区別されます。

大腿骨頚部骨折を起きやすくする主な原因は骨粗鬆症です。骨粗しょう症とは骨の内部がスカスカになり骨の強度が低下してしまう病気で、高齢の女性に多く発症します。

骨粗しょう症で骨の強度が弱くなると、外部から強い衝撃を受けなくても骨折してしまうことがあります。1998年〜2001年に日本整形外科学会が行った調査によると、大腿骨頚部骨折の受傷原因の第一位は立った高さからの転倒です。つまり、骨の強度が弱いために歩行中や立位時の転倒など、比較的小さな外力で大腿骨頚部骨折を発症しているケースが多くを占めています。

さらに、寝たきりの状態にある高齢者などで骨の強度が著しく弱くなっている方の場合、おむつ交換時や就寝時などに大腿骨頚部骨折を発症するケースもあります。

もちろん、年齢が若い方の場合でも交通事故や高所からの転落などによって大腿骨頚部骨折を起こすことはあります。しかし、発生の頻度は高齢の方に比べて極めて少ないといえます。

※骨粗しょう症については記事3『骨粗しょう症とは?原因から検査、治療法まで解説』で詳しく解説します。

高齢女性

先ほども少しお話ししましたが、大腿骨頚部骨折骨粗しょう症にかかっている高齢女性に多く発症します。

大腿骨頚部・転子部骨折に関する全国的調査によると、2007年における推計発生数は男性約31,300人に対し、女性約116,800人という調査結果がでており、圧倒的に女性の発症が多いことがわかります。また、同調査による人口1万人当たりの発生率を年齢別にみると、大腿骨頚部骨折の発症は50代以降から徐々にみられはじめ、70代以降から女性を中心に大きく増加しているという結果も出ています。

大腿骨頚部骨折を発症すると、通常鼠径部(そけいぶ)(足の付け根)に強い痛みが生じ、加えて歩行困難もしくは歩行不能の症状を伴います。

また、痛みの感じ方は骨折の度合いや患者さんの認知機能によっても異なります。骨折時に骨がほとんどずれていない不全骨折とよばれる状態では、痛みは感じても歩行ができてしまう方もいます。そのため、骨折していることに気が付かないこともあるため、注意が必要です。また、中等度以上の認知症の患者さんの場合、痛みの症状を訴えない方もおり、歩行障害などに家族や身の回りの人が気付き大腿骨頚部骨折であるとわかることもあります。

大腿骨頚部骨折は受傷をきっかけに廃用症候群(長期間にわたり安静を保つことで身体能力の低下や認知障害などをもたらすこと)になり、寝たきりとなってしまう方も多くいらっしゃいます。そのため、日頃から大腿骨頚部骨折の予防に努めることは非常に重要です。大腿骨頚部骨折を防ぐためには「骨粗しょう症の予防や治療」と「転倒を防ぐ生活」がとても大切です。

笑顔でウォーキングをしている高齢者

大腿骨頚部骨折を予防するために、骨粗しょう症と診断を受けている方の場合には骨粗しょう症の治療をしっかりと行うことが重要です。

骨粗しょう症の治療では、薬物療法、食事療法、運動療法の3つをバランスよく行うことが基本です。薬物療法に用いられる治療薬には主に、骨の破壊を抑制する薬、骨の形成を助ける薬、カルシウムの吸収を促す薬があります。これらの薬剤のなかから患者さんの状態に合わせた治療薬が選択されます。

また、食事療法ではカルシウム、ビタミンD、ビタミンKを多く含む食品を摂るようにしていただきます。運動療法では骨量の増加のために、歩行訓練や筋力トレーニングなどを行います。運動は痛みのでない範囲で無理なく続けていただきたいと思います。

また、骨粗しょう症と診断を受けていなくても、骨密度測定などの検査を定期的に受けていただくことも重要です。特に骨粗しょう症のリスクが高い閉経後の女性は、積極的に定期検診を受けるようにしましょう。

骨粗しょう症の予防と治療をしっかりと行うことで、大腿骨頚部骨折の予防に努めましょう。

※骨粗しょう症の予防や治療については記事3『骨粗しょう症とは?原因から検査、治療法まで解説』で詳しく解説します。

先ほどもお話ししましたが、大腿骨頚部骨折の受傷原因の多くは立位時や歩行時の転倒です。そのため、日頃からつまずきや転倒を防ぐために、家のなかの環境などを整えておくことが大切です。

引き続き、記事2『大腿骨頚部骨折の診断と治療法』では、大腿骨頚部骨折の診断と治療法について解説します。
 

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