インタビュー

骨粗しょう症とはどんな病気?折れやすい場所について

骨粗しょう症とはどんな病気?折れやすい場所について
太田 博明 先生

藤田医科大学病院 国際医療センター 客員病院教授、川崎医科大学 産婦人科学2 特任教授/川崎医...

太田 博明 先生

この記事の最終更新は2015年05月02日です。

超高齢社会を迎え、人生90年時代となったわが国では、単なる「生命長寿」ではなく「健康長寿」が望まれています。健康長寿とは、健康上の問題による日常生活での支障や制限がなく、健康に過ごせる寿命のことです。しかし、特に女性に、生命長寿でありながら健康長寿でなく、支援・介護を要する方が多く見られます。その原因として第1位に挙がるのが、骨粗しょう症を中心とした運動器の疾患(25.8%)です(第2位は認知症(17.5%)、第3位は脳卒中(15.9%)です)。
今回の記事では、この骨粗しょう症とはどんな病気なのかについて、山王メディカルセンター・女性医療センター長の太田博明先生にわかりやすくご説明いただきました。

骨粗しょう症の日本における患者は、男性380万人・女性900万人の計1280万人と推計されています。この人数は人口の約10%に相当し、骨粗しょう症は「よくある病気」と言えるでしょう。男女がともにかかり得る臓器の疾患のうち最も性差のある疾患で、患者の約80%が女性です。

私たちの体の中では、血液などと同様に絶えず骨の新陳代謝が行われています。骨の古くなった部分は破骨細胞(はこつさいぼう)によって破壊(骨吸収)され、骨芽細胞(こつがさいぼう)によって新しい骨に入れ代わります(骨形成)。この一連の過程を骨のリモデリング(再構築)と呼びます。

骨吸収には約4週間、骨形成には約4ヵ月、計約5ヵ月を要して、この新陳代謝は繰り返されています(図)。しかし、骨吸収と骨形成のバランスが崩れてしまうと、骨の量が減少するとともに新しい骨の割合が少なくなるため、骨の質も劣化し、骨からしなやかさや丈夫さが失われてしまいます。

女性の場合、50歳ごろに閉経となり、骨吸収を抑制する働きがある女性ホルモンであるエストロゲンの分泌が急激に低下します。このため骨吸収の歯止めが効かなくなり、加齢もともなって骨の量が減り、骨の質が劣化していきます。これは誰にでも起こることです。しかし、これに加えて生活習慣の乱れや、それによる生活習慣病の発症などがあれば、骨の質はさらに劣化します。骨粗しょう症は気づかないうちに進行していき、骨の量・質ともに低下し、ある日突然の骨折を引き起こすことになります。

骨粗しょう症によって折れるのは、ほぼ決まった部位の骨です。骨粗しょう症による骨折が起こりはじめるのは50歳代からですが、折れやすい部分は年代によって変化します。

  • 50歳代から:前腕骨の手首部分や椎体(脊椎の骨の主要部)に多く発生します。
  • 65歳頃から:椎体、前腕骨、大腿骨(太もも部分の骨)、上腕骨(肩からひじまでの骨)の順に多く発生します。
  • 75歳頃から:椎体、大腿骨、前腕骨、上腕骨の順に発生します。その中で最も多いのが椎体の骨折で、その総数は約380万人、次に多い大腿骨骨折が約17.6万人といわれています。

骨粗しょう症の治療法や予防法については、別記事で詳しく説明します。

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