手首のねじり動作で起こる痛みをTFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷といいます。これはバトミントンやテニスのスピンなどのときにみられる手首の障害です。また、尺骨が手首に突き刺さることで生じる痛みを尺骨突き上げ症候群といいます。福岡山王病院 整形外科部長の副島修先生に、TFCC損傷と尺骨突き上げ症候群についてお話を伺いました。
テニスやゴルフといった手首のねじり動作が多いスポーツで起こるのがTFCC(三角繊維軟骨複合体)損傷です。手関節の尺側側(外側)の三角形の領域には、尺骨三角骨靱帯、尺骨月状骨靱帯、掌側橈尺靱帯、背側橈尺靱帯、関節円板、尺側側副靱帯、三角靱帯という7つの靱帯があり、これらが複合体となって手首の外側の安定を保っています。
これらの靱帯によって安定を保たれている軟骨、つまり三角繊維軟骨複合体という組織が損傷されると、痛みが生じます。ドアノブを回したり、車のキーを回したりするときに痛みが現れますが、尺骨茎状突起(手首外側・小指側の突起部分)あたりに生じるピンポイントの痛みが特徴です。スポーツの種目でいえば、テニスや野球のキャッチャーなどにも多い損傷で、TFCC損傷はケガによる場合と加齢にともなう場合に大別されます。
TFCC損傷の診断は、手関節尺側(小指側)の圧痛(押したときの痛み)や運動時の痛み、ドアノブを回す動作をしたときの痛みの有無などで診断します。TFCC損傷は骨(軟骨)の障害になるため、MRI(磁気共鳴画像)の検査も必要になります。
治療はほとんどが保存療法で、固定したりサポーターを巻いたりして局所の安静を保つことで改善されます。痛みが強い場合には局所麻酔剤入りのステロイド注射をすることもありますが、その場合でも約3~4か月で治ります。
保存的療法で痛みが軽減しないときには手術療法が検討されます。TFCC損傷の手術は内視鏡(細い管の先端にカメラやメスなどがついている手術用器機)を使って行います。これは損傷の部位が深い場所にあり、また組織も小さいため、内視鏡のほうが切開による手術よりも術野(手術を行う時の視野)がよく見えるためです。
内視鏡を使う目的の大部分は検査にあります。ピンポイントで小指側の痛みが持続していて、MRIの結果TFCC損傷が疑われるような場合でも診断の確率は70%程度にとどまります。しかし内視鏡を入れて検査をすることで、最終的な確定診断をつけることが可能となるのです。もし異常があれば内視鏡を使って削ったり、洗い流したりといった修復術を行います。
手関節の疾患では、橈骨よりも尺骨が長いために、尺骨が手首に突き刺さることで生じる痛みである尺骨突き上げ症候群があります。尺骨突き上げ症候群は、内視鏡で処置しても痛みはなかなかとれないため、骨(尺骨)を短くする手術(尺骨短縮術)を行います。突き出ている骨は通常2~3ミリ程度がほとんどなので、この部分の骨を削ります。
尺骨突き上げ症候群の手術では骨を扱うことになるため、術後骨がしっかりと固定するまでスポーツを行うことはできません。そのため復帰には半年程度必要となります。
福岡山王病院では、手術の成績(手術によって患者さんがどの程度楽になったか)を点数化して評価をしていますが、尺骨突き上げ症候群に対する尺骨短縮術における評価については、術前での30点程度から、術後は90点くらいまで改善され、成績としては非常にいい結果を出しています。
福岡山王病院 整形外科部長、福岡国際医療福祉大学教授 教授
副島 修 先生の所属医療機関
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