
スポーツ活動によって生じるスポーツ障害は大人だけのものではありません。子どもの場合は、成長期ならではの障害が現れるのだといいます。福岡山王病院 整形外科部長の副島修先生に、子どもに起こるスポーツ障害についてお話を伺いました。
スポーツ障害とは、スポーツに特徴的な動作が繰り返し行われることによって生じる組織の炎症または破綻のことで、いわゆる使い過ぎ(オーバーユース)が原因で起こる障害のことです。
痛みを主な症状とする慢性的疾患で代表的なものには、野球肘やテニス肘などがあります。スポーツ活動によって起こる1度の外的な負荷、つまりケガなどによって生じるスポーツ外傷と、慢性的疾患であるスポーツ障害とは明確に区別されています。
スポーツの人気や重要性が高まり、幼少期からスポーツを行う子どもたちも増えています。体が未発達で、成長段階だからこそ生じる障害が現れるのも、この年代の特徴といえます。
野球肘は子どもに起こるスポーツ障害のうちもっともポピュラーな疾患であり、肘の障害としても代表的な疾患のひとつです。野球肘とは、野球関連の動作によって起こる肘の故障全般のことですが、競技は野球に限っているわけではありません。種目としては、野球の投球のほかにも、テニスのサーブやバレーボールのスパイクなどが該当します。野球肘はこれらの動作を繰り返し行うことによって起こります。
成長期の子どもの骨や軟骨は大人と比べると弱いため、繰り返しボールを投げたりすることによって、肘へ過剰な負荷がかかってしまいます。つまり野球肘は成長期だからこそ起きる、大人にはない子どものスポーツ障害ということができます。
野球肘には外側障害と内側障害の2種類があります。
外側障害は骨同士がぶつかることで生じるものであり、肘の骨と軟骨が剥がれてきてしまいます。一方、内側障害の場合は、靱帯の付け根が引っ張られることで、靱帯や成長軟骨が痛みます。頻度としては、圧倒的に内側障害が多くみられます。
野球肘の原因はほとんどの場合が肘への過剰な負荷によるものなので、基本的にはスポーツを休ませることが必要になります。野球であれば投球の休止です。休止期間は、最低でも1か月ほどですが、骨が損傷している場合は3か月ほど休ませる必要があります。
内側障害の場合は大部分が安静にするだけで治りますが、外側障害は関節が壊れてきているため、進行している状況では、関節を作り治す手術が必要になります。手術を行うかどうかは、レントゲンで進行具合を評価したり、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像)検査をしたりして診断します。
野球肘は、小学校の高学年から中学生までに多くみられます。手術の頻度は少ないですが、手術が必要となるような場合は末期状態ともいえるため、できればその前に発見して休ませてあげることが重要です。
野球肘の予防としては、以下の6点に注意することが挙げられます。
・定期的に休んで疲れをとる
・運動前にはストレッチを行う
・自分のフォームのチェックを行う
・同じ動作を繰り返さない
・痛みや関節の動きなどのチェックを行う
・もしも野球肘を発症した場合は定期的なチェックを受ける
また、2005年、日本臨床スポーツ医学会学術委員会は以下に示すような「青少年の野球障害に対する提言」を出しています。
「青少年の野球障害に対する提言」
練習
全力投球数(試合を含む)
日数 時間
1日 1週
小学生
週3日 2時間以内
50球 200球以内
中学生
週1日以上の休養日
70球 350球以内
高校生
週1日以上の休養日
100球 500球以内
※1日2試合の登板は禁止
※毎日の投球数を必ず記録すること
福岡山王病院 整形外科部長、福岡国際医療福祉大学教授 教授
副島 修 先生の所属医療機関
様々な学会と連携し、日々の診療・研究に役立つ医師向けウェビナーを定期配信しています。
情報アップデートの場としてぜひご視聴ください。
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