インタビュー

関節軟骨修復後のリハビリと予防

関節軟骨修復後のリハビリと予防
松末 吉隆 先生

滋賀医科大学 前副学長・理事(医療等担当)、滋賀医科大学医学部附属病院 前病院長

松末 吉隆 先生

この記事の最終更新は2016年04月06日です。

関節軟骨の損傷を修復した手術の後はリハビリテーションをしっかり行うことがその後の日常生活、スポーツを続けていくためにも重要です。リハビリテーションの方針と損傷の予防について、滋賀医科大学医学部附属病院・病院長の松末吉隆先生にお話を伺いました。

基本的には、初期の増殖期(4~6週)、移行期(4~12週)、リモデリング期(術後3~6カ月)、成熟期(術後4~18カ月)に分けて行います。

増殖期は、修復軟骨の保護の時期で、腫脹(炎症などで腫れあがること)の軽減、関節可動域の回復を図るとともに、部分加重が開始されます。可能な限り早くから大腿四頭筋(だいたいしとうきん)の収縮を行う訓練(セッティング)を開始し、手術療法後2~8週からCPM(持続的関節他動訓練器)と呼ばれる膝の可動域訓練に入ります。これは電気の動きによって膝を屈伸する装置で、徐々に可動域を大きくしていきます。

移行期は、日常的な動作がほとんど獲得できるようにすることを目指し、部分加重から全加重へと移ります。ただし、訓練の行いすぎによる疼痛、炎症などには注意してください。

リモデリング期は、組織が固く結合してくる時期で、自転車、ゴルフなどのスポーツを通じ、筋力の増強、柔軟性の獲得を図ります。

成熟期は、修復組織の完全な成熟が得られる時期で、スポーツへの復帰を図ることになりますが、その時期は方法や個々の症例で異なります。

とくにモザイクプラスティ術におけるリハビリテーションについては、CPMは早期から行い、十字じん帯損傷例などの小さな病変では術後2週から、中程度の病変であれば3週から、骨壊死や離断性骨軟骨炎での大きな病変では4週から部分荷重を始め、8~12週で全 荷重とします。この場合、軟骨採取部(ドナー部)に対する配慮が必要で、痛みや腫れを引き起こさない程度に慎重に負荷をかけていくことが必要です。

まず体幹や太ももの裏側のストレッチやウォーミングアップなどをしっかり行ってから、徐々に体を動かしていくようにしましょう。腫れや痛みを感じることがあれば、関節に負荷がかかっていると考え注意するようにしてください。また、それが3日以上続くようであれば練習やトレーニングを減らす必要があります。また、中高齢者にとっては、ひざへの負担を抑えるためにも適度な運動を続けることが大切です。ウオーキングはとくに有効ですが、痛みが出ない程度に行ってください。