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小児救急領域における開業医と勤務医の新しい協働のカタチ
千葉県の県庁所在地である千葉市の西端に位置する千葉市立海浜病院は、市内に2つある市立病院の1つとして地域医療に貢献しています。中でも内科と小児科における夜間の救急外来を千葉市医師会とともに365...
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小児救急領域における開業医と勤務医の新しい協働のカタチ

公開日 2017 年 02 月 02 日 | 更新日 2018 年 09 月 20 日

小児救急領域における開業医と勤務医の新しい協働のカタチ
寺井 勝 先生

千葉市立海浜病院 病院長

寺井 勝 先生

目次

千葉県の県庁所在地である千葉市の西端に位置する千葉市立海浜病院は、市内に2つある市立病院の1つとして地域医療に貢献しています。中でも内科と小児科における夜間の救急外来を千葉市医師会とともに365日提供しており、地域の開業医と病院の勤務医が協働して救急対応にあたる全国でも稀有な体制を敷いています。ここでは、千葉市が提供する夜間小児救急の沿革と展望について千葉市立海浜病院 院長の寺井勝先生にお伺いしました。

千葉市の小児救急の拠点として

子供

千葉市はこどもの夜間救急外来を千葉市立海浜病院に集約してきた歴史があります。入院が必要と判断された場合、あらかじめ市と契約した二次救急受入当番病院(輪番制)に入院する仕組みになっていました。

しかしながら、小児科医不足もあり二次救急当番病院の数が年々減っています。以前は市内の小児科入院を扱っている病院が5〜6施設あったのですが、平成27年には千葉市立海浜病院の他に、千葉県こども病院と八千代市の東京女子医科大学八千代医療センターの三施設となってしまいました。地理的にみても、いずれの病院も千葉市立海浜病院から距離があり、車で40〜50分はかかってしまいます。

たとえば千葉市の東の端から海浜病院にやってきて、先の当番病院のいずれかに入院することが決まった場合、往復の移動に1時間以上かかってしまいます。このような夜間の長距離移動は体調の悪いこどもにとって負担になりますし、移動中に病状が急変することも考えておかなければなりません。

このような背景があり、千葉市立海浜病院で夜間の救急外来から入院までの体制をシームレスに行える体制を整え、平成28年6月より千葉市立海浜病院が365日、必要な入院小児の受け入れをすることとしました。

特色ある小児救急外来のかたち〜開業医と勤務医が力を合わせて地域を守るモデルとして〜

千葉市の夜間救急医療体制では、千葉市医師会の地域開業医や県内外の大学病院勤務医が千葉市立海浜病院に設置した夜間救急外来(夜急診)において365日夕刻から朝まで診察をしています。千葉市薬剤師会、千葉県診療放射線技師会にもご協力いただいています。そのなかで、小児科では開業医と当院の勤務医が協働する小児救急医療として全国でも珍しい救急医療の運営形態を取っています。平成27年10月より看護師による院内トリアージを導入し、年間小児患者数が約15,000人と込み合う夜間救急外来の適正化を図ってきました。トリアージとは、徒歩来院あるいは救急車で運び込まれた患者さんを医療従事者が数分で緊急度を判定、緊急度に応じて治療の優先順位を定めることです。トリアージ自体は今やどの病院でも行われていることですが、当院ではこれを救急外来の担当医の振り分けにも活用しています。

比較的緊急性が低いこどもたちは開業医が、緊急性の高いこどもたちは常勤の小児科医が担当する「トリアージを活用した並診システム」を用い、協力して地域のこどもたちの健康を守っています。

千葉市の特色を生かした協力態勢

地域の開業医が365日基幹病院に足を運び夜間救急外来の現場に立つことは、日本において珍しいことです。夜間の救急外来が地域の基幹病院で運営されている場合、その多くは基幹病院の勤務医を中心に行われています。開業医が恊働する場合でも週に1〜2回程度担当するということはしばしばありますが、365日両者が恊働している病院は全国でも珍しいのではないでしょうか。一方では、院外の施設(保健所など)に夜間の初期救急外来を設置し、そこに勤務医や開業医が交代で出務する形態で救急医療を提供している自治体も多数あります。地域の実情に応じて運営されますが、患者の視点で考えると救急外来先の施設に入院するのが負担も少なく、患者さんにも安心感を与えていると思うのです。そのためには地域の開業医と勤務医の恊働が欠かせないのです。勤務医と協働して地域を守るという開業医の思いも大切にしたいですね。

開業医が足を運び救急外来を担当する歴史が当院では30年ほど前から続いていますが、当時は原則として開業医が救急外来患者をみて、入院が必要な場合に当番病院の勤務医にバトンタッチをする運営でした。

しかし、平成27年10月より、看護師によるトリアージシステム導入を機に、「けが」などの外因系疾患も受け入れる体制を整え、夜間の小児救急外来に開業医と勤務医が協働することで、困ったときは助け合える環境が築けるようになりました。

実は以前私が勤務していた八千代市でも同じシステムを10年前に立ち上げたのですが、365日、開業医が参加出来る程の医師数が確保できませんでした。

医師不足が顕著な地方都市では、こどもの救急をケアできる病院も医師も少なく、千葉市は小児救急外来担当としての小児科医や内科医が40〜50人、さらに、深夜帯では県内外の勤務医の医師にも支援していただいており恵まれていると感謝しています。医師会、病院、行政など皆が「地域のために」という共通の理念を持ちながら、一丸となって地域を守る連帯感が必要だと私は考えています。医師も人間なので夜勤が辛いと感じることも多々ありますが、大勢の医師で交代して行えば、より少ない負担で行えるのではないでしょうか。

開業医と勤務医の協働、メリットは?

 

医師同士の協力

開業医と勤務医が役割分担するメリットとして、トリアージレベルの高い患者は緊急に治療をおこなう必要が高く、病院の事情に明るい小児科勤務医が対応したほうが迅速な治療を提供することが可能なことです。

開業医と勤務医の協力体制を密にするために、千葉市立海浜病院では2ヶ月に1回、合同の勉強会を行なっています。小児の夜間救急を担っている医師が集まり、夜間救急患者の診断、治療経過を共有することで、全体のレベルを少しずつ上げていく取り組みを行なっています。

この顔のみえる機会を重ねることで日々の医療の質を上げることはもちろん、地域の医師が「顔」を合わせ、会話を行うことで互いを信頼し、クリニック・病院間の紹介などを安心して行える関係を築くことが重要なのです。

千葉市を日本のシアトルに」を目指す千葉市医師会救急担当理事の中村真人氏は、「海浜病院の小児救急医療は全国に誇れる千葉市の財産」とコメントされています。

今後の課題と展望

「開業医の高齢化」と「病院施設の老朽化」が挙げられるでしょう。

夜間救急に参画いただいている千葉市内の開業医の高齢化によって救急外来に出務される医師数が今後減少する可能性が考えられます。その一方、当院勤務医が当院を離れることも考えられます。医師の増減予測は難しいのですが、将来的に365日救急医療を提供する仕組みの維持が難しくなるかもしれません。歴史あるこの夜間救急医療体制をこれからも深化させるべく、千葉市内にこれから開業する勤務医の方々にも夜間小児救急医療を支援していただきたいと私は願っています。

また千葉市立海浜病院は今年で34年を迎える歴史ある病院ということもあり、古くなった救急外来をリニューアルしてよりシームレスに運営できるようにしていきたいと考えております。

97万人口の政令都市千葉市には、千葉大学病院、国立病院機構千葉医療センター、千葉県こども病院、千葉メデイカルセンターなど官民の基幹病院が多く、恵まれている地方都市と言えます。しかしながら、小児の入院を収容できる施設は、千葉県こども病院、千葉大学、そして千葉市立海浜病院の三施設にほぼ集約されています。それぞれが小児医療の機能分担をしているわけですが、急性疾患の治療は千葉市立海浜病院が担っております。こどもが急病を患った際に保護者もどこへ連れて行ったらいいのかわからず救急車を呼んでしまいがちですが、千葉市立海浜病院は地域の基幹病院として、「こどもの総合医」である小児科医が窓口となり、地域のこどもたちの健康と成長を見守っていきます。

 

小児救急市民公開フォーラムの開催

小児救急市民公開フォーラム(平成29年11月11日@千葉)について詳しくはこちら

画像をクリックするとPDFがダウンロードできます。


 

小児救急医療(寺井勝先生)の連載記事

千葉大学医学部を卒業し、小児科医としてスタート。小児の循環器を学び、千葉県の小児循環器の普及に係わる。また、千葉県八千代市の大学病院立ち上げに参加、小児救急医療の立ち上げ、病院長として地域医療に係わる。現在、千葉市立海浜病院の勤務医として千葉市の小児医療に携わり、こどもたちに信頼される小児医療の推進を目指している。