インタビュー

日本でジカウイルス感染症(ジカ熱)は発生する?原因や予防法を解説

日本でジカウイルス感染症(ジカ熱)は発生する?原因や予防法を解説
高崎 智彦 先生

神奈川県衛生研究所 所長

高崎 智彦 先生

この記事の最終更新は2018年02月22日です。

ジカウイルス感染症(ジカ熱)とは、主に蚊が媒介するジカウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。2018年2月現在、日本国内でジカウイルスの感染が発生した報告はありませんが、国内に持ち込まれる可能性はゼロではないといわれています。

しかし、国内で流行が発生しても蚊に刺されない工夫、さらに蚊の発生を抑える工夫をすることで、予防は可能であると考えられています。

今回は、神奈川県衛生研究所の所長である高崎 智彦先生に、ジカウイルス感染症の原因や予防法についてお伺いしました。

ジカウイルス感染症(ジカ熱)とは、蚊が媒介するジカウイルスに感染することで引き起こされる感染症です。ジカウイルスを媒介する蚊は、主にネッタイシマカとヒトスジシマカなどのヤブカ属の蚊です。

ジカウイルスを持つ蚊に刺されることによってウイルスに感染すると、2〜12日の潜伏期間を経て、軽度の発熱や発疹結膜炎などの症状が現れます[注1]

注1:国立感染症研究所「蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第4版)

ジカウイルスを媒介する蚊は、主にヤブカ属のネッタイシマカとヒトスジシマカです。ウイルスをもつネッタイシマカやヒトスジシマカに刺されることで感染します。

しかし、ジカウイルスをもつ蚊に刺されたからといって、必ずしもみんなが感染するわけではありません。さらに、感染が成立したとしても、症状が現れない方もいるといわれています。

症状が現れたとしても、少し発熱するくらいでおさまる人もいます。このため、ジカウイルスへの感染に気付かないケースもあると推測されています。

また、WHO(世界保健機関)によると、ジカウイルスは性行為によって感染する可能性があるといわれています。少数ではありますが、ジカウイルスに感染した男性あるいは女性から、そのパートナーへ性行為による感染が報告されています[注2]

注2:世界保健機関(WHO)Prevention of sxual transmission of Zika virus Interim guidance update 6 September 2016

ジカウイルス感染症は、アフリカ、中南米、アジア太平洋地域が主な流行地域になります。2018年2月現在、日本国内でジカウイルスの感染が発生した報告はありません。

日本人の感染は、渡航先の海外で感染し発症した輸入症例のみです。いずれも、海外の流行地域で感染したケースになります。

しかし、ジカウイルス感染症と同様、ヤブカ属の蚊を媒介して感染するデング熱が2014年、代々木公園を中心に流行しました[注3]

これは、いずれの感染者も海外渡航歴がなく、国内感染であったといわれています。このような例があるため、デング熱と同じヤブカ属の蚊が媒介するジカウイルス感染症が流行する可能性もゼロではないと考えられています。

注3:東京都福祉保健局, 「東京都蚊媒介感染症対策会議報告書」, 2014

2018年2月現在、媒介する蚊のうち、ネッタイシマカは日本には生息していません。しかし、ヒトスジシマカは、日本で生息が認められています。

このため、日本でもヒトスジシマカから感染が広がる可能性はゼロではありません。ヒトスジシマカは卵の状態で越冬する蚊です。成虫が活動するのは地域によって差はありますが5〜10月頃といわれています。

ヒトスジシマカが卵の状態である冬の期間は国内で感染する可能性が低いといえるでしょう。しかし、成虫が活動する5〜10月は、感染しないよう注意が必要な期間になります。

日本国内では、ヒトスジシマカが活動している5〜10月は、野外活動する際は虫除け剤を使用することをおすすめします。さらに、海外の流行地にでかける際にもきちんと虫除け剤を使用し、蚊にさされないよう注意してほしいと思います。

特に、DEET(ディート)やイカリジンという成分を含む虫除け剤が効果的でしょう[注4]。これらの成分を含む虫除け剤であれば、長時間にわたり効果が期待できると思います。

特に、夏場は日焼け止めを塗る方も多いと思います。この場合、虫除け剤は日焼け止めの上から使用しないと効果がなくなります。

また、長袖・長ズボンの着用も、蚊に刺されにくくなるため蚊媒介ウイルス感染症の予防法です。

また、お話ししたように、ヒトスジシマカは卵で越冬します。卵が孵化する春先以降11月頃までは、卵が孵化するためのたまり水をなくすことも効果的でしょう。

水がたまりやすい古タイヤや植木鉢の受け皿などをなくし、ボウフラ(蚊の幼虫)を発生させないよう工夫することも有効です。

お話ししたように、ジカウイルスは、性行為によって感染する可能性があるといわれています。

このため、世界保健機関(WHO)では、日本のような流行地域ではない国では、流行地域から帰国した男女は、安全な性行為あるいは帰国後6か月は性行為を控えるよう推奨しています[注4]

注4:世界保健機関(WHO)Prevention of sxual transmission of Zika virus Interim guidance update 6 September 2016

記事2『ジカウイルス感染症(ジカ熱)の症状と検査-感染による合併症とは?』では、ジカウイルス感染症の症状や検査についてお話しします。

  • 神奈川県衛生研究所 所長

    日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会 耳鼻咽喉科専門医

    高崎 智彦 先生

    1982年より耳鼻咽喉科医師としてキャリアをはじめる。1982年に大阪医科大学を卒業し、臨床研修後、大阪府済生会中津病院耳鼻咽喉科医員に。1987年より米国UCLA にてHIV研究に従事。その後、大阪医科大学助手(耳鼻咽喉科)を経て、1991年より近畿大学医学部細菌学教室講師を務める。1998年より国立感染症研究所ウイルス第一部室長。2016年4月より神奈川県衛生研究所長を務める。耳鼻咽喉科専門医。デングウイルス、日本脳炎ウイルス、ジカウイルスなど蚊が媒介するウイルス感染症を専門とする。ウエストナイルウイルス防疫技術検討会専門委員、日本脳炎ワクチン製造承認専門委員、厚生労働省厚生科学審議会専門委員、沖縄感染症拠点形成 促進事業推進委員、WHOのSAGE日本脳炎ワクチンワーキンググループのメンバーを歴任。

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