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インタビュー

中皮腫とはどんな病気?概要を解説

中皮腫とはどんな病気?概要を解説
岡部 和倫 先生

ベルランド総合病院 呼吸器外科 部長

岡部 和倫 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年06月13日です。

中皮腫とは、胸腔(胸膜に囲まれた空間)や心膜(心臓を入れている袋)の表面を覆っている膜様組織の「中皮」から発生するがんを指します。主要な原因はアスベストを吸うこととされていますが、発症する仕組みは現代の医学ではまだ明らかになっていません。治療が難しい病気であり、治療の際には経験豊富な医師の判断を求めることが重要です。

今回は、中皮腫とはどんな病気なのか、岡部和倫先生にご解説いただきました。

中皮腫

 

中皮腫は、臓器の表面や、体壁の内側を覆う膜の表面にある、「中皮細胞」に由来する腫瘍です。腫瘍が発生した部位によって、主として胸膜中皮腫・心膜中皮腫・腹膜中皮腫に分類されます。

  • 胸膜中皮腫…胸膜(胸腔の表面の膜)から発生するがん 
  • 腹膜中皮腫…腹膜(腹部の臓器の外側などを覆う膜)から発生するがん
  • 心膜中皮腫…心膜(心臓を入れている袋)から発生するがん

このほか、発生頻度はまれですが、男性の精巣鞘膜から発生する精巣鞘膜中皮腫があります。

胸膜…肺を覆う臓側胸膜と胸壁を覆う壁側胸膜からなる。

中皮腫のなかでもっとも多いタイプは胸膜中皮腫で、中皮腫全体の80%~90%を占めます。大まかには、胸膜中皮腫が80%~90%、残りの10%~20%は腹膜中皮腫といわれています。心膜中皮腫と精巣鞘膜中皮腫は極めてまれな病気です。

研究

中皮腫の主な原因はアスベストへの曝露(有害物質にさらされること)です。中皮腫の80%~90%がアスベストを吸ったことにより発症するとされています。アスベスト以外の原因としては、外的刺激、放射線などが検討されています。

アスベストとは?

アスベスト(石綿)は繊維状ケイ酸塩鉱物の総称です。建築物の軽量耐火被覆材などとして、1960年代の高度成長期に多く使用されていました。しかし、健康障害を起こす恐れがあることから、現在は建築基準法などの法令の規制対象となっています。

中皮腫が発症する仕組みについては明らかになっていません。仮説としては、アスベスト繊維が中皮を刺激することや、活性酸素が分泌されることなどが推定されていますが、いずれも確立されたものではありません。

また、山口宇部医療センターと岡山大学の地球物理学者による共同研究が行われ、アスベスト小体のなかに濃縮されたラジウムが発がんの原因になるのではないかという論文が2009年に発表されています。しかし、この説も確立されたものではありません。

ヨーロッパ

中皮腫の年間死亡者数は、2015年では1,504人と厚生労働省より発表されています。[注1]しかし、実際にはこの人数に加えて、正確な診断がつかないまま亡くなった方もおられると想定されます。

また、世界的にみれば今後はさらに患者数が増えてくると予測されています。海外ではいまだに、規制なくアスベストが使われている国があるためです。一方、アスベストに関する規制が実施されているアメリカやヨーロッパの国々では、患者数は減少傾向にあります。

[注1]…都道府県(21大都市再掲)別にみた中皮腫による死亡数の年次推移(平成7年~27年)~人口動態統計(確定数)より

中皮腫は幅広い年代で発症する可能性がある病気ですが、実際には60代や70代の患者さんが多くみられます。

造船所

アスベストを扱う職業の方や、過去に従事していた経験がある方は、中皮腫を発症するリスクがあります。中皮腫を発症するリスクのある職業は、造船業、建築業、電気工事業などとされています。

このほか、アメリカでは中皮腫を発症するリスクがある職業に教職員も加えられています。これは、学校校舎にアスベストが使用されていたためです。また、過去に映画や演劇などの演出としてアスベストを使用していた時期があり、俳優にも発症リスクがあると考えられています。

日本における中皮腫の発症には地域差があり、アスベスト製品工場、造船施設や鉄道車両工場が多かった西日本に患者さんが多いとされています。また、アスベストを使う工場の周りに住んでいた方や、現在住んでいるという方には発症のリスクがあります。その他、地震などにより建物が倒壊したことでアスベストを吸ってしまうケースがあります。

中皮腫は、長期にわたってアスベストを吸い続けたり、多量に吸ったりすることにより、アスベストが体内に蓄積した結果として発症すると考えられています。アスベストを吸った量が少ない場合や、吸った期間が短い場合には、発症リスクが低いと考えられますが、はっきりしたことは証明されていません。

CT

中皮腫の主な症状は、息切れ、咳や痰、胸の痛みなどです。初期症状としては、一般的には息切れが多くみられます。胸の痛みは主に病気が進行してから現れる症状です。

このような症状はごく一般的なもので、中皮腫に特異的な症状ではありません。そこで、息切れなどの自覚症状から中皮腫を疑うことは難しいでしょう。

レントゲン検査やCT検査という画像検査を行うことで、たとえば胸膜中皮腫では多くの場合、胸水がたまっているかどうか、胸膜が肥厚しているかどうかということがわかります。ただし、胸水や胸膜肥厚は、中皮腫を発症していることが明らかになるような特徴ではありません。

レントゲン検査…エックス線撮影のこと。

CT検査…エックス線を使って体の断面を撮影する検査のこと。

細胞診とは、細胞を採取してがんを調べる検査です。たとえば、胸膜中皮腫の患者さんに対しては、胸水穿刺(きょうすいせんし)(胸水を吸引する目的で胸壁を針で突くこと)による胸水細胞診を行うことが多くあります。

生検(組織診)とは、組織を採取してがんを調べる検査です。患部の一部を切り取って調べるため、細胞診に比べて病気を正確に診断することができます。たとえば、胸膜中皮腫の生検(組織診)としては、胸腔鏡(きょうくうきょう)というカメラを胸腔のなかにいれる方法が多く選択されます。

胸膜中皮腫の確定診断をするには、全身麻酔下胸膜生検の実施が望ましいとされています。局所麻酔下に行う場合も有ります。しかし、全身の状態が悪い方は生検をせず、胸水の検査だけで診断することもあります。

咳

レントゲン検査は、中皮腫が発見されるきっかけとなることがあります。実際に、他の病気を調べるためにレントゲン検診を受けたところ、中皮腫がみつかったという方がいます。

アスベストを吸った経歴がある方は特に、半年に一度くらいの頻度でレントゲン検査やCT検査を受けることが望ましいとされています。

アスベストを吸うような仕事をしている方や、過去にアスベストに関する職歴がある方は、お住まいの都道府県の労働局の申請を経て「石綿健康管理手帳」を取得できる場合があります。手帳を取得すれば年に2回無料で検査を受けることが可能です。

先にも述べたように、中皮腫の症状である息切れや咳・痰は、他の病気にもみられる一般的な症状です。「息切れした」「痰が出た」といっても、すぐに中皮腫を疑う必要はありません。しかし、息切れや咳・痰が長く続く場合には、放置せず早めに受診するようにしてください。

初めに受診するとよい診療科は、内科や呼吸器内科です。レントゲンを撮るなどの検査を行って異常がみつかれば、中皮腫の発見に繋がる可能性があります。なお、検査の種類は医師が判断するものですので、診療では症状を伝えるようにしてください。

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