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前立腺がんのロボット支援手術とは 特徴や方法について

前立腺がんのロボット支援手術とは 特徴や方法について
東 剛司 先生

東京都立多摩総合医療センター 泌尿器科 部長

東 剛司 先生

目次
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この記事の最終更新は2018年07月11日です。

前立腺がんの手術には、腹部を切開して行う開腹手術と腹腔鏡下手術、手術用ロボットを操作させながら行うロボット支援手術があります。ロボット支援手術は患者さんの心身への負担や出血量が少ないことや、細やかな動きが可能といった特徴があります。そして日本では、2012年4月から、前立腺がんに対して保険適用でロボット支援手術を受けられるようになりました。

(前立腺がんの開腹手術については、記事1『前立腺がんの治療法について』をご参照ください)

今回は、東京都多摩総合医療センター 泌尿器科 医長 東剛司先生に、前立腺がんのロボット支援手術の特徴や術後の生活についてお話しを伺いました。

ロボット支援手術のイメージ
ロボット支援手術のイメージ

ロボット支援手術とは、患者さんに挿入した鉗子を手術用のロボットのアームが動かしながら行う手術です。前立腺前摘除術の手術の場合、患者さんの腹部に5ミリから12ミリ程度の穴を6箇所あけます。そこから鉗子を挿入し、ロボットロームが鉗子を操作します。しかし、ロボットが勝手に動くわけではなく、医師がロボットの操作を行います。なお、腹腔鏡手術の場合、腹部に挿入した鉗子を医師が直接操作します。

鉗子…物を引っ張ったり掴んだりするための手術器具。

腹腔鏡…腹部の表皮から腹部の内臓がおさまっているところに入れる内視鏡器具。

病院のベッドで寝ている中高年の男性

まず、前立腺がんの患者さんのなかでも、膀胱や直腸など前立腺の周囲の臓器へがんが広がっておらず、見込まれる余命が10年以上の方が手術の適応となります(前立腺癌診療ガイドライン2016年版より)。しかし、10年以上見込まれる方でも、患者さんが手術を希望し、手術に耐えることができると医師が判断した場合は手術を実施することもあります。

そして、多摩総合医療センターでは、手術が適応になる前立腺がんの患者さんのなかで、腹部の手術の既往歴を確認し、組織同士の癒着がない患者さんに対して、ロボット支援手術を実施しています。しかし、軽い癒着程度であればロボット支援手術の際に切り離すことが可能なため、大体の患者さんはロボット支援手術の適応となります。

既往歴…患者の過去の病歴や健康状態に関する記録。

前立腺がんのロボット支援手術の特徴には、以下のメリットとデメリットがあります。

術後の傷跡が小さく痛みが少ない

ロボット支援手術の傷跡のイメージ
ロボット支援手術の傷跡のイメージ

先にも述べたように、ロボット支援手術の場合、切開する範囲は5ミリメートルから12ミリメートルの穴を6か所ほどです。開腹手術と比較すると切開する範囲が小さく、術後の傷跡も目立ちにくいというメリットがあります。また、痛みも軽減されるため、術後早期の回復が期待できます。手術中の出血量も少なく、輸血が必要になる可能性も低いと思われます。

細やかな操作ができる

ロボット支援手術では、開腹手術よりも細やかな操作が可能です。また、人間の手では難しい利き手でない側の手で針を縫うことも可能です。

なお、ロボット支援手術は、患者さんの体内にカメラを挿入するため、術者は拡大視野で小さな組織までしっかりとみながら手術を行えることも、メリットの1つです。

開腹手術と同様にロボット支援手術でも、前立腺がんの手術には合併症の恐れがあります。手術中に括約筋の損傷があった場合は、術後に尿失禁といった合併症が発生します。また、前立腺の近くに存在する勃起に関係する神経が傷ついた場合は、勃起機能が低下する性機能障害が発生することもあります。

手術をする医師にとってのロボット支援手術特有のデメリットは、開腹手術のときのような触覚がないことです。そのため、ロボット支援手術は手術を行う医師の経験が重要です。

触覚…皮膚や粘膜にものが触れたときに感じる感覚。

ロボット支援手術を行う医師のスキルを上げるための方法とは

先に述べたように、ロボット支援手術は開腹手術のような触覚がないため、術者の経験や技量が必要です。そのため、ロボット支援手術のスキル向上のためにはさまざまな工夫がされています。たとえば、ロボット支援手術の場合、手術中の映像を必ず録画し残しています。それによって、自分が行った手術を振り返ることや、他の医師の手術をみて勉強することが可能です。また、ロボット支援手術のシミュレーションができる機械も存在します。

元気にスポーツをする中年男性

前立腺がんのロボット支援手術後の生活において、特別に注意すべき点はありません。そのため、いつも通りの生活を送ることが可能です。また、当院の場合、外来通院は3か月に1度程度です。

先生

前立腺がんの治療には多くの種類が存在します。そして、医療技術の進歩から、ロボットの支援手術を受けることで患者さんの心身への負担や、合併症を抑えることができる治療法も受けられるようになりました。

私はよく患者さんに「一番よい治療法を実施してください」といわれます。治療の種類も多く、どの治療法を選べばよいのか悩んでしまうからでしょう。しかし、患者さん一人ひとりによって考え方や生活環境は異なるため、適した治療法もそれぞれ異なります。そのため、治療法を決めるときは「一緒に考え悩みましょう」とお伝えしています。前立腺がんの治療では、患者さんと医師が一緒にじっくりと考え、適した治療法を選ぶことが大切です。

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