日本において、高齢化の進行と医学の発展によって平均余命は延伸し、障害を持ちながら生活する方が徐々に増加しています。そのような中、疾病や怪我の治療のみならず、患者さんの能力改善に取り組むリハビリテーションの必要性は徐々に高まっています。
*詳しくは慢性期.comのページをご覧ください。
誤解を恐れずにいえば、人としての尊厳は「動くこと(活動性)」と「精神活動」で保たれます。
もし、家族が脳梗塞で倒れたとしたら、あなたは何を気にかけるでしょうか。まず、「命は助かるのか?」、それから「意識は保たれるのか?」「動けるのか?」、治療が終われば、「歩けるのか?」「自分で食事ができるのか?」「トイレには行けるのか?」−このような疑問が湧いてくると思います。これらは、主に人の活動性に関連するものです。
では、人の活動性は、どのように改善されるのでしょう。手術か、それとも投薬でしょうか。私はここで、「リハビリテーション治療が活動性を改善する」ことを強く主張したいと思います。具体的には「起立」と「運動」です。まずはこれらが大切です。
人が寝たきりの状態を続けたら、どうなるのでしょう。
重力の少ない状態が体にどのような影響を及ぼすかを調べる「ダラス・ベッドレスト実験」では、数週間〜数か月間の微小重力環境(重力の少ない状態)によって、骨密度低下や心肺機能・筋力の低下、精神機能低下など、さまざまな影響が現れることが指摘されています。
もし病院内のベッドで患者さんが長期間寝たきりでいたなら、このような種々の影響が現れたとしても何らおかしくはありません。リハビリテーション医学の観点からは、起立や運動による負荷よりも、安静にしすぎることのほうが恐ろしいのです。ですから、リハビリテーション治療中は患者さんの体を積極的に起こし、適切な量の運動を行います。
リハビリテーション医療を行う際は、医師による診察、検査、診断は大前提です。そして、熟練した理学療法士、作業療法士による訓練、さらには熟練したリハビリテーション看護が揃って、初めて「適切なリハビリテーション医療」が成立します。
運動をすると骨格筋から血中にマイオカイン*が分泌され、免疫細胞を呼び寄せ、炎症を抑えたり、筋肉へのインスリン作用を改善させたりします。このように、筋肉はマイオカインによって体全体の健康を調節しており、運動がさまざまな病気に対する治療効果をもたらすといわれています。
マイオカイン・・・骨格筋から分泌されるサイトカイン(細胞から分泌され、細胞間の相互作用に関与するタンパクの総称)
和歌山県立医科大学 リハビリテーション医学 教授
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