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中部ろうさい病院で行うオンライン両立支援

中部ろうさい病院で行うオンライン両立支援
中島 英太郎 先生

独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 糖尿病・内分泌内科部長

中島 英太郎 先生

パソコンやスマートフォンなどを通して医師の診察を受けることができる「オンライン診療(遠隔診療)」が、2018年から保険診療として認められるようになりました。中部ろうさい病院では、忙しくてなかなか通院ができない糖尿病患者さんに対する診療や、主治医と職場との情報交換を、オンラインで行う「オンライン両立支援」を開始しています。

今回は中部ろうさい病院 糖尿病内分泌内科・糖尿病センター部長である中島英太郎先生に、同病院におけるオンライン両立支援の取り組みについてお話を伺いました。

両立支援手帳オンライン化の取り組み

糖尿病治療では、病気の進行による重大な合併症*を防ぐために、治療を継続して血糖値をコントロールすることが、何よりも重要です。しかし、仕事が忙しいなどを理由に、通院を中断してしまう方が多いという現状があります。

それを防ぐために、当院では、糖尿病治療と仕事の両立支援を目的として、病院に来なくても主治医の診療が受けられる「オンライン診療(遠隔診療)」を活用しています。オンライン診療を導入することで、仕事が忙しくて病院に来る時間を確保できない方も、通院を継続できるようなサポートを行うことが可能です。

*合併症…糖尿病によって引き起こされる、腎不全末梢神経障害、視力障害などの病気のこと

▲就労と糖尿病治療 両立支援手帳
▲就労と糖尿病治療 両立支援手帳

当院が行っている糖尿病治療と仕事の両立支援では、「就労と糖尿病治療 両立支援手帳」を使用します。この両立支援手帳は、主治医と職場とで、患者さんの病状や今後の治療方針、職場へのお願いなどに関する情報交換を行うためのものです。両立支援手帳を活用することで、「上司が糖尿病の状況を理解してくれるようになった」、「自分から言えないことを上司に伝えられるようになった」などのお声をいただいています。

しかし、両立支援手帳のやり取りに、数か月以上かかるという課題もありました。この課題を解決するため、オンライン診療のシステムに両立支援手帳の機能を組み込み、主治医と職場でEメールのようにやり取りができるようにしました。両立支援手帳をデジタル化することで、コミュニケーションが円滑になり、よりスムーズな両立支援が可能になると考えています。

オンライン診療を導入するうえで重要視したのが、多くの方に使っていただけるよう、独自のシステムは使用せず、一般的に広く使われているシステムを使用するということです。そこで当院では、患者さんがスマートフォンで利用できるMICIN社のcuronというオンライン診療システムを導入しました。予約・問診送付・診察・支払いといった基本的な機能に加えて、デジタル化した両立支援手帳の機能も組み込んでいます。

血糖値測定ツール

糖尿病治療のメインは、血糖値のコントロールです。当院では血糖値のコントロールを正確に行うために、患者さんご自身で簡単に血糖値を測定できるツールを使用しています。そのツールとは、あらかじめセンサーが埋め込まれているパッチを患者さんの腕に貼り付けておき、そのパッチに機械をかざすだけでいつでもリアルタイムに血糖値を測定できるというものです。センサーは2週間連続で血糖値を自動的に測定・記録できるため、通院が困難な方にとって、非常に利便性の高い装置です。また、パッチを貼り付けたまま入浴することも可能なため、患者さんの負担はさほどないと思います。

中部ろうさい病院におけるオンライン診療の様子
▲中部ろうさい病院におけるオンライン診療の様子

オンライン診療の流れをご説明します。まず、あらかじめ設定された診療予約日時に、主治医から患者さんのタブレットまたはスマートフォンに連絡をします。次に、診療を行い、血糖値の変動や残薬の確認、薬剤の調整などをします。患者さんの様子を診ながら、緊急受診の必要性を判断することも大切です。診療時間は約3〜5分です。診療が終わったら、診療費をクレジットカードで決済していただき、処方箋を送付します。最後に、患者さんが処方箋を調剤薬局に持って行き、お薬を受け取っていただいて完了です。

診療報酬上、オンライン診療では3か月に1回は、病院に来ていただく必要があります。

当院では、オンライン診療を活用した糖尿病治療と仕事の両立支援について、患者さんの満足度や効果を調査するためのアンケートを行いました。

15名の患者さんに対し、オンライン診療の満足度を調査した結果、「大変満足・おおむね満足」と回答した患者さんは12名いらっしゃいました。

また、対面診療と比較したオンライン診療の満足度として、「頻度を増やしたい・この頻度で利用を継続したい」と回答した患者さんは12名で、「利用したくない」と回答した患者さんはいらっしゃいませんでした。

12名の職場の方に対し、主にオンラインによる両立支援手帳のやり取りに関する満足度を調査した結果、「大変満足・おおむね満足」と回答した方は7名いらっしゃいました。今後もオンライン両立支援を利用したい(頻度を増やしたい・現状で継続利用したい)という意見も多くみられました。医師とコミュニケーションが取れたか、という質問に対しては、全ての方が「十分に取れた・おおむね取れた」と回答しています。

よかった点としては、「従業員の情報収集の簡易化」、「医療機関との連携向上」、一方の不満点としては「機器準備・操作が複雑」、「個人情報の取り扱い」という回答が多くみられました。

これらの調査結果から、オンライン両立支援に対する患者さんと職場のニーズは、高いことが分かりました。これを受けて、さらに利便性の高いものにすべく、システムを改善していこうと考えています。

また、糖尿病に限らず、がん脳卒中など、ほかの病気との両立支援においても、オンライン両立支援は有効な手段となるのではないかと考え、導入を検討しています。

中島先生

糖尿病に対して、あまり重大な病気というイメージを抱いていない方は、患者さんご自身を含め、数多くいらっしゃいます。

糖尿病は、治療を継続して行えば、血糖値をコントロールすることができ、健常者と同じ生活を送ることが可能な病気です。しかし、ひとたび治療を中断すると、将来重い合併症を引き起こす恐れがあります。

ですから糖尿病治療で大切なことは、治療を中断しないことです。「仕事が忙しくて通院する時間がない」、「職場に通院のための休暇を申し出ても理解が得られない」などお困りのことがあっても、決して治療を中断しないでください。

当院は、患者さんが治療と仕事を両立するための支援に全力で取り組んでいますので、一度ご相談ください。

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  • 独立行政法人労働者健康安全機構 中部労災病院 糖尿病・内分泌内科部長

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