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がんになっても治療しながら仕事はできる?岡山ろうさい病院における両立支援の事例・課題・展望

がんになっても治療しながら仕事はできる?岡山ろうさい病院における両立支援の事例・課題・展望
石崎 雅浩 先生

岡山ろうさい病院 外科 両立支援部

石崎 雅浩 先生

目次
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記事1『がん治療と仕事の両立を支援する岡山ろうさい病院の取り組み』では、岡山ろうさい病院における両立支援について、同院治療就労両立支援部第二部長/消化器病センター長の石崎雅浩先生にお話しいただきました。引き続き記事2では、同院における両立支援の実際の事例を交え、両立支援において検討すべき課題や、同院での両立支援に対する展望について、石崎雅浩先生にお伺いしました。

岡山ろうさい病院でがん患者さんへの両立支援を行った事例

ステージⅠAの胃がんと診断された作業職の50代男性

当院にてステージⅠAの胃がんと診断され、手術後に両立支援を受けて職場に戻られた50代男性の事例を紹介します。

がんと診断後、当院で手術を行いました。この患者さんの場合、早期段階でがんを発見できたので、術後の経過は良好でした。術後補助化学療法を行う必要がなく、術後約1か月後に職場復職となりました。復帰にあたっては、当院で作成した治療計画書を患者さんに渡して、患者さんから直接職場に提出していただきました。この患者さんの職場は、病気による休職に理解があったため、復職もスムーズに進めることができました。

復帰後、患者さんは、術前とほとんど同じように仕事ができており、現在も仕事を続けています。

ステージⅣのS状結腸がんと診断された事務職の60代男性

次に、ステージⅣのS状結腸がんで、肝転移がみつかった患者さんの事例を紹介します。

この患者さんの場合は進行がんであったため、S状結腸切除術を行った後に術後補助化学療法が必要でした。患者さんは、短期入院をして化学療法を受けながら、仕事を続けました。この患者さんの職場は、がん患者さんの就労に理解があり、化学療法の副作用で患者さんが体調不良の際には出勤時間や勤務時間を調節するなどの配慮をしてくれたため、患者さんは治療を受けながら仕事を継続できました。

この患者さんは、がん看護専門看護師の支援を受けながら化学療法を続けていたところ、ある日突然職場の事業が終了となり、職を失いました。現在は、両立支援コーディネーターが、病状の経過観察をしながら、仕事探しのため最寄りのハローワークに紹介し、支援を行っています。

両立支援の必要性

長期にわたりがん治療を受ける患者さんが増えている

前項の事例でご紹介したように、がんの種類によって状況は異なりますが、治療を受けながら仕事を続けている方がいらっしゃいます。抗がん剤や手術の進歩に伴い、がんは慢性疾患のひとつになりつつあります。今後、長期にわたってがん治療を受ける患者さんがますます増えることでしょう。だからこそ、よりいっそう、両立支援を社会的に推進していくことが大事になると考えています。両立支援を受けるために必要な資格や基準はありません。当院は、被雇用者、すなわち会社に勤めている方だけではなく、事業主や経営者の方々も含めて、広く両立支援を行っていく方針です。

両立支援を受けるメリットとは

長期にわたる治療生活でいつでも相談できる相手がいるということ

がんの手術後に補助化学療法が必要になった場合、退院後も長期にわたる治療生活が続きます。化学療法の副作用に不安を感じたり、実際に副作用に悩んだりする患者さんは少なくありません。また、手術後に何らかの合併症が残ってしまった場合、日常生活の援助が必要になることもあります。そのような患者さんに対して、両立支援コーディネーターが寄り添いながら、治療薬の副作用や合併症対策について相談を受け、支援します。

岡山ろうさい病院における両立支援の課題と展望

産業医がいない企業とのコミュニケーションの取り方が課題

両立支援における当面の課題は、産業医が在籍していない企業とのコミュニケーションの取り方です。日本では、下図のようなトライアングル型両立支援のモデルをベースに両立支援を行うことが推奨されています。

産業医が在籍している企業であれば、このトライアングル型両立支援のモデルに従い、産業医を通して企業とコミュニケーションを取ることができます。しかしながら、産業医が在籍していない中小の企業の場合は、両立支援の窓口がはっきりせず、トライアングル型両立支援を行うことが困難となっています。現行のモデルでは、産業医が在籍していない企業に勤める患者さんに両立支援を行う場合、病院側がまずどこにアクセスすべきかが定まっていないのが現状です。

仕事と治療の両立が当たり前になる社会を目指す

今後、両立支援を日本に普及させるためには、社会全体にがん患者さんの両立支援を進める雰囲気を作ることが大事だと考えます。具体的には、自分ががんになったときに上司や同僚に気軽に相談できる雰囲気や、日ごろから会社の仲間の体調を気にかける雰囲気を作ることが大切です。

日本でも徐々に両立支援への理解が広まってきていますが、それでも、がんであることを職場に打ち明けづらい状況がまだあります。社会に対して仕事とがん治療の両立を啓発する一例として、私が感激した日本対がん協会の取り組みを紹介します。

がんの征圧を目指して設立された日本対がん協会では、がんを治療しながら働く方を「ながらワーカー」と呼び、「ながらワーカー」を応援するための就労相談や情報提供、広報活動などを行っています。社会全体が「ながらワーカー」のような方を当たり前と感じられる社会になれば、本邦における両立支援はさらに発展を遂げていくと思います。

これからも当院は、両立支援を積極的に啓発し、仕事と治療の両立が当たり前になる社会を目指したいと考えます。

がんと診断されても仕事を辞めないで―がん患者さんへのメッセージ

近年では治療法の進歩によって、がんを治すことや、がんと共に生きることが不可能ではなくなってきています。ですから、がんと診断されても、治療のためにすぐに仕事を辞めないといけないという考え方は、正しい考え方ではないと思います。まず立ち止まってよく考えてから決めることも可能です。両立支援を利用すれば、治療をしながら仕事を続けられることもあります。がんの治療をするうえで、仕事について悩んだりしたときは、当院にお声がけください。当院の両立支援チームが、あなたをサポートします。