院長インタビュー

患者さんが最期まで自分らしく生きるために――心に寄り添った医療を提供するヴォーリズ記念病院

患者さんが最期まで自分らしく生きるために――心に寄り添った医療を提供するヴォーリズ記念病院
五月女 隆男 先生

ヴォーリズ記念病院 院長

五月女 隆男 先生

目次
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ヴォーリズ記念病院は近江兄弟社の創設者、W.M.ヴォーリズのキリスト教精神に基づき、滋賀県近江八幡市で、病気の予防から人生の最期のときまで対応できる医療を提供し続けています。

医療、福祉面でどのように地域に貢献しているのか、病院の取り組みについて病院長の五月女隆男院長にお話を伺いました。

ヴォーリズ記念病院外観
ヴォーリズ記念病院外観

当院の歴史は、1918年5月に結核療養所「近江療養院」として開院したことから始まります。前身である近江療養院は、ウィリアム・メレル・ヴォーリズによって開院しました。彼は、この近江八幡の土地に英語教師として来日後、キリスト教の伝道のかたわら、建設事務所を設立して生活していました。もともと療養院の建築を計画していたヴォーリズは、キリスト教に改宗した若い青年が結核のため亡くなっていくのを目の当たりにし、その経験から療養院の建築を急ぎ、結核に苦しむ患者さんが静かな環境で心穏やかに療養に専念できる近江療養院を開院したといわれています。

当院の原点はヴォーリズの意思でもある、患者さんに生活の場を用意し、心に寄り添った医療の提供です。我々はその意思を継ぎ、患者さんが住み慣れた地域で最期のときまで生き生きと生活できるように、患者さんやご家族の心に寄り添ったケアを提供することを目指しています。

当院は急性期医療から回復期リハビリテーション、慢性期医療、そして人生の最終段階における医療(終末期医療)*の患者さんまで幅広く対応できる体制を整えています。病棟としては、一般病棟、急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟、療養病棟のほか、ホスピス(緩和ケア)病棟があり、これらをうまく融和させながら、切れ目のない医療サービスを提供しています。

さらに、公益財団法人近江兄弟社が運営する老健センターやケアハウスもあるので、福祉面を含めて、医療から介護、福祉まで緊密な連携のもと医療を提供しています。

*平成27年3月に厚生労働省 検討会において終末期医療から名称変更

当院の特徴的な取り組みのひとつにホスピス希望館でのケアがあります。ホスピス希望館は、患者さんの最期のときを安らかで穏やかな時間となるように支援しています。

ホスピス希望館では、痛みなどの体の症状を緩和するだけでなく、患者さんの心に寄り添い、心の痛みを軽くするお手伝いもしています。最期までその方がその方らしい生活を送っていただくために、患者さんそしてご家族の心に寄り添ったケアを提供していきます。

看護師の皆さん
看護師の皆さん

地域の先生方にも、当院のホスピス希望館を知っていただくために、さまざまな取り組みをしています。

2017年8月には、近江八幡市立総合医療センターに外来を設置しました。近江八幡市立総合医療センターで治療を受けている患者さんで、病気の治療から緩和をメインにしたケアを受けたいと考えていらっしゃる方もいます。近江八幡市立総合医療センターとも連携を強め、患者さんが適切な時期からケアを受けることができるようにしたいと思っています。

また、地域のほかの医療機関の先生方にもホスピス希望館を知っていただくために、ご挨拶に伺った際にはホスピス希望館の特徴をお話しして、何でもご相談くださいと伝えています。

地域の先生方が相談しやすい環境を作り、患者さんが心穏やかに療養できるように尽力していきます。

地域療養支援部の皆さん
地域療養支援部の皆さん

地域の皆さんが最期まで住み慣れた地域で自分らしく生活を送ることができるように、地域包括ケアシステムの構築が推奨されています。当院は地域のなかで、回復期リハビリテーション、慢性期を担い、患者さんが自宅に戻ったあとも医療の面からサポートできるように訪問診療を行っています。近年では訪問診療を受ける患者さんが増加傾向にあり、在宅の患者さんを支える役割が大きくなっていると思います。それは、これからの病院のあり方の1つではないでしょうか。

医療の提供だけでなく、市民公開講座など病気の啓発活動にも取り組んでいます。地域のコミュニティに医師や看護師などの医療スタッフが出向いて、講演や健康指導などを行っています。

訪問診療の様子
訪問診療の様子

当院はもともと結核の療養所として開院しました。創設者のヴォーリズは、結核患者さんが療養に専念できるように、療養所の設立を決めました。患者さんのことを考え、寄り添うために行動するその精神は私たちヴォーリズ記念病院の原点でもあります。

私たちはただ病気を治すだけでなく、患者さんの心を支え、寄り添っていきたいです。

たとえば、受診した診療科では専門にしていない症状の患者さんでも必ず受け入れ、総合的に診療するようにしています。

特に高齢の方は複数の病気を持っていたり、治療を進めていたりしています。がんの診療に、患者さんそれぞれの体質などに合わせた治療法を提案するオーダーメイド治療があるように、高齢の患者さんや人生における最終段階の医療(終末期医療)*を受けている患者さん向けのオーダーメイドの治療を提供したいと思っています。

*平成27年3月に厚生労働省 検討会において終末期医療から名称変更

超高齢社会を迎え、老いからくる不調を抱えながら生活を送る方が増えてきました。

これからは体の不調や病気があっても、毎日を生き生きと満足して過ごすことができる医療の提供が理想になると思っています。病気は病気そのものと心の痛みのふたつが重なり病気になるのだと思います。病気そのものを治すだけが医療ではなく、患者さんの心に寄り添い、充実した毎日を送っていただくためのサポートをすることも医療のひとつではないでしょうか。

どんな障害があっても、人生の最期のときまで自分らしく生きがいを持って生きられるよう支援することが、私たちの理想です。

カンファレンスの様子
カンファレンスの様子

私は2019年4月に院長に就任後、週に1回の院長回診を始めました。診療科にかかわらず、入院患者さん全員にお会いするように努めています。そのとき、私は患者さんに必ず「私のほうを見て笑ってください」と伝えています。そうすると、必ず患者さんも笑顔を返してくれます。回を重ねるごとに、病室に入ったときから患者さんが笑顔で迎えてくれるようになりました。なかには、反応の薄かった患者さんがニコニコの笑顔を向けてくれることも増えてきました。患者さんの笑顔を見ることで私も元気をもらっています。患者さんには病気を抱えながらも、笑って毎日を過ごしてほしいです。そして、その笑顔を見るたびに、笑顔でご自宅へ戻れるようにしてあげたいと、いつも思います。

主治医ではない患者さんに対し、私ができることは少ないかもしれません。ですが、患者さんのもとを訪れ、声をかけて励ますことはできます。人生の最期のときまで心に寄り添い、その方らしい生活を送るためのサポートにより力を注いでいきます。

五月女隆男先生

若手医師の皆さんには、自分の専門分野以外にもいろいろなことに興味を持ってほしいと思います。私はもともと消化器内科から医師のキャリアをスタートしました。その後は集中治療、透析治療、救急医療と診療科にとらわれず、さまざまな分野にチャレンジしてきました。

皆さんにも初めに入った医局にとらわれることなく、興味が持ったことにどんどん挑戦してほしいと思います。自分から挑戦する機会や場所を探し求める医師であってください。

患者さんが適切でよりよい社会生活、療養生活を送れるように医療、保健、福祉の分野を統合して支援していきます。

患者さんが自分らしく生き生きと、最期まで生を全うしていただくのが、私たちの願いです。かかりつけ医にかかるように、体の不調を感じたらお気軽に来院してください。

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