院長インタビュー

宝塚市の急性期医療を支える、宝塚市立病院の救急医療への取り組み

宝塚市の急性期医療を支える、宝塚市立病院の救急医療への取り組み
メディカルノート編集部  [取材]

メディカルノート編集部 [取材]

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

兵庫県宝塚市にある宝塚市立病院は1984年に開院した公立病院で、宝塚市を中心にした医療圏で、主に急性期・高度急性期医療を支えています。患者に寄り添い、地域から信頼される病院を目指す同院が展開する救急医療について、特命病院長(救急診療担当)兼集中治療救急室長兼救急医療センター長の今中 秀光(いまなか ひであき)先生に伺いました。

MN

当院が開院したのは1984年です。開院以来、最新の医療機器の導入やシステムの更新、診療部門のセンター化などを進め、地域の皆さんに充実した医療サービスが提供できる体制を整備してきました。現在は消化器内科や整形外科など31の診療科を有し、病床数は436床です。また、兵庫県指定がん診療連携拠点病院、兵庫県指定災害拠点病院、兵庫県指定肝疾患専門医療機関などに指定・認定されているほか、兵庫県指定救急告示病院として二次救急(入院や手術を要する重症患者への救急医療)を担っています。

宝塚市は歴史的に、大阪の商人が別宅をつくったと言われているほど住みやすいエリアです。現在(2024年時点)の人口は約22.1万人で、数年前からやや減少傾向にあります。高齢化が徐々に進んでおり、2040年の人口構成においては65歳以上の方が占める割合は4割近くになると予想されています。

宝塚市は近隣の川西市と合わせても病院が少なく、市内では当院が唯一の公的病院であり、中核的な役割を担う病院は他に5つほどです。そのなかで当院は救急医療の中心を担っており、救急車で搬送されてくる患者さんの数は年々増加し、2023年には年間で約5,500件*にも達し、市内の約6割にあたる救急車を受け入れています。

患者さんは心肺停止や重症循環不全、重症呼吸不全、重症感染症(敗血症)など、集中治療管理を必要とする重篤な症状の方も多く、2023年(1月~12月)は、168件が搬送されてきた段階で心肺停止の状況でした。こうした救急医療を担っているのが救急科で、各診療科と連携を図りながら、一人でも多くの患者さんを救命するために診療にあたっています。

*2023年度(1月~12月)救急搬送件数……5,487件

MN

このような状況のなか、当院では救急の患者さんをよりしっかりと診られる体制づくりを進めています。

まず、2015年には救急医療センターを開設し、重症の患者さんを集中的に治療するハイケアユニット(HCU)を8床設置して救急患者の受け入れのキャパシティを増やしました。さらに、地域のかかりつけの先生と私の間ですぐに通話できるホットラインを5年前に作り、当院で受け入れが必要な患者さんの相談を直接していただける仕組みも作っています。ホットラインは大変好評で、現在は月に100件ほどのお問い合わせをいただいています。

救急の患者さんへの各診療科ごとの取り組みも進化を続けています。たとえば一刻を争う脳卒中の患者さんの場合、宝塚市消防の救急隊と連携して当院の医師と救急隊がドクターカーに同乗し、患者さんのお宅に伺う救急ワークステーションを、平日限定で稼働させています。また2023年には、救急隊から当院の脳神経外科の医師に直接連絡が入る“脳神経外科ホットライン”を作りました。これにより、日本脳卒中学会から一次脳卒中センターに指定され、血栓溶解(t-PA)療法、血栓回収療法といった治療を迅速に行える当院へ、患者さんを素早く搬送できるようなっています。実際、ホットライン開設後はそれ以前に比べ脳卒中の患者さんの搬送数が約2倍に増えました。

また消化器内視鏡センターでは24時間体制で医師が常駐しており、消化管の出血から肝臓・胆嚢に関する病気まで、幅広い領域における診療が可能です。これれらの臓器に関わる救急の患者さんは非常に多くなっています。

当院に救急搬送されたご高齢の患者さんの多くは、今すぐ治療が必要な病気だけでなく、他にも病気をお持ちの方がたくさんいらっしゃいます。当院は多くの診療科を持つ総合病院なので、そのような患者さんに対して各診療科が強く連携して適した治療を行っています。

当院は理念に掲げているように、患者さんに寄り添い、地域から信頼される病院を目指しています。私は当院の救急診療の責任者として、宝塚市やその近隣にお住いの皆さんが安心して頼っていただける救急医療を行っていく所存です。また、当院での治療を終えた患者さんには、少しでも早く自宅で元気に過ごしていただけるよう努力を重ねてまいりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

*病床数や診療科、提供する医療の内容等についての情報は全て、2024年6月時点のものです。

実績のある医師をチェック

Icon unfold more