関節に痛みや腫れなどの症状が起こる関節リウマチ。近年は治療薬が進歩し、適切な診断・治療を行うことで症状のコントロールを目指せる時代になってきています。しかし関節リウマチと診断されて「仕事や家事は続けられるのか」「副作用は大丈夫なのか」などさまざまな不安を抱えている方もいらっしゃるかもしれません。「患者さんに安心して治療を受けてもらいたいという思いを常に持ち日々の診療にあたっている」と話す山口県済生会下関総合病院 整形外科 科長・院長補佐の関 万成先生に、関節リウマチの特徴や治療の進歩、診療で大切にしていることなどを伺いました。
関節リウマチは、免疫の異常により関節に炎症が起こる病気です。主な症状として、関節の痛みや腫れ、こわばりなどが挙げられます。症状が出るのは手足の指や手首などの小さな関節からのことが多いですが、肩や肘、膝、足首などの大きな関節に症状が現れることもあります。進行すると関節の破壊・変形が生じ、機能障害に至ります。
関節リウマチでは、関節以外の症状が起こり得ることも特徴です。だるさや食欲低下、微熱といった全身症状のほか、皮膚や目、肺などにも症状が出ることがあります。
原因は明らかにはなっていませんが、遺伝的な要因に、喫煙や歯周病などの環境的な要因が加わり発症につながると考えられています。
関節リウマチと似た症状が出る病気の1つに、DIP関節(指先に最も近い関節)が変形する“へバーデン結節”があります。受診時に関節リウマチかもしれないと心配される方もいらっしゃいますが、関節リウマチではDIP関節に症状が起こることは基本的にはありません。そのほか、変形性関節症や痛風発作、偽痛風発作などでも関節リウマチと似たような症状が起こるため、患者さんが受診された際にはこれらの病気の可能性も念頭に置き診断にあたっています。
従来から、関節リウマチは30~40代の女性に多い病気といわれてきました。しかし人口の高齢化に伴い、近年は高齢で発症する患者さんが増えています。2026年現在、日本では60代に発症する方が最も多くなっています。男女比では、女性のほうが男性の3倍程度多いのですが、高齢の患者さんでは男性の割合が増えているともいわれています。
高齢で発症する関節リウマチでは、手指や手首の小さな関節よりも、肩や膝などの大きな関節から強い症状が現れやすい特徴があります。単に加齢に伴う関節痛だと考えて発見が遅れることもあり、注意が必要です。
関節リウマチの治療は、薬物療法、手術治療、リハビリテーション、患者教育の4本柱で行いますが、その中でも治療の中心となるのは薬物療法です。薬物療法の進歩によって、関節リウマチは以前に比べて症状をコントロールしやすい病気になり、“寛解(病気の活動性が低く、症状が落ち着いている状態)”を目指せるようになってきています。
薬物療法における第1選択薬は、メトトレキサートという抗リウマチ薬です。免疫の異常による炎症を抑え、関節の腫れや痛み、関節破壊を抑えることを目的に使用します。副作用によりメトトレキサートの服用を続けることが難しい場合や一定期間内に十分な改善が得られない場合には、次の段階として生物学的製剤やJAK阻害薬の使用を検討します。
生物学的製剤は注射で投与する薬剤です。薬によって投与間隔は異なり、医療機関で点滴により投与するものもあれば、患者さんが自己注射できるものもあります。一方、JAK阻害薬は毎日服用する内服薬です。いずれも炎症や関節の破壊を抑える高い効果が期待できます。なお、免疫のはたらきを抑制する作用があるため、感染症にかかりやすくなる点には注意が必要ですが、定期的な受診により適切に管理することが可能です。
薬物療法では、関節リウマチの診療ガイドラインに沿って治療を進めることが基本です。ただし、同じ関節リウマチでも患者さんごとに適した治療法は異なるため、あらゆる角度から患者さん一人ひとりの状況を捉えて治療方針を検討することが大切です。そのためには、血液検査や関節超音波検査(関節エコー)などで病気の活動性を確認するほか、併存症の有無や状態を確認するなど、全身状態をくまなく把握したうえで治療を進めます。
そのうえで、年齢や体力、日常生活の状況、通院できる頻度、経済的な事情なども踏まえて、患者さんに合った治療を考えていきます。たとえば、仕事などで頻回に通院することが難しい方であれば、投与間隔の長い注射薬がよい選択肢になることがあります。ご高齢で自己注射が難しい方であれば、通院時に医療機関で注射を受ける方法が合う場合もあるでしょう。
治療を続けられるかどうかは、患者さんにとって非常に大切な問題です。こちらから無理に治療を押しつけるのではなく、使用量や投与間隔、治療期間、費用などを含めて、どのような方法なら続けやすいかを一緒に考えていきます。患者さんとよく相談しながら、共通の意識を持って治療を進めていくことが大切だと考えています。
関節の破壊が進行し、日常生活に支障をきたしている場合には、痛みの改善や機能回復を目的に手術治療を行います。代表的な手術には、人工関節置換術や関節形成術などがあり、関節の部位、変形の程度、患者さんの年齢や生活状況などに応じて手術方法を決定します。なお、近年の人工膝関節全置換術は、一般的に約9割の方が術後15年、20年と長期にわたり良好な状態を保てるようになってきています。当院では、コンピューター支援手術の1つであるナビゲーションシステムを用いた手術を行っています。コンピューター支援手術の大きなメリットは、術前に立てた計画をより正確に再現しやすいことです。人工関節をどの位置に、どの角度で設置するかは、術後の関節の機能に関わる重要な要素です。コンピューター支援手術によって、より正確な手術ができるようになっていると実感しています。
関節リウマチでは、関節の動きや筋力を維持するためのリハビリテーションも大切です。関節リウマチの患者さんはサルコペニアの合併が多いといわれているため、当院では筋力訓練の指導を積極的に行っています。関節の破壊が進行して機能障害がある患者さんには装具などの作成も行います。
私は日頃「患者さんに安心して治療を受けてもらいたい」という思いを持ちながら、関節リウマチの診療にあたっています。関節リウマチと診断されたばかりの患者さんは、多くの不安を抱えていらっしゃいます。今はインターネット上に無数に情報が氾濫している時代で、関節リウマチはどのような病気で、どのような薬があるのかなどを自由に調べることができます。しかし、中には誤った情報も数多く存在しており、何が正しいのかを患者さん自身で判断するのは簡単ではありません。だからこそ、診療の場では患者さんの不安を払拭できるよう、今の状態や治療の選択肢について分かりやすくお伝えすることを心がけています。
私が特に大切にしているのが「大丈夫ですよ」という声がけです。関節リウマチは、適切な診断と治療によって十分にコントロールすることを目指せる時代になってきているという事実を患者さんにしっかりとお伝えすることで、安心して治療に進んでもらうことを大切にしています。もちろん、関節リウマチは現時点で完全に治る病気とはいえません。合併症などで使える薬が限られたり、病気の活動性が非常に強く治療が難しかったりするケースもあります。そうした場合でも、しっかりと治療の見通しをお伝えして、「今は選択肢が増え、手段がありますから、少なくとも今よりよくなるように治療していきましょう。頑張っていきましょう。大丈夫ですよ」とお伝えするように心がけています。やはり、まずは患者さんに信頼していただき、少しでも前向きな気持ちで治療に臨んでいただくこと。その信頼に応えられるように、適切な医療を提供していくことが何よりも重要だと私は考えています。
関節リウマチは早期に診断し、適切な治療を始めることが大切な病気です。関節の痛みや腫れ、こわばりが続く場合には早めに医療機関を受診していただくことをおすすめします。まずはかかりつけ医や近くの整形外科に相談されるとよいと思います。必要に応じて、専門的な検査・治療が可能な医療機関へ紹介してもらうこともできます。
適切な治療を受けることによって、病気になる前と同じような日常生活を目指せる時代になっています。不安な症状がある方はまずは医師に相談してください。
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