がんあくえきしつ

がん悪液質

最終更新日:
2021年10月15日
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2021/10/15
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概要

がん悪液質(あくえきしつ)とは、がんの進行に伴って出現する、筋肉量の持続的な減少を特徴とする状態で、体重減少、食欲不振、倦怠感などの症状を伴います。飢餓状態でも体重減少を伴いますが、がん悪液質の場合は、筋肉の分解や安静時のエネルギー消費が高まることによって体重が減少します。

がん悪液質は進行がん患者の約80%に認められたとの報告があります。がん悪液質による体重減少と食欲低下などの症状は、患者の生活の質を低下させるだけでなく、抗がん剤の治療効果を弱めたり、副作用を強めたり、さらには寿命にまで影響を及ぼすこともあります。

原因

がん悪液質のメカニズムはいまだ不明な点が多いですが、近年少しずつ分かってきたことがあります。

がんから放出されるタンパク質を分解するように誘導する因子が関係することや、脳の中にあるホルモンをコントロールする部位の異常が分かってきています。中でもがん細胞から分泌される炎症性サイトカインは、代謝の異常や食欲不振に関連していると考えられています。最近ではさまざまな伝達物質を介した炎症の現れが悪液質なのではないかともいわれています。

一般に、がんの進行により、亡くなるまで徐々に栄養不良になっていきます。がんの種類によって、悪液質が生じやすいものや悪液質が生じにくいものがあり、生じたあとの進行パターンもさまざまです。

症状

がん悪液質の特徴的な症状には体重減少や食欲不振があります。

全身性の炎症によって筋肉や脂肪組織が分解され、食欲が抑えられるなどした結果、体重減少を生じます。

悪液質による栄養不良には、筋肉の分解促進、血糖を下げるインスリンのはたらきの低下、脂質の分解の促進など全身の炎症によるさまざまな代謝異常が関係しています。この代謝異常が進行すると、栄養療法を行っても有効な治療にならず栄養不良が改善されなくなります。

食欲がないなかで、「きちんと食べて体力をつけなさい」などと言われるのは、とてもつらいことです。「食べないとダメだ」と、家族が無理に食事を勧めるような場面もありますが、これによって、患者さんと家族との間に壁ができてしまうこともあります。また、痩せてしまった自分の外見を気にして、外出を避けるようになり、社会から孤立してしまう可能性があります。元気だった頃との比較で考えるのではなく、今のあるがままの状態を受け止められるように、周囲も配慮できるとよいでしょう。

検査・診断

がん悪液質には、前悪液質、悪液質、不応性悪液質の3段階があります。がんの種類やその状態によってがん悪液質のパターンもさまざまで、介入するタイミングを見極めるのが重要です。

炎症のマーカーとして測定される血液中のCRP値はがん患者における体重減少、生活の質の低下、生存期間の短縮に関連することが報告されています。

治療

がん悪液質は、全身性炎症を背景としてさまざまな原因が関与しています。そのため、全身の炎症を抑える薬物治療、栄養療法、運動療法、心理的あるいは社会的介入を含めた治療が行われます。患者の状態や生活様式に合わせて適切な方法が選択されます。

早期の栄養サポートにより、がん悪液質の進行をゆっくりにさせたり、ほかの原因による栄養不良を改善させたりすることができる可能性があります。

体重減少が5%以下で代謝異常が見られる状態は、悪液質の前段階と定義され、この状態から栄養サポートを行うこともあります。

代謝障害が進行し、栄養サポートが無効になった状態を不可逆的な悪液質といいます。この状態になると、予後は厳しいと考えられています。

ステロイドなどの薬物療法することで、がん悪液質の症状を和らげる効果が得られたとの報告はありますが、これまで日本でがん悪液質を適応症とする薬剤はありませんでした。最近になって、グレリン様作用薬のアナモレリンががん悪液質の治療薬として登場しました。

薬物療法だけでは十分な効果は得られず、栄養療法や運動療法の併用が必要と考えられています。

悪液質が進行した不可逆的悪液質の状態では、栄養療法に効果がないと考えられているため、栄養投与量は徐々に減らしていきます。人生の最終段階における医療で生命予後が短い場合には、余命延長を目的とした栄養投与を行わないことが推奨されています。

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