原因
肺や消化管、膵臓、皮膚を含め全身臓器には「腺組織」と呼ばれるものが広く分布しています。腺組織は、粘液や消化液、汗などの分泌物を作るのに必要な組織です。正常な分泌物を作るためには、適正な量の水分とイオンが存在することが必須です。しかしながら、のう胞性線維症においては、特に塩化物イオン(Cl-)の調整がうまくいかなくなっています。その結果、分泌物が糊のようにドロッとした粘稠度の高い状態になってしまい、各種臓器で分泌物が詰まってしまうようになります。分泌物が肺で詰まってしまうと、病原体をうまく体外に排泄できなくなり肺炎を引き起こしますし、消化管が詰まると糞便の流れが阻害されイレウスを発症することになります。粘稠度の高い分泌物に応じて細菌感染症や消化管障害が繰り返されることで、組織への障害が蓄積されることになります。 塩化物イオンの調整は、CFTR遺伝子という遺伝子が深く関与しています。CFTR遺伝子に異常があると、塩化物イオンの調整に悪影響が及ぼされることになり、水分が乏しい分泌物が産生されることにもなります。これまでに2,000種類近くのCFTR遺伝子異常が報告されていますが、人種による差があります。 CFTR遺伝子は人間の細胞の中には2つ存在しており、それぞれ父親および母親から遺伝されています。2つ存在するうちの1つのみにCFTR遺伝子異常を認める場合には、のう胞性線維症は発症しません(病気の保因者になります)。しかし両親ともに1本ずつCFTR遺伝子異常を持っている場合には(両親は病気を発症していません)、両親がもつ異常な遺伝子が次の世代に受け継がれ、その子どもが異常なCFTR遺伝子を2本有する可能性があり、この場合にはのう胞性線維症を発症することになります。ちなみにこうした遺伝形式を、常染色体劣性遺伝と呼びます。
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