概要
ひょう疽とは、手足の指先(主に腹側)に細菌感染が生じて膿がたまる病気のことです。発症すると指先の腹側に発赤や痛みが生じ、放っておくと腱や骨に炎症が波及したり、皮下組織が壊死したりすることもあります。
主な原因は、巻き爪や陥入爪、深爪、ささくれや繰り返される指しゃぶりなどの小傷から細菌が侵入することとされています。治療は、感染を抑えるための抗生剤や痛みを抑えるための鎮痛剤による薬物療法が主体となります。ただし、炎症が強く膿の塊が形成されているケースでは、膿を排出するために皮膚の一部を切開する手術や爪を切除する手術が必要になることも少なくありません。
原因
ひょう疽は、指先の小傷から皮膚の中に細菌が侵入することによって引き起こされる病気です。爪周囲の小傷が原因となることが多く、巻き爪や陥入爪、深爪などの爪の異常が代表的な原因として挙げれます。また、指先に小傷ができやすく湿った状態になりやすいと感染を起こしやすくなるため、頻回に指しゃぶりする乳幼児や水仕事などの機会が多く手荒れしやすい調理人や主婦などにも生じやすいとされています。
症状
ひょう疽は手足の指先の腹側の部位に感染が生じる病気です。発症すると、指先に発赤や痛み、腫れが生じます。しかし、一般的には指先の腹側のみに炎症が生じるのではなく、爪周囲炎(爪周囲の感染症)が指先の腹側へ波及していくため、爪周囲の発赤、痛み、腫れなどを伴います。また、重症な場合には爪周囲や爪の下、指の腹に膿の塊が形成されることもあり、爪が取れたり、膿が漏出したりすることも少なくありません。膿の塊が大きくなると、周辺の組織を圧迫するため組織の壊死を引き起こすこともあります。
さらに、炎症が強くなると骨や腱に波及して指を曲げられなくなることもあり、リンパ管を通じて腕や脚にも炎症が広がって痛みや発赤などの症状が生じることがあります。このような状態に進行すると発熱、悪寒、吐き気などの全身の症状が現れることも少なくありません。
検査・診断
ひょう疽は触診や視診によって診断を下すことが可能ですが、病状に応じて次のような検査を行うことがあります。
血液検査
ひょう疽は強い炎症が生じる病気であるため、炎症の程度などを評価するために血液検査を行うことがあります。
画像検査
ひょう疽は重症化すると上述したように骨や腱にまで炎症が波及して正常な関節運動ができなくなることがあります。そのため、症状が強い場合は炎症が波及した範囲などを詳しく調べるためにCTやMRIなどの画像検査を行うことがあります。
培養検査
ひょう疽は主に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌などが感染することによって引き起こされます。治療には抗菌薬の投与が必要になりますが、原因菌によって使用する抗菌薬が異なるため排出された膿などを培養して原因菌を特定する検査を行うことがあります。
治療
ひょう疽の治療方法は重症度によって大きく異なります。
初期段階の場合は原因菌に合わせた抗菌薬の投与と痛み止めや冷却などの対症療法を行えば回復することがほとんどです。しかし、炎症が強く爪の周囲や指の腹に膿の塊を形成している場合は、皮膚の一部を切開して膿を排出する治療が必要になります。また、巻き爪や陥入爪が原因の場合や爪の下に膿が溜まっているような場合には爪を切除する手術が必要です。
予防
ひょう疽は巻き爪、陥入爪、深爪など爪の異常によって引き起こされることが多いため、爪を正しく処理し、指先を清潔に保つことが予防につながります。また、湿った状態が続く中で指先に小傷ができることも発症原因となるため、指先をしっかりケアすることも大切です。
なお足の指のひょう疽は、つま先が狭いハイヒールやサイズが小さな靴を長時間着用することによって引き起こされることがあるため、サイズの合った靴を選ぶようにしましょう。
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