治療
症状のあるエプスタイン病に対しては薬物療法やカテーテルアブレーションなどの内科的治療、または三尖弁に対する手術の外科療法があります。どのような治療を選択するかは、患者さんの状態や重症度によって異なります。
薬物療法
薬物療法は、乳幼児期には症状がなく、成人してから症状が現れたエプスタイン病などに対して選択される傾向があります。基本的には、その患者さんに現れている症状を抑える作用を持つ薬剤が用いられます。
たとえば、不整脈がみられる場合には抗不整脈薬が処方されます。
心不全により息切れや動悸が見られる場合は、強心薬や血管拡張薬が用いられることがあります。また、心不全によるむくみに対しては利尿剤が使用されることがあります。
血栓がみられる場合や心房細動(不整脈のひとつ)を合併している場合には、抗凝固薬を使用した治療が検討されます。
カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは、足の付け根や首の静脈から細い医療用のチューブを挿入し、高周波の電流により不整脈を治療する内科的治療法です。
エプスタイン病にWPW症候群を合併しており、心臓に生まれつき余分な刺激の通り道・副伝導路がある症例などには、カテーテルアブレーションが選択されることがあります。
心臓手術
新生児期に症状が現れているエプスタイン病は、基本的に手術による治療が選択されます。薬物療法やカテーテルアブレーションでは期待する効果が得られなかった場合や、息切れやむくみなどの症状が重い場合にも手術が検討されます。
手術の方法(術式)には以下のような選択肢があり、心臓の状態に応じて適した方法が用いられます。エプスタイン病に対して特に行われることが多い手術方法は、弁形成術と弁置換術(べんちかんじゅつ)の2つです。
弁形成術
弁形成術とは、患者さん自身の弁組織を切除したり縫合したりして、形成異常のある弁を正常に機能するような形へと修復する手術です。弁形成術が難しいと考えられる場合は、弁置換術が検討されます。近年コーン(Cone)手術という手術が開発され弁置換を回避できる可能性が高くなっています。
弁置換術
弁置換術とは、形成異常のある患者さんの弁を取り除き、生体弁や人工弁を植え込む手術です。生体弁と人工弁は、それぞれ耐久性の長短などのメリット・デメリットを持っているため、患者さんの年齢や生活環境など、さまざまな条件を考慮して選択されます。
その他の手術方法
このほか、右心室が弁を治しても働けないぐらい薄くなっている重症な新生児の場合、単心室としての治療計画が唯一生存する方法である場合があり、スターンズ手術を新生児期に行い、上大静脈(上半身の血液が心臓へと戻ってくるための静脈)と肺動脈(心臓から肺へ静脈血を送るための血管)をつなげるグレン手術を経て最終的にフォンタン手術へと到達させる治療が選択されることもあります。
合併症の種類などにより、ここに挙げた術式以外の手術方法が選択される場合もあります。主治医の先生から治療戦略やご自身の病状に関する説明を十分に受け、納得したうえで治療に臨むことが大切です。
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