えぷすたいんきけい

エプスタイン病

別名
エブスタイン病,エプシュタイン奇形
最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

エプスタイン病とは、心臓の弁のひとつに形態異常がある、生まれつきの心臓病です。エブスタイン病やエプシュタイン奇形などと呼称されることもあります。

心臓の右心房と右心室の間には三尖弁(さんせんべん)と呼ばれる弁があり、心臓(右心室)から肺へと送り出される血液が逆流することを防いでいます。

この三尖弁が正常に閉まらなくなると、血液の一部は右心室から右心房へと逆流し、心臓に負担がかかって不整脈などの症状が引き起こされます。三尖弁がきちんと閉まらなくなる状態を三尖弁閉鎖不全(さんせんべんへいさふぜん)といいます。

エプスタイン病とは、生まれつき三尖弁が右心室側にずれ落ちているために閉鎖不全が起こっている病気であり、日本では指定難病のひとつにもなっています。先天的な心臓病のうちエプスタイン病が占める割合は0.5~0.7%程度と少なく、比較的まれな病気であるといいえます。

エプスタイン病の症状が現れる時期や重症度は人により異なり、生まれたときから重い症状がみられるケースや、成長してから徐々に症状が現れるケースなどがあります。

心臓に対する手術が必要になることもありますが、成長してから発症したエプスタイン病の手術成績はよく、健康な人と同じように長く生きていかれる方が多いといわれています。

原因

エプスタイン病では、三尖弁を形作っている3枚の弁のうち、1枚もしくは2枚の弁が右心室側へ落ち込んでいるために、血流の逆流が起こります。

このような三尖弁の形態異常は、胎児期に弁が発生する過程で起こると考えられています。しかし、なぜ形態異常が生じるのかは解明されていません。

発症の原因

エプスタイン病を含む先天的な心臓病の多くは、環境的素因や遺伝的素因など、複数の要因が複雑に絡み合って発症する「多因子遺伝疾患」です。エプスタイン病には、妊娠中における特定の薬剤の服用といった環境的因子も発症に関わっているのではないかといわれています。

遺伝について

エプスタイン病が親から子どもへと遺伝する確率は高くはなく、同一家族内での発症も多くはありません。そのため、遺伝を不安視しすぎる必要はない病気であると考えられています。

症状

エプスタイン病の症状は非常に多様で、発症する時期などによっても重症度や予後は異なります。

胎児期、新生児期の発症

新生児早期にみられるエプスタイン病では重い症状がみられることが多く、重度の右心不全や呼吸不全により長く生きられないこともあります。お腹の中にいる胎児期に、胎児エコー検査で診断がつく場合もあります。

新生児期には、激しく泣いたときなどにチアノーゼと呼ばれる症状が出現することがあります。チアノーゼとは、低酸素血症により唇などの皮膚や粘膜が青紫色になる現象です。

乳児期の発症

乳児期になってから症状が明らかになる場合もあります。この時期の具体的な症状としては、哺乳力(母乳やミルクを吸う力)が弱い、体重が増えない、呼吸をスムーズに行えないといった心不全に関連するものが挙げられます。

また、目に見える症状は現れず、心音の検査を受けたときの心雑音によって発見されるケースもあります。

乳児期以降の発症

乳児期以降に診断されるケースでは無症状のこともあります。また、軽いチアノーゼや運動能力の低下がみられる場合もあります。

学童期(6歳~12歳頃)の発症

心雑音や、WPW症候群の合併による不整脈がみられることがあります。

*WPW症候群とは、心臓に余分な刺激の通り道(副伝導路)があることで不整脈が起こる生まれつきの病気です。

成長とともに現れる症状

小児期に無症状で観察されていても、成人になるにしたがって次のような症状が増えていくことがあります。

  • 不整脈
  • 動悸
  • むくみ
  • 運動したときの息切れ
  • 疲れやすさ
  • 運動したときのチアノーゼ

非常にまれですが、不整脈や血管内での血栓(血の塊)形成による突然死も症状のひとつとして数えられています。不整脈や血栓の形成は、患者さんの妊娠に生じることがあり、気をつけるべき症状といえます。

*エプスタイン病であっても、チアノーゼや不整脈などを認めない場合、比較的安全に妊娠・出産が可能です。

検査・診断

エプスタイン病を診断するための検査には、心エコー検査や胸部単純レントゲン検査などの画像検査、心電図検査などがあります。

エプスタイン病では三尖弁の形に異常がみられるため、心エコー検査で得られる画像は特に重要な役割を果たします。

心電図検査では、不整脈の有無を確認することができます。また、エプスタイン病では血液の逆流によって、右心房が著しく拡大します。このような心房の拡大は、胸部単純レントゲン検査で確認することができます。

検診でみつかることも

エプスタイン病は自覚できる症状が現れないこともあります。無症状の場合、乳幼児健診や学校検診などで心雑音が確認されたことをきっかけに診断に至るケースもあります。成人してからはじめてエプスタイン病であるとわかる場合もあります。

治療

症状のあるエプスタイン病に対しては薬物療法やカテーテルアブレーションなどの内科的治療、または三尖弁に対する手術の外科療法があります。どのような治療を選択するかは、患者さんの状態や重症度によって異なります。

薬物療法

薬物療法は、乳幼児期には症状がなく、成人してから症状が現れたエプスタイン病などに対して選択される傾向があります。基本的には、その患者さんに現れている症状を抑える作用を持つ薬剤が用いられます。

たとえば、不整脈がみられる場合には抗不整脈薬が処方されます。

心不全により息切れや動悸が見られる場合は、強心薬や血管拡張薬が用いられることがあります。また、心不全によるむくみに対しては利尿剤が使用されることがあります。

血栓がみられる場合や心房細動(不整脈のひとつ)を合併している場合には、抗凝固薬を使用した治療が検討されます。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションとは、足の付け根や首の静脈から細い医療用のチューブを挿入し、高周波の電流により不整脈を治療する内科的治療法です。

エプスタイン病にWPW症候群を合併しており、心臓に生まれつき余分な刺激の通り道・副伝導路がある症例などには、カテーテルアブレーションが選択されることがあります。

心臓手術

新生児期に症状が現れているエプスタイン病は、基本的に手術による治療が選択されます。薬物療法やカテーテルアブレーションでは期待する効果が得られなかった場合や、息切れやむくみなどの症状が重い場合にも手術が検討されます。

手術の方法(術式)には以下のような選択肢があり、心臓の状態に応じて適した方法が用いられます。エプスタイン病に対して特に行われることが多い手術方法は、弁形成術と弁置換術(べんちかんじゅつ)の2つです。

弁形成術

弁形成術とは、患者さん自身の弁組織を切除したり縫合したりして、形成異常のある弁を正常に機能するような形へと修復する手術です。弁形成術が難しいと考えられる場合は、弁置換術が検討されます。近年コーン(Cone)手術という手術が開発され弁置換を回避できる可能性が高くなっています。

弁置換術

弁置換術とは、形成異常のある患者さんの弁を取り除き、生体弁や人工弁を植え込む手術です。生体弁と人工弁は、それぞれ耐久性の長短などのメリット・デメリットを持っているため、患者さんの年齢や生活環境など、さまざまな条件を考慮して選択されます。

その他の手術方法

このほか、右心室が弁を治しても働けないぐらい薄くなっている重症な新生児の場合、単心室としての治療計画が唯一生存する方法である場合があり、スターンズ手術を新生児期に行い、上大静脈(上半身の血液が心臓へと戻ってくるための静脈)と肺動脈(心臓から肺へ静脈血を送るための血管)をつなげるグレン手術を経て最終的にフォンタン手術へと到達させる治療が選択されることもあります。

合併症の種類などにより、ここに挙げた術式以外の手術方法が選択される場合もあります。主治医の先生から治療戦略やご自身の病状に関する説明を十分に受け、納得したうえで治療に臨むことが大切です。

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