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クーゲルベルグ・ウェランダー病

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

クーゲルベルグウェランダー病(Kugelberg Welander syndrome)とは、運動神経系(運動ニューロン)が選択的に障害されることによって生じる脊髄性筋萎縮症の成人病型です。

クーゲルベルグウェランダー病は、脊髄性筋萎縮症の一亜型として知られており、1歳半以降に、転びやすい、立てないなどの症状を呈することから病気が疑われるようになります。

クーゲルベルグウェランダー病はSMN(spinal moter neuron)遺伝子の変異を原因として発症します。両親が病気の素因となる遺伝子変異を有していると、お子さんが病気を発症する可能性が出てきます。

クーゲルベルグウェランダー病を根治する方法はなく、症状にあわせた対症療法が中心となります。将来的には車いす生活になることもありますが、一部の脊髄性筋萎縮症と比較すると、生命予後は良好であるとされています。

クーゲルベルグウェランダー病を含む脊髄性筋萎縮症は、難病及び小児慢性特定疾患に指定されている病気のひとつです。遺伝性疾患としての側面も有することから、包括的な治療介入が必要とされています。

原因

クーゲルベルグウェランダー病は、SMN遺伝子といった遺伝子異常に伴って生じる病気です。

SMN遺伝子は、脊髄や脳幹部に存在する運動神経の保持に重要なSMNタンパクを産生するのにかかせない情報を保有しています。運動神経は、手足を動かしたり呼吸をしたりするのに必須な神経のひとつです

SMN遺伝子に異常があるとSMNタンパク産生に悪影響が生じてしまい、神経細胞が死んでしまいます。その結果、筋肉を動かすことができなくなり次第にやせ細ってしまいます。また、これ以外の遺伝子異常の関与も疑われています。

クーゲルベルグウェランダー病は、多くの場合、常染色体劣性遺伝と呼ばれる遺伝形式をとります。ヒトの細胞には2本の遺伝子が存在していますが、遺伝子異常を1本だけ持つ場合には保因者となり病気を発症することはありません。2本とも異常を示す場合には、クーゲルベルグウェランダー病を発症することになります。

クーゲルベルグウェランダー病では、理論的には25%の確率で病気を発症し、50%は病気の保因者となります。残り25%は遺伝子異常を認めません。

症状

クーゲルベルグウェランダー病では、早期の段階では明らかな運動障害がなく経過します。

首のすわり、お座り、自立歩行などには問題ないことが多いですが、年齢を経るにつれて徐々に運動障害が明らかとなってきます。1歳半から20歳頃までに転びやすい、立てなくなった、などの症状をみるようになります。

クーゲルベルグウェランダー病は、脊髄性筋萎縮症のなかで3型に分類されており、段差を昇れるか否かで3aと3bにわけられます。

比較的重い3aの患者さんは階段を昇ることができませんが、3bの患者さんは階段昇降ができます。

脊髄性筋萎縮症は、進行性の病気であるため、思春期に差し掛かるあたりから歩行バランスが崩れ始め、車椅子を使うようになる3型の患者さんもいます。

また体幹の筋力も弱いために、側弯症になるリスクもあります。

検査・診断

クーゲルベルグウェランダー病は、SMN遺伝子の異常により発症する病気であるため、採血をして遺伝子検査を実施することで、ほぼ診断が確定します。

また、下位運動ニューロンや筋肉の障害の程度を確認する電気生理学的な検査や筋生検を実施することもあります。筋生検とは、筋肉の一部を取り出して組織の状態を調べる検査のことです。

筋病理では萎縮線維が大きな群をなして存在する(大群萎縮:large groups of atrophic fibers )のが特徴的です。非萎縮ないし肥大線維はタイプ1線維です。また筋内の末梢神経も早くから髄鞘を失います。

*SMN遺伝子:ヒトのSMN遺伝子は、相同の配列を2セット(SMN1、SMN2)持っていることがわかっています。遺伝学的検査によりSMN1遺伝子の欠失または変異を有し、SMN2遺伝子のコピー数が1以上であることが確認された患者へは、アンチセンスオリゴ核酸(ASO)薬の髄腔内投与の適応が認められています。クーゲルベルグウェランダー病の約半数でSMN1の遺伝子異常が見つかります。

治療

脊髄性筋萎縮症のなかでは、クーゲルベルグウェランダー病の生命予後は良好であるとされています。

しかし、運動機能障害による日常生活への影響が大きく、経過に応じて車いすなどの利用、早期からのリハビリテーション、側彎に対しての対応が求められます。

近年、新規薬(ヌシネルセンナトリウム)のクーゲルベルグウェランダー病に対する適応が承認されています。

実際の使用に際しては、遺伝子検査結果に応じた判断が必要となるため、担当医との相談が求められます。

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